冬空の下で、君に伝えたかったこと

輝人

第1話  偶然の再会

新年が明け、学校が始まった。冬の冷たい空気を感じながら、僕はいつものように電車に揺られ、学校へ向かっていた。クラスメートと新年の挨拶を交わし、何事もなく授業を終えた僕は、帰りの電車に乗り込んだ。


電車の中はいつもより少し混んでいて、窓の外に見える景色も冬のせいか寂しげに感じた。やがて自分の降りる駅に到着し、僕は電車を降りて改札を抜けた。家までの道を何気なく歩き始めようとしたその時、視界の隅で見覚えのある姿を捉えた。


トイレのドアが開き、そこから出てきたのは――華乃だった。


「え、華乃?」

僕が驚いて声をかけると、華乃も目を丸くしてこちらを見た。

「輝人!偶然だね!」

「ホント偶然すぎるよ。どうしてここに?」

「ちょっと友達と買い物してて、帰る前に寄っただけ。輝人こそ、いつもこの時間に帰ってるの?」

「まあ、だいたいね。」


自然と話が弾み、せっかくだからと一緒に帰ることになった。冬の空気の中、僕たちは並んで歩いた。華乃と話していると、不思議と寒さも忘れてしまう。彼女は学校の出来事や、最近読んだ本の話などを楽しそうに話してくれた。僕はその声を聞きながら、ふと、こんな時間がずっと続けばいいのにと思った。


しばらく歩いていると、華乃が急に足を止めた。そして、僕の方をじっと見つめる。


「ねえ、輝人。」

「ん?」

「好きな人って……いる?」


その言葉に、僕の心臓が一瞬止まったような気がした。


「えっ?」


僕は予想外の質問に動揺を隠せなかったが、華乃の表情は真剣だった。冗談や軽い話ではないことはすぐにわかった。


「急にどうしたの?」

「なんか……聞いてみたくなっただけ。でも、言いにくかったらいいよ。」


彼女は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。それでも、その耳はほんのり赤くなっている。


僕の心の中では、言うべきかどうかの葛藤が渦巻いていた。ここで彼女に正直に伝えるべきなのか、それとも何も言わず流すべきなのか。でも、僕はこの偶然の再会が、何かのきっかけなのかもしれないと思った。


「実は……」


僕は小さな勇気を振り絞り、華乃に言葉を紡ぎ始めた――。

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