ディープドリームジャーニー
時川雪絵
ディープドリームジャーニー
プロローグ 昔し昔し、あるところに……
昔し昔し、あるところに一人の少女がいた。彼女は真面目な性格で、みんなに愛されていたが、ある秘密があった。彼女は一匹の怪物に支配されていたのだ。その怪物は人型だが、彼女から剥がした皮を何重にも被り、まるで芋虫のようにも見えた。彼女は昔からこの怪物と共に暮らし、支配され、皮を剝がれてきたのだ。だが、それを家族に伝えても、頭がおかしいとしか言われなかった。
ある日、少女は入院することになった。病院に行くとき、母は言った。
「東京に行こうよ。何か、買ってあげるからさ」
都会に行ったことがなかった彼女はその言葉を信じた。東京で何をしようか寝ずに考えた。
彼女は普通の女の子になりたかった。だから、その怪物を殺そうとした。何度も、何度も殺した。だが、どんな方法でそれを殺したとしても、明日になると必ず帰ってくる。だから、彼女はいい子になろうとした。どんなに苦しんでも、それを悟られないようにした。
退院した時、彼女はとても嬉しかった。ちゃんとした人になれたと思った。だが、家に帰ると怪物が家族を殺していた。町のみんなは全員、食べられていた。だが、怪物は彼女を殺さなかった。ただ、剥がされた彼女の皮の向こうから、こちらを見つめているだけだった。
彼女は誰もいなくなった街を歩き、そしてたどり着いた。青い海の前に。彼女が空を見つめていると何処からか人が現れる。その人の髪はとても白かった。だが、老人というわけではなく、見た目は少女のようだった。
白い髪の少女は、泣いている彼女の顔をのぞき込むと言った。
「あなた、泣いてるの?」
「うん…」
彼女がそう言うと、白い髪の少女は微笑んだ。
「じゃあ、あなたが正しかったという事だね。みんなにあの白い怪物の事を話すと、あなたのことを頭がおかしいと言ったけど、でもそれは間違っていた。だって、みんな、あれに殺されちゃったんだから」
それに対して、彼女は何も言えなかった。ただ、呆然と空を見つめているだけだった。
「ねぇ、力が欲しい?」
と少女は言ったが、その意味を彼女は理解できなかった。だが、彼女は言った。
「うん…」
とだけ言って、結奈は虚ろな意識の中でうなずいた。
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