双子座の勇者 2人で作る物語 900年の時空をつなぐ親友との友情も
武田 健太郎
第1話 始まり
「おや、また面倒なのが来たわ」
綺麗な女性が俺を見て、いかにも面倒臭そうな顔でこっちを見ている。
「あの、ここは何処ですか?」
この場所は見たことの無い程に広く、そして綺麗な空間、そしてまわりに俺とこの女性以外は何もない。
そう、壁も床も無く人もいない不思議な空間だ。
「あんたはこれから生まれ変わる。ちなみに地球じゃなく、別の世界よ。
でも、勘違いしないでね!!」
綺麗な女性が足を開きふんぞり返るように俺を見て、それから指を差す。
まるで何かに対し釘を指すかのように捲し立てる。
「良いか! 異世界転生キターとか、チート能力キターとか、何かの間違いで改めて生まれ変わるぅぅ!!
とか、目をキラキラさせて馬鹿を言ってくる奴が多いのよね!
言っとくけど世の中、んぅな事はねぇからな。
夢の見すぎなんだよぉ。お前ら日本人はなぁ!!
良いか、結局漫画の見すぎ、アニメの見すぎ、小説の読みすぎ。分かったか(怒)」
そう、身振り手振りで熱弁する。
なぜか、まくし立てられて俺の事を勝手に決めつけられて、怒られて、面倒臭そうにグチグチと文句を言われ、質問にすらこたえてもらえずに、最終的に何かの穴に落とされた。
それも、そこが何処で何をする場所かもわからないままでだ。だが、その女性はそれが当たり前のように俺を落としたのだ。
「うっ、またこの夢か」
まだ日ものぼりきってもいない内から息苦しさで眼を覚ます。思わずため息がでた、この夢は子供の頃から何度も見た夢だ。
そう俺は異世界に転生したらしい。
だか、あの綺麗な女性が言うように何一つチート能力と言う物は無い。ただの一般人だ、特殊能力と言うものも無い。
俺がこの事を思い出したのは6歳の時。訓練中に倒れ熱をあげ生死の境を行き来した時だ。
ただそれを思い出したからと言ってなんとも思わなかった。
いわゆる前世と言う時を過ごしていた俺はそれなりに幸せだった。
確かに働き過ぎて病気になり、他の人よりは早く亡くなったかも知れない。
だからと言ってやり直したいと思うような事も特に無い位に良い人生だった。
それよりも問題はこっちの世界だ。
俺のいた日本と違い、かなり文化が遅れているし、魔法が様々な事の最優先事項だし。移動手段は基本徒歩だし。
何よりも生きることに必死過ぎて、みんな他人の事を考える余裕すら無い。だからだろう、人の命が軽んじられてる気がする。
生まれ変わった俺は、農家の5男坊として生まれた。
だが口減らしの為に6歳で兵役に出された。つまり、親が軍人が欲しい軍部にお小遣い程度の安い金で俺を売ったのだ。
それからは軍の兵長の元、軍人として育てられた。
俺の家は貧しく、食にあり付くのも大変だった。理由は単純で親父が働かずに遊び呆けていたのがその理由だ。
家の事は一番上の兄と姉が中心になってやっていたお陰で何とかなった。兄が農業に従事、姉達が俺の面倒を見てくれていた。
そんな矢先、村に兵役の知らせが来た。兵役を受ける者に給金が入る。そう聞いた親父が遊ぶ金欲しさに俺を売ったのだ。
それからは軍で育った。
6~10歳までは賄い部隊。炊事、洗濯、掃除が主な仕事。その合間に軍事学校に通い勉強をする毎日だ。
賄い部隊は給金何てものは出ない。
親父がそれを知ると、俺と親子の縁を早々と切ってしまい、わずか6歳にして天涯孤独となった。
まあ、餓えて死ぬよりはましだとは思う。当時の俺の家の回りには餓えて亡くなる子もかなりいたのは確かだ。
俺はと言うと11歳から少年兵になり、正式に軍人として訓練と勉強に励んだ。結果、18歳になった今は100人隊長にまでなっていた。頑張って出世してやったぜ。
だから今では軍に売られたその事に感謝してる位だ。
◇◇◇◇◇◇
目が覚めた事もあり、ベットから起きようすると重さを感じる。体の上を見ると同居の女の子のダリアがいた。
俺のベットに潜り込んで来ていた。
「ダリア、おはよう」
ダリアが眠そうな目をする。
「お兄ちゃん、後5分」
「おい、起きるぞ。今日は2人とも最終日だ」
「う~ん、ケチ」
俺の事をお兄ちゃんとダリアが呼んでいるがダリアは俺の妹ではない。俺が13歳の時に引き取った子で本当に血のつながりの無い女の子だ。
それはダリアが当時10歳の時だ。
ダリアは俺達の宿舎の目の前で宿兼食堂を営む夫婦の1人娘だった。その日ダリアは両親と一緒に郊外に出かけた。
それは両親の仕入れに付き合って出かけた時だ、そこで運悪くモンスターの群れにダリア達の馬車が襲われてしまう。
遠征帰りに俺達の部隊がたまたま通りかかりモンスターを倒した、だがダリアの両親は亡くなりダリアだけが1人残された。ダリアの両親がやっていた宿屋は俺達も良く利用していた、またダリアは年の近い俺を兄ちゃんと呼んで懐いてくれてもいた。
だから、その日の内に俺がダリアを預かる事にしたのだ。
俺の妹として、行き場の無いダリアと一緒に暮らす事にした。
ダリアは賄い部隊に配属され、炊事や洗濯、掃除をこなしていた。そして13歳から兵士として訓練を行う事になり、現在に至る。
この国では男女共に成人が15歳と決まっている。そして基本的に兵役は15歳で終了する。成人したらその後はいつ辞めても良い事になっている。
そして今日はダリアの15歳の誕生日だ。
ダリアと良く話し合い。ダリアの成人に会わせ、2人で除隊して別の場所で暮らす事にしたのだ。
つまり、新しい門出の日だ。
「お兄ちゃん、今日除隊した後どうするの?」
「ん? この部屋引き払ってその足で乗り合い馬車に乗って移動だよ」
「そっか。みんなに挨拶出来ないね」
ダリアが寂しそうに言う。
朝一で軍を除隊、その足で住み慣れた場所から離れる。結構な強行スケジュールだ。
そもそも何でこんな強行スケジュールかと言うと、ダリアの成人を待って様々な奴らがダリアに結婚の申し込みをしてきているからだ。
それもダリアの望まない結婚をだ! そいつらは軍のお偉方の息子たちだ。
ダリアは簡単に言うとそいつらが死ぬ程嫌いだ。賄い部隊に入ったばかりの頃のダリアは格好の獲物だった。
良くそいつらに苛められていた。俺もいつもダリアをかばっていた、けど立場の無い俺にはかばい切れなくなってしまう程に酷かった。
そこで考えたのが出世だ。俺は成人と同時に小隊長に就任。その後色々とありダリアに対する苛めはかなり減った。
そして1年後に100人隊長になる。もう安泰だと思った矢先だ。
ダリアは成長するにつれて綺麗になった。それは兵士達の噂になり、その内ダリア見たさに理由を付けては訓練を見学する者が出る位だった。
そうなると出てくるのが命令にも近い求婚の要請だ。
そしてそのほとんどがダリアをいじめていた上役の子供達だった。親の威光を最大限に使い求めてくるその姿に、その手のひら返しの凄さにダリアが完全に恐怖を覚えて引いてしまったのは言うまでも無い。
ダリアは成人もしていない、そう言って突っぱねいてはいたが流石にそうも言っていられなくなってしまい、ダリアの成人に会わせ除隊してこの都市を離れる事にしたのだ。
ダリアと2人、軍の施設に入る。
前もって中の良い事務職員に俺達2人の除隊手続きを進めてもらっていた事もあり、顔を出し手すぐに除隊手続きが終了。身分証と2人分の退職金をもった。
その後、軍の関係者に見付からないように町中に移動。馬車乗り場にくる。
「お兄ちゃん、そろそろフード外しても良いかな。ちょっと暑くなってきた」
「もうちょっと我慢してろ、後少しで門を出る。それまでの辛抱だ」
「ふーん! つまんない。
でも、ノンちゃん(事務職員)にも、ちゃんとお礼言えなかった」
「そうだな、寮母さんやノンちゃんや他の人にも何も言えなかったな。
でも気持ちを切り替えよう、新しい町に入ったらのんびりしような」
そうダリアをなだめながら出入口の門まで来る。普段は街から出るのにたいして厳しくはない。街に入る時はかなりうるさいけど、出る時はたいした事はないのが基本だ。
でも気は抜けない、軍の上役は貴族が多い。そんなのに捕まると引き戻される可能性がある。
だから最後まで気が抜けない。
◇◇◇◇◇◇◇
お知らせ。
作品情報です、よろしければこの作品と合わせてお読み頂けると有り難いです。
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