第21話 六甲ダンジョン

 夕飯の時間は楽しく過ぎて、ホテルへとやって来た四人。どうせなら朝食も一緒に食べようという話になり、朝六時半にロビーに集合する事にした。


 そして部屋がダブル一部屋しか取られてない事に少し動揺するツトム。


「いや、あのシングル二部屋って話だった筈なんですけど……」


「いいえ、協会の方からご依頼があったのはダブル二部屋でのご予約でございました」


 ホテルの受付のお姉さんにキッパリとそう言われてツトムは困った顔でユウカを見る。


「私は同じ部屋で良いよツトム」


 そう言ってくれたがそこでレイが助け舟余計な事を言い出した。


「そうね、婚約者とはいえまだ十七才なんだしユウカちゃんと私で一部屋。セイジとツトムくんで一部屋にしましょう!」


 その言葉に非常に残念に思いながらもツトムは頷くしかなかった。

 その夜、セイジと二人で語り合うツトム。


「いや〜、悪かったなツトムくん。まあせめてもの救いはツインの部屋に変えてくれた事だな」


 そう、男同士、女同士となったので受付のお姉さんが気を利かせてダブルの部屋からツインベッドの部屋に変更してくれたのだ。


「いえ、僕たちの方こそご迷惑をおかけしてすみません。本当ならご夫婦で同じ部屋の方が気が楽だったでしょう?」


「いやいやこの年になるとそんなに気を遣わなくなるから。そういう意味でも悪かったね、ハハハ」


 しかし内心ではセイジも今日はレイと若かりし頃を思い出して三回戦に挑戦するつもりだったので見た目では分からないが気落ちしているのだった。


 その夜。セイジはツトムに女性の身体についてのレクチャーをした。美に入り細を穿って語られる話にツトムは引き込まれ、そして


「分かりましたセイジさん!! 僕はユウカと致す時が来たなら自分の欲望に飲み込まれずに優しく丁寧にを心がけます! 貴重なお話を有難うございます!!」


 礼を述べてベッドで寝るまでに聞いた話を反芻して学習するのであった。


 翌朝、四人が揃ってロビーに集まりホテルの朝食を食べる。それから協会へと向かった。


 七時五分前に協会に着くと案内の人が車を回してくれたので乗り込み六甲ダンジョンへと向かう。


「皆さんどうか無茶をせずに危ないと思われたら引き返して下さい」


 案内の人にもそう言われて「おう! もう年だから無茶はしないぞ」とセイジが返事をしてダンジョンへと入った。


「さてと、資料によればこの六甲ダンジョンの地下五階層がもう一つのSランクダンジョンと繋がってるそうだ。取り敢えずそこを目指そうか」


 昨日決めたフォーメーションでダンジョンを進む事にする四人は一階層、二階層では魔物に遭遇する事なく進めた。それによりツトムが言う。


「マズイですねセイジさん。僕の知るダンジョン接続と同じだと、一、二階層の魔物は三階層以下の魔物の養分として取り込まれています。つまり、これ以降からの魔物は強くなってると思って対処する必要がありそうです」 

 

 ツトムの言葉にセイジも


「ああ、どうやらそんな感じだな。三階層からは牙イノシシが出るって事だったが、恐らく上位種となってるだろうな。大牙イノシシか、もしくは毒牙イノシシになってる可能性があるな」


 そう言って警戒を強めた。


 そした慎重に三階層を進むと大牙イノシシが居た。ツトムは前に出て「任せて下さい」と言うや【解体】を発動。それにより肉と毛皮、牙に解体される大牙イノシシ。


「おいおい、まだ生きてるのを解体だって!? どうなってるんだ!!」


 セイジが驚き、後衛のレイまでもがユウカを連れてやって来る。


「どうやったの? 私たちの解体じゃそんな事は出来ないわよ?」


 レイからも質問されてツトムは素直に教えた。真の【解体】について話をすると二人とも驚き、ユウカまで使えると知って更に驚いている。


「ユウカちゃんまで使えるのか!?」

「セイジ、私たちも頑張って覚えましょう!!」


 という事で二人は水以外は何も口にせず、魔物を見たら美味しそうだと思えるようになるまでは食べ物を食べないと決めて改めてダンジョン内を進みだした。そして、二人が真の【解体】を覚えるまでは前衛をセイジとレイが、後衛をツトムとユウカがする事にした。


「やっぱりツトムの解体は凄いんだよ」

「う〜ん、そんな事も無いんだけどなぁ。食材に思えない魔物には効果が無いしね」


 ツトムとユウカは話をしながらも周りの警戒は怠っていない。時々出てくるスライムはちゃんと倒していた。


 三階層ではセイジとレイのペアで大牙イノシシをこれでもかと倒していき、四階層へと続く階段を見つける。


「良し、これから四階層へと向かおう。四階層では普段だと暴れ火喰鳥が出るそうだが、今は暴走火喰鳥だと思う。唐揚げが最高な食材だ!」


 妙に気合が入ってるセイジがそう言って四階層へと降りていく四人。


 セイジの予想通りに降りた途端に暴走火喰鳥が五羽、廊下の向こうで待ち構えていて四人に向かって暴走してきた。


「セイジさん、僕も少し欲しいのでこの五羽はやらせて下さい」


 セイジが頷いたのを確認してツトムは解体を発動し、全て収納に収めた。


「よーし、何となくだが次は俺も出来そうな気がする。早くアイツらを見つけよう!」


 ダンジョン攻略が目的なのだが新しいスキル、いや食材獲得の為のダンジョン進行になりつつあったのは仕方がない事だろう。レイも


「私も負けないわよ、セイジ!」

 

 と気合を入れて二人は暴走火喰鳥を求めてズンズンと進み始めた。そして


「やったわ! 出来たっ!!」


 遂にレイが真の【解体】を覚える事に成功した。セイジは少し悔しそうにしている。


「フフフ、セイジ、唐揚げ肉が欲しいなら私に言いなさいよ」


「フンッ! 俺だってもう少しで覚えるんだ! 頼んだりしないぞ!!」


 そう強がったセイジであったが……


「あ、五階層へ降りる階段です」


 覚えられないままに五階層へと向かう事となった。そして、セイジも五階層の魔物、空流シャークでようやく真の【解体】を覚える事が出来た。


「や、やっと覚えたぞーっ!!」


 セイジの歓喜の声が大きすぎて、集まってきた空流シャークを大量に倒す事になり三人から非難されたのはご愛嬌だろう。


 そして四人は五階層を丹念に調べていく。やがて


「ここですね。ここが別のダンジョンと繋がった場所のようです。どうしますか?」


「セオリー通りならこのまま六甲ダンジョンを進んでボスを攻略すれば良いんだが、ツトムくんはどう考える?」


 意見を求められてツトムは答えた。


「そうですね、漂う魔気はこっちの繋がったダンジョンの方が多い気がします。なので、ここは六甲ダンジョンを外れてこっちのダンジョンボスを倒す方が良い結果を得られると思います『それに魔気が多いダンジョンの方が美味しい食材も多いし』」

 

 内心は言葉に出さないようにしっかりと気をつけて意見を言うツトム。それならばと四人は六甲ダンジョンから外れて進む事に決めた。


「こっちは何階層か分からないから慎重に進もう」


 セイジの言葉にみんなが頷く。そしてフォーメーションも元に戻した。進むこと五分後、魔物に遭遇する。


「やった!! 当たりですセイジさん。闘志カウですよ!」


 ツトムの言葉にセイジの顔が引きつる。


「いや、闘志カウはSSランクのダンジョンにしか出ない筈だろ? それがここに居るっていう事はこのダンジョンはSSランクって事になるぞツトムくん!」


 そう言うセイジの目の前で哀れ闘志カウは突進も出来ずに解体されてしまった。


「いや〜、日本にはカウ系の魔物が居ないのかと思ってましたよ〜」


 ホクホク顔でそう言うツトムを引きつった顔で見るセイジとレイ。ユウカはニコニコ顔である。


「いやまあ良いけど…… ツトムくん、何か俺とレイに言えない秘密があるんだろ? それを詮索はしないでおくよ」


 セイジはツトムの余りの破天荒さに何かしら秘密があると見たようだ。

 既にコウスケ、アヤカ、テッシン、リカの四人については異世界に召喚されて戻ってきた者だと政府から発表があったのだが、ツトムについては秘匿しようという話になり、おおやけにしていない。


 なのでツトムも少しだけ困った顔をしながらもセイジに「有難うございます」と礼を述べたのだった。


「よーし! ツトムくんが出来るなら私たちにも出来るはずよ! セイジ! 次は私がヤるわ!!」


 話題を逸らそうとレイが大きな声でそう言う。


「おう! って言うと思ったか、レイ!!」次は俺の番だっ!!


 セイジもレイの言葉に乗り明るい雰囲気となる。ツトムはこの人たちが一緒で良かったと心から思ったのであった。そして、いつか秘密を打ち明けようとも。

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