第12話「テスト勝負の行方」
教師A「それでは、テスト始め‼︎」
唯・美緒「坂本先輩(くん)のキスは私が守ってみせる‼︎」
テスト開始と同時に、2人は勢いよく問題を解き始めた。2人は「テスト期間が終わるまではお互い会わない」という協定を結び、それぞれ必死に勉強してきた。しかし裕人と一緒に勉強したいという思いは2人とも一緒なようで、
美緒「坂本くん‼︎」
と声をかけて裕人を振り向かせれば
唯「せんぱーい‼︎ここ教えてくださーい‼︎」
と唯もやってくる。そこで2人は
唯・美緒「あっ…」
と鉢合わせることとなり、協定を守るため、2人同時に退散する。一方声をかけられた裕人は
裕人「なんで声かけてきたんだ…?」
と不思議そうにしていた。2人の間で協定が結ばれていることを、裕人は知る由もない。
アイ「裕人様、どうされましたか?」
ちなみにアイは協定の対象外である。
裕人「いや、なんでもない…」
というか、2人は互いに意識しすぎて、アイのことなど眼中にないようである。
そして昼休みの図書館で
唯「よし、勉強勉強♪」
唯が椅子に座れば、
美緒「ふぅ…よいしょっと。」
美緒も同じく座る。
唯・美緒「あっ…」
そうして2人は教室へと退散していく。
そして放課後の書店でも
美緒「確か数学の参考書はこっちだから…あっ、あった。」
すると誰かの手が触れる
唯・美緒「あっ…」
そうして2人はそれぞれ一駅分離れた書店へと向かっていった。
と、このように2人は度々協定を破りそうになりながらも、2人はそれぞれの場所で必死に勉強し、試験範囲は全て頭に入っている状態で臨むことになり、試験本番を迎えた。
唯「よし‼︎この問題も楽勝♪」
美緒「ここは予習通りの問題が出てる。これならわかるかも…!」
猛勉強の甲斐あって、2人はスラスラと問題を解いていた。一方今回の対決の商品である裕人はというと…
裕人「どうしよう…全然分からん…」
と、簡単な問題にすら四苦八苦していた。普段の裕人の学力を考えればなんてことない難易度のテストなのだが、いかんせんこのテスト期間中に対決のことが頭をよぎりまくり、一切勉強に手がつかなかったのである。そのため試験範囲など一ミリも頭に入っておらず、遼ですら解ける問題に手こずっていた。
裕人「でもこのテストが帰ってきたら、絶対誰かとはキスしなきゃしけないんだよな…」
と、テスト中であるにもかかわらずそんなことばかりを考えていた。
裕人「僕的にはそりゃ美緒ちゃんがいいけどさ…でも美緒ちゃんの大事なファーストキスを俺なんかが奪うわけにもいかないし…でもかといってついこの間知り合ったばかりの後輩とキスなんかできないし…」
裕人が二つの感情に悩まされ頭を抱えていると、
教員A「どうした坂本、頭でも痛いのか?」
と声をかけられてしまった。裕人はすぐさま「すみません‼︎なんでもないです‼︎」と言い、テストに戻ったが、テンパって答えたために声が裏返り、クラス中から笑われることになった。
美緒はそんな裕人を微笑ましく思いながらもスラスラと問題を解いていき、別の教室にいる唯もまたスラスラと問題を解いていたが、
唯・美緒「ん?(あれ?)」
2人の手が止まった。問題をよく読んでみるが、これはどう考えても試験範囲から外れた問題ではないか。そう思った2人は、教科の担当教員が巡回してきた段階で教員に質問するが、問題の不備ではないと返答されたため、2人は諦めて問題に取り組むのだが、やはり分からない。刻一刻とテスト時間は過ぎていき、2人は分からないながらも勝利に向けて懸命に問題に取り組む。
そしてついに試験は終了を迎えた。
遼「なぁ裕人、今回のテスト自信あるか?」
裕人「聞くな。」
裕人はあれから今日まで一睡もできなかった。今日はテスト返しの日である。つまりは勝負の結果が出る日だ。裕人は今日という日を迎えたくはなかった。どちらのキスにせよそれぞれ違う地獄が待っているからなのだ。唯とキスしてしまえば、学校内で「彼女がいるのに後輩の女子とキスしたやつ」というレッテルを貼られ女子からの殺意を買い、美緒とキスしてしまえば、彼女の人気と相まって、学校中の男子からアイの時の比ではない殺意を向けられることになるからだ。しかしその瞬間はやってくるようで、審判の時を告げるチャイムが鳴った。
教員A「じゃあテスト返していくぞ〜。」
と、順にテスト用紙が返却されていく。裕人と遼、2人の成績は散々なものだった。特に裕人は次の期末テストを相当頑張らないと追試になってしまうほどの点数だった。しかし重要なのはそっちの2人の点数ではない。
美緒「今日が…」
唯「結果発表の日…‼︎」
ドキドキしたまま返されたテストの点数を見た。
唯「先輩…テストの点数何点でしたか?」
美緒「う、うん…475点だったよ。」
それを聞いた唯は愕然とする。
唯「嘘…全く一緒…⁉︎ということは…?」
美緒「この勝負…引き分け…?」
2人ともがっかりした。
唯「なんだぁ〜。2人とも学年一位?」
美緒「そ、そうみたいだね…」
唯「はぁ〜…でもしょうがないかぁ…」
しかし2人は諦めきれなかった。どうしてもここで決着をつけておきたかったのだ。(特に唯が)2人が今度は副教科の点数で競おうと言いかけたその時…
生徒A「おい、2年生に全教科満点がいるらしいぞ‼︎」
という声が聞こえてきた。2人は自分たちより上の点数をとった人間がいるのか。そう思って急いで校内に張り出された順位表を見にいった。するとそこには、
「初瀬アイ 900点」
と書かれていた。つまりアイは2人が取れなかった5点分、さらにはあれだけ猛勉強した美緒が解けなかった問題を解いていたのだ。
裕人「そういえばアイってアンドロイドだったんだよな…」
と安堵する裕人であった…とはいかず、すぐさま2人が裕人とアイの元へと向かって行った。不満タラタラな2人をよそに、アイは裕人の頬にキスをし、
アイ「これが一番平和的な解決策だと判断いたしました。」
と裕人を含めた4人に言った。なんとか平和的に収まってよかったと安心した裕人だったが、美緒の気持ちには終始気付けないでいたのだった。
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