第10話 お食事も簡単なものではない

「夕食ってどんなものが出るんだろう。コース料理は時間がかかるから嫌だな。」

「いや、そんなもの出ないよ。多分、匂いからしてカレーとかじゃないかな?」

「え、カレー大好き。特に牛の炙りカレーが一番好き。」

「ここでは、そんなものでないと思うけど。何が出ても変な反応しないでよね。」

「そんな、するわけないじゃん。絶対に疑われるような行動はしないってお父様と約束したもん。」

と話しながら歩いてカレーを受け取った。お皿1枚に乗っただけのカレーを見て驚いているシーアを横目に、プラシは笑いを堪えていた。

席を探していると、端の方の誰もいない目立たない席を見つけたのでそこで食べることにした。


食べながら、ふと、さっきのリニーに対して思ったことをプラシに話してみたくなった。

「クラスにリニーって子いるじゃない。私と同じ学級委員で、さっき、自分の意見を言えるの羨ましいって私が言っていた子。あの子とさっき職員室行ったんだけど、やっぱり、オーラが周りの人と違う気がするんだよね。なんか、動作が洗練されているというか。なんだっけ、男爵家の嫡男って威張っていた、名前忘れちゃったけど、その子と違って本当に貴族みたいな感じがした。私は今までそんなに同い年の貴族たちと関わったことないけど、色々な貴族と関わったであろうプラシはどう思う?」

「うーん、俺も別にそんなたくさんの貴族と関わってきたわけじゃないからなんとも言えないけど、普通の平民ではない感じは俺もしたかも。何回か会ったことあるお母さんの方の従兄弟達に確かに雰囲気似ている気がする。なんていうか、オーラが違うよね。侍女たちも、平民出身とお母さんみたいに貴族出身の人は放っているオーラで結構分かるかも。」

「確か、プラシのお母さんって、」

と話そうとした時に、後ろに人の気配を感じて振り返った。今まで、人の気配を探る練習なども武術の一環としてしてきたが、こんなに近くにくるまで気づかせてくれなかった、相手の気配消し能力に驚いた。振り返ってみると、さっきまで噂していたリニーが近づいてきていた。

「どうも、さっきぶりだね。席がなかなか空いてなくて、ここの席に座っても平気?」

と、聞いてきた。

「全然、別に誰が使ってもいい横並びの席だし、せっかくの初日なんだし食事しながら話そうよ。」

と驚きを隠しながら笑顔で答えると、キリッとしたリニーの顔が少し笑顔に代わり、こんな顔もできるんだ、と少し驚いた。

「ありがとう。さっき、ここに来るときに2人の話が少し聞こえちゃったんだけど、プラシってもしかして貴族出身なの?」

と、急に聞いてきた。私はさっき自分の出自に関わることは何も話してないよねと思い返し、話していないことを確認すると、安心しながらプラシがなんて答えるか考えているのを見ていた。プラシも出自がバレそうなことをそこまで言っていなかったはずだから、おそらく誤魔化せるはずだ。ただ、今回はどうにか誤魔化せそうだが、小さな声でも自分たちの身の上話は、外ではできるだけしないようにしよう、と心から思った。プラシが思った以上になんて答えるか考えているため、リニーは

「別に言いたくなかったら、無理に答えなくて平気だよ。ただ、今日の二人の様子を見ていると、なんか他のみんなと違うなって思ったのが気になってて。」

と、私がリニーに思っていたことと同じことを言っていて驚いた。

「さっき、わ、ぼ僕たちもそれについて話していたの。リニーは立ち振る舞いが洗練されている気がするなって。ね、プラシ?」

と聞いたら。プラシは頷いた。思った以上に人見知りなのかもしれない、というプラシの新しい一面を知ったとこで、リニーに質問してみた。

「リニーは平民って言ってたけど、実は只者ではないでしょ。さっき話聞かれていたかもしれないけど、実は私たちのお母さんは貴族の子供なんだ。それで、平民の人に嫁いだんだけど、そこで上手くいかなくてお父さんとは別れちゃって、侍女として今は貴族の家で働いているんだ。だから、それを見て育っているから、私たちも貴族の立ち振る舞いが分かるし、あなたが普通の人と違う、貴族のような雰囲気を纏っているのも感じるよ。」

いつもの癖で”私”って言ってしまったことにづかないでと願いながら、リニーが返事するのを待っていた。出自の嘘をついてしまったことは心痛かったが、これはバレないための正当防衛だと心に言い聞かせた。

「なんだ、そうだったのか。貴族は、爵位を継いだ人の子供までだから、君たちは貴族ではないって訳か。」

「そう。俺たち別に貴族ではないよ。お父さんは普通に平民だったし。」

と、プラシが返した。

もしかしたら、プラシは話を合わせるために、さっき黙って何も言わなかったのかもしれない、と思った。

「けど、母親が貴族なのと貴族を目の前で見てるから、振る舞いに気品があるのか。」

「まぁ、そんな感じかな。気品があるなんて初めて言われたけど。」

とプラシが何ともないという感じで返事をしてくれるのに安心した。

「リニーは、どうなの?僕はリニーの振る舞いやオーラからみんなと違うものを感じたけど。」

と、思っていたことを言ってみた。すると、リニーはしばらく考えてから、

「まぁ、俺もお前らと同じような感じかな。親が貴族出身なんだ。今は騎士と結婚して普通に平民だけどね。」

「ふーん、けど、貴族って言っても男爵とかではないよね?さっきの男爵子息の振る舞いみたいじゃなくて、洗練されてたし。」

そう私が言った時、今まで何を考えているか分からなかったリニーの顔に一瞬喜びの色が見えた気がした。

「男爵家ではないけど、そんな大それたものでもないよ。それより、そっちだって、男爵家とかではないでしょ?」

と、何かを隠したいような感じで答えてきた。

「わ、ぼ僕たちも男爵家ではないけどね。だから、さっきの男爵家の振る舞いが貴族っぽくないのも感じられたし。じゃあ、そろそろご飯食べ終わったから、僕たち先に失礼するね。」

と何か失言してしまわないうちに、プラシに合図をしてから立ち上がった。

「また、明日。」

と手を振り、リニーとは別れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る