第29話 入学式(レイラ視点)
やっと。
ようやく。
ついに。
この日が来た。
この2年間、今日のために本当に頑張った。
いや、今日のために頑張れなければ、私は今ここにいなかったかもしれない。
ううん。
そんなことはどうでもよくて。
今日は学園の入学式。
そう、レクト様に会える日だ。
この前頂いた手紙は何回も読み返したし、ちゃんとこの魔力にも慣れた。
結局、魔力が変質したからと言って、以前の魔法が使えなくなることはなかった。
むしろ少し調子が良いくらい。
それにレクト様と同じ魔力を持てるなんて、嬉しい。
「よしっ」
今日は簡単な挨拶をしないといけない。
レクト様も聞いてくださるはずだから、絶対に失敗しないようにしないと。
今朝も入学式が楽しみ過ぎて、4時ぐらいに目が覚めてしまった。
レクト様に見ていただくために、お母様に教わって念入りに化粧もしたから準備は万端。
じっとしていられないし、もうこのまま学園に行こうかしら。
「行ってきます」
「レイラ? さすがに早すぎないか?」
「今日は入学式なんです」
「いや、わかってはいるが. . . . . . さすがに今行ってもレクト君とは会えないだろう?」
「しかし、このままここでじっとなんてしていられません。行ってきます」
「. . . . . .」
お父様も私がどれほど今日を楽しみにしているのかわかっているようで、それ以上何も言わなかった。
「あ、それと、今日は帰りません。レクト様の家に行きます」
「えっ?、レイラ? それはどういう. . .」
そのまま私は学園へ向かった。
♢ ♢ ♢
「おはよう、レイラ。今日は早いね」
「おはよう、リズ。今日は入学式だから」
私が学園について1時間後。
親友のリズこと、リズアリア・カローランが登校した。
ちなみに言うと、リズは生徒会に入っていない。
どのクラブにも属さず、自由にしている人だ。
「あぁ、そういえばずっと言ってたっけ? レイラの生き別れた彼氏が来るって」
「か、彼氏ってわけじゃ. . . . . .」
「おーおー、あの
「レクト様以外、興味ないわ。それに、その呼び方は認めてないと言ったでしょう」
「はいはい、いつも通り冷たいことで」
私は積極的に社交界に出ていたからか、数多くの婚約話が舞い込んできた。
もちろん全てお断り。
そんな中、いつの間にかついた二つ名が白銀姫。
私は認めてないし、こんな呼び方をする人なんてそれこそ親しい間柄か、身分が高い人ぐらい。
あだ名がつく程きっぱり断っているのに、しつこく言い寄ってくる家も多いけど、なぜかエリー殿下が止めてくださったりして、何とかなっている。
今では信頼できる親友の一人だ。
「ちなみにいつから来てたの?」
「1時間前くらいかしら?」
「げっ. . . . . . なんだか、うん、すごいよね」
引かれてしまったけど、仕方ない。
じっとしていられなかったのだから。
「愛しの彼のクラスは確か、Fって言ってたっけ?」
「. . . . . . えぇ。おかしな話ね」
愛しの彼、は間違ってないからそのままにして、レクト様がFクラスというのは絶対に間違っている。
平民枠の発表の時に、思わず怒ってしまったぐらいだ。
平民という身分を考慮しても、レクト様は規格外でSクラスになるはず。
いったい学園は何を考えているのか。
「レイラの話を聞いてると、わざと試験で低くしたようにしか考えられないよね」
「もしかしたら、レクト様に何かお考えが. . . . . .」
「会長。そろそろリハーサルだ」
リズと話していたら、副会長の男子生徒、ケイン・ラルトリーが呼びにきた。
いつの間にかそんな時間になっていたようね。
「わかりました」
この人もしつこく言い寄ってくる家の人で、何かと話しかけてくるから困っている。
3年生で、先輩であることを理由に口調も態度も馴れ馴れしい。
まぁ、それも今日で終わりだけど。
それより、見つけられるかしら?
アイラとセーラも今年入学だし、もしかしたら私より先にレクト様と会っているかもしれない。
レクト様と同じ学年の2人が羨ましい。
特にセーラは、襲われそうなところをレクト様に助けていただいたとか。
ちょっと不安ね。
「はぁ」
「どうかしたのか、会長? 何か悩みなら僕に話してくれよ」
「いえ、なんでもありません」
そろそろ新入生が入ってくるはずだけど、レクト様の魔力を感じられない。
一部は私と同じ魔力のはずだから、ここからでもわかると思うんだけど。
もしかしたら、気配を消していらっしゃったり?
「行きましょう」
私は探すのをやめ、リハーサルに向かった。
♢ ♢ ♢
「ふぅ」
「お疲れ様です、レイラさん」
「ありがとうございます。エリー殿下」
式が終わって後処理中。
結局、挨拶の最中もずっと探したけど、レクト様は見つからなかった。
アイラとセーラはすぐに見つかったのだけど。
ちょっと視線が忙しなくて、変に見られてしまったかもしれない。
でも、ちゃんとつまらずに言い切ったし、たぶん大丈夫なはず。
「早く探しに行かないと」
残念なことに、生徒会の者はこの後やることがある。
今の時期は、入学後すぐに始まる各クラブの勧誘活動の書類整理。
まだ2、3年生も進級したばかりだからそこまで多くの仕事はないんだけど、それでも多少の時間はかかる。
最悪は、アイラとセーラに頼もう。
「あっ」
と、書類に目を通していた時。
不意に魔力を感じた。
生徒がそこかしこにいる今、魔力なんてありふれているけれど、私が感じたのは自分と同じ魔力。
つまり. . . . . .
「どうした?」
「ごめんなさい。席を外します」
「え? ちょ、ちょっと? 会長?」
ラルトリー副会長が何か言おうとしているけど、今はそれどころじゃない。
「会長!」
そんな声を背に、私は走り出す。
他の子には悪いけど、書類整理なんてしてる暇はなくなった。
急いで一年生が使う教室まで駆ける。
魔法も使いながら。
「おい、あれって」
「レイラ様!?」
「急用かな?」
周りからかなり注目されているけど、そんなの気にしてる場合じゃない。
階段を降り、そして長い廊下の向こう側。
私と同じ魔力を持つ、黒髪の男子生徒。
スラッと伸びた背丈。
2年前よりさらに凛々しくなった顔。
何より、その全てを吸い込みそうな黒い瞳。
間違いない。
あまりに長い時を乗り越えて。
やっと。
「レクト様っ!」
私はレクト様の胸に飛び込んだ。
――――あとがき――――
前回と同じような内容で申し訳ありません。
書きたかったので。
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