第三話
「アルー、お待たせー」
「あ、兄さん、待ってたよ」
しばらく待った後、少々分厚い本を片手に庭園へ現れた。服装もラフなもの(と言っても世間一般的には格式高く思われるだろうが……)から気品を感じるようなものへわざわざ着替えている。ずっと剣ばかり握っているイメージが定着しているせいか、あんな服を着た上、本を持っている姿を見ると少々違和感を感じせざるを得ない。見た目は学者みたい……いや、それは流石に言い過ぎか。
「なんか、本格的だね」
「でしょう。せっかく教えるんだ、このぐらいしないとね」
「では兄さん、早く始めましょ?」
「分かった、じゃあ早速だけど……」
兄さんは本を適当に開いてはお目当てのページにありつけるまで捲り続けている。
「えっと……確かここら辺に……あ、あった」
「ん〜となになに……。……なるほどね」
「アル、ちょっと手、出して?」
俺は言われるがままに手を差し出した。兄さんはその手を掴むと、「ちょっとだけ我慢してね〜」と言った。
「我慢?」と疑問に思った束の間、全身が痺れるような痛みに襲われる。ひと昔流行ってはよく喰らったあの電流ペンの出力を十数倍に上げて全身で受けたようだった。慌てて掴まれていた腕を振り解いてニ、三歩後ろに下がった。
「いったぁ……」
「どう?」
「どうって言われても……」
痙攣し鈍くなった手の指を握っては開くを繰り返したし、体も少し動かしたが、これといって変わったようなことは……。
ん?なんだ……これは……。
全身の血行が良くなったよう、と言えば良いのだろうか。内側から身体が温かくなっていくような流れを感じる。それも、嫌な温かさはなく気持ちの良い温かさ。痙攣も落ち着いてくるに従ってその温かみは広がっていくと、少しだけ体が軽くなったような感覚を覚えた。
「何したの、兄さん?」
「もしかしたらアルは魔法回路が開いてないのかなって思って無理矢理開けてみたんだ。稀にいるらしいんだよね。普通は生まれた時から開いてるはずなんだけど……」
「魔法回路?」
「んん……そうだな……口で説明するより見たほうが早いかな。ちょっと待ってて……」
「えっと……これこれ。こっち来て」
兄さんの方に寄ると中身を見せてくれた。
「これは……人の……」
「これが魔力回路だよ」
描かれていたのは手足を広げた人間の裸体。細長い管のようなものが走っている。一目見た時は血管みたいだったのだが、良く見てみたら心臓のような臓器が見当たらない。俺の知らない別の器官だ。
「これで今のアルは魔力が流れてるはず。どう、何か感じない?」
「えっと、ポカポカする感じがする……」
「よし、それなら大丈夫そう。今アルが感じているのが魔力の流れ。いわゆる
「うん、分かった!!」
「さて、これで準備は完了、じゃ魔法使ってみよっか。……と、言いたいところだけど……その前にもう一つ」
「ん?まだ何かあるの?」
「今から教会、行こっか?」
え……教会?
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