プロローグその2


「お〜い、聞こえる〜?那月ちゃん〜」


…誰でしょう、私の名前を呼ぶのは。


「ねえ〜起きて〜」


 起きて?私は今…どんな状態で…司君は…そうだ、司君が危ない…!


「司君!!」


 …え?ここは…?


 今私の目の目には今まで見たことのない真っ白な空間が広がっています。暖かいようで冷たいような、知らない世界です。



「お〜!やっと起きたね。おはよう、那月ちゃん!」

「お、おはようございます…?」



この人は…誰なんでしょう。昔の…特に古代ギリシャ人のような服装で…宙に浮いていらっしゃる。体つきは女性。しかも羽が生えています。 え、宙に浮いている?


「あ、あの…変なことをお聞きしますが…」

「いいよ〜なんでも言って!」

「私って死んじゃいました?」

「うん、死んじゃったよ!だからここに来たんだ!」



 その時、私はあの光景を思い出しました。あのフードの男性、いや、あの数学の新任教師に殺されてしまったことを…。


「うっ………」


 腹部が痛い…。ちょうど刺された部分。



「あらら、大丈夫?」

「大丈夫じゃないから痛がってるんじゃないですか…」

「それもそうだね〜じゃあ治してあげるよ」


彼女が私の患部に触れました。


「え…あれ、痛く…ない」

「治った?よかったね〜」


「あの…貴女は…誰なんでしょうか?」

「私はアペルって言うの。地球ではない別の世界の女神だよ〜」

「女神様?」

「そうだよ〜」


「は、はあ…」


見た目は確かに神様っぽいんですがその…現実味がないと言うか…いまいちピンときません。


「それより〜君にお願いしたいことがあるんだ〜」

「お願い…ですか?」


「そう、私は女神なんだけど、存在が消されそうなんだ〜」

「存在が…ですか。どうしてですか?神様…ですよね?」


「神様って、信じる人がいることで誕生するわけなんだけど、私の信者は人が少ない上に別の種族によって全員殺されちゃう可能性があるんだ〜」

「殺される…それは良くないですね…」

「でしょう?だから、私の世界に行って助けてほしいんだ〜」

「助けるってどうやって…」

「異世界転生ってやつだよ!!」



 異世界転生…あれですよね、最近ライトノベルとかアニメで有名なジャンルになりつつあるやつですよね。本当に存在してたんですか…。



「その…私が転生?するのは構わないんですが…具体的にどうすれば?」

「えっとね、とにかく攻めてくる奴らをぶちのめす事かな〜全員殺しちゃっても構わないよ〜」

「殺す…!?無理無理、無理ですよ…!私に殺しなんて…そんなもの…」



「あ〜でもそうだよね。那月ちゃんのいる世界は平和だもんね。そう思うのもしょうがない。じゃあそこら辺は任せるよ。ま、最終的にはそうならざるを得ないから覚悟しておいてね〜」

「は、はい…分かりました…」

「じゃあ、よろしくね!!」

「あ、あの、すみません、最後だけ…少しいいですか?」

「ん?何?」


「司君…伊藤司君は…無事ですか?」

「司…ああ、あの子ね。ギリギリ助かったよ」

「ああ…!本当ですか…!良かった…良かった…」

「じゃあ、もう送っちゃうけど準備はいい?」

「はい、お願いします!」



 そして私、寺島那月は転生することになりました。




「さ〜て、無事送ったところだし、お姉様に報告しないと〜」

「えっと〜確か〜こう!」


 指でぐるぐると円をかいたら空間に裂け目が現れる。


「よし、じゃあお姉さまに会いに行こう!」


 その羽で器用に飛び、裂け目に入った。


 裂け目から顔を出すとお姉様はティータイムをしている。もう終わってたんだ、さすがお姉様。


「お姉様、こっちも終わりました〜!」

「お疲れ様、アペル。無事送れましたか?」

「うん、寺島那月も無事転生したよ、魔王の娘として!」

「そうですか。ありがとうございます」

「あれ、ルージュは居ないの?」


「お呼びですか、アペル様」


と、黒いタキシードに身を包んだ青年らしき人が現れた。「面をあげていいよ〜」と、私が言うまで片膝をついたまま頭を上げなかった。


「ルージュもお疲れ、大変だったでしょ?」


と、気さくに話しかける。


「ええ、地球に馴染めるように顔立ちも立ち振る舞いも揃えるのは苦痛でした。やはりこの姿が一番です」


「良くやってくれましたルージュ。伊藤司と寺島那月の殺害は見事でした。感謝します」

「ありがたきお言葉…」


再び顔を下ろした。



「…さて、配役も終わりましたし、そろそろ始めましょうか」


「百年前はお姉様が勝ったから、今度はこっちから攻めていい?」

「良いですよアペル。無論、勝つのは私ですが」

「次は絶対に勝つよ〜!!」


お姉様が指を鳴らすと空間が歪み、現世の様子がモニターとなって現れた。

「「さあ、遊戯せんそうを始めましょう!!」」

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