第18話 スキルを覚えよう

 コウスケがタマネギをみじん切りにしながら涙を流し、テッシン、アヤカ、リカが包丁の持ち方の鬼指導で涙目になっていた時にキョウカがツトムに言った。


「先生! 出来ました!」


 エリナも


「私も出来ました!」


 と続いた。


「出来ましたか。それじゃ味見させて貰っても良いてすか?」


「「はい、お願いします!」」


 ツトムは先ずはエリナのカレイの煮付けを口にした。エリナたちはそれぞれ三品ずつ作っていたのでツトムの味見分をユウカも一緒に味見している。コウスケはアヤカと、テッシンはリカと共に一皿を貰い味見した。


「むう! 思ったよりも美味しい……」(アヤカ)

「魚の煮付けとは、やるわね」(リカ)

「ふむ、短い時間ながは味が良く染みておる」(テッシン)

「……」(コウスケ)

「むー、まあ美味しいじゃない」(キョウカ)


「美味しい…… けど……」(ユウカ)


 そしてみんなはツトムの言葉を待つ。


「うん、良く出来てます。けれど、百点満点中、六十点の出来ですね」


 アッサリとそう言って次にキョウカのハンバーグを食べだすツトム。それにつられて他のみんなもキョウカのハンバーグを食べる。


「うん、旨いな」(コウスケ)

「ま、まあまあやるじゃない」(アヤカ)

「ふむ、肉汁も程よいな」(テッシン)

「悔しいけど美味しいじゃない」(リカ)

「やるわね、キョウカ。タマネギの量も程よいわ」(エリナ)


「シナモン、ナツメグ、コアントローかな?」(ユウカ)


「うん、それなりに美味しいね…… 百点満点中、六十五点だね」


 またも辛口評価のツトム。理由は述べない。そこでユウカが立ち上がり、


「私の料理も出来たから食べて見て下さい」


 そう言って肉じゃがをみんなに出した。


「旨い!」(コウスケ)

「ふわ〜、お母さんの味だぁ〜」(アヤカ)

「コレだけで飯を五杯はイケる!」(テッシン)

「糸コンが、お口の中で〜」(リカ)

「こ、こんなに染みて美味しいの!」(キョウカ)

「何て、優しい味なのかしら!」(エリナ)


 そしてツトムは食べながら泣いていた。


「うっ、グスッ、ま、また食べられるなんて! この味はキヨミさんの! 有難う、ユウカ!!」


 泣きながら全て食べ終えたツトム。そして


「ユウカの肉じゃがは百点満点中、百二十点だよ。理由はキヨミさんの味を継承しつつ、更に美味しくなるように工夫が凝らされていたから。それと作る時に食べる人の事を思って作ってくれたのがよく分かる味だった。エリナさんのカレイの煮付けは良く出来てはいたけれど、少し煮過ぎていたのと魚の生臭さがちょっとだけ臭ったんだ。だから食材選びで失敗してたんだね。あの冷蔵庫には他の新鮮なカレイも入ってた筈だよ。キョウカさんのハンバーグは焼き方は九十点。でもシナモンを多く入れすぎ、それと隠し味のコアントローも隠されて無かったね。それとひき肉選択も間違ってたよ。なのでこれから二人には食材選びから勉強してもらうよ」


 という事でユウカ以外の六人はそれぞれの課題を今後はやっていく事になった。そして、今日の締めはツトムが冷蔵庫から出した素材でカレイの煮付けとハンバーグを人数分作って振る舞った。


「ぬあ〜、こ、これが真のカレイの煮付け!」(コウスケ)

「白米が足らぬユウカ殿! 炊いてくだされ!」(テッシン)

「もうね、コレね! コレがツトムくんの料理よーっ!」(アヤカ)

「ハグハグハグハグ!」(リカ)

「こ、こんなにホロホロと身が! それにしっとりもしていて口当たりが良い! これが煮付けなんですね、先生!!」(エリナ)

「か、噛むと肉の旨味が口いっぱいに広がって!!」(キョウカ)


「えへへ、やっぱりツトムの料理は美味しいね」(ユウカ)


 みんなが幸せな気分に浸った時間はあっという間に終わり、ツトムから今後の特別訓練をそれぞれが言い渡された。


「コウスケさんはスキル【解体】が出るまで頑張りましょう。テッシンさんは包丁は刀じゃないと理解されるまで包丁を持つのは禁止します。なので食材仕入れ担当になって貰います。僕と一緒に市場に行って目利きして貰います。アヤカさんとリカさんは包丁を使っての野菜切りを継続します。キョウカさん、エリナさんの二人もテッシンさんと共に目利きの勉強をしましょう。ユウカは僕と同じく特別教官に昇格です。だからユウカ、アヤカさんとリカさんに包丁の使い方を教えて上げてくれるかな? それとコウスケさんの課題を教えるから二人と一緒にコウスケさんも見て上げて欲しい」


「う、うん。分かった。でも私もスキル【解体】とか料理に役立つスキルを覚えたいな」


「それはちゃんと教えるから安心して良いよ」


「ホント? 有難うツトム!」


 二人の世界に入りそうになったが何とか踏みとどまる。


「それでは来週も火曜日にここで特訓をします。が、テッシンさんとキョウカさんエリナさんは月曜日に市場に行きますから朝六時に僕のアパートまで来て下さいね。来週の月曜日は魚市場に行きます。そこで徹底的に魚について学んで貰いますから!」


「はい! 先生! よろしくお願いしますっ!」


 魚好きのエリナは力いっぱいそう返事をする。その顔は嬉しそうである。が、テッシンとキョウカは


「むう、それがしは朝早いのは苦手なのだが……」

「私、魚臭い場所って苦手なのよね……」


 それぞれの理由で渋い顔をしていたのであった……  


 そして翌日水曜日である。ツトムとユウカは二人で三重県内にあるDランクダンジョンに来ていた。コウスケたちはキョウカ、エリナを連れて奈良県のAランクダンジョンに行っている。


「ツトム、今日はどうするの?」


「ユウカに【解体】を覚えて貰おうと思ってココに来たんだよ。大丈夫、ユウカなら直ぐに覚えられるよ」


 このDランクダンジョンではツトムに言わせれば食材の宝庫である。一階層では角ウサギ、二階層では牙イノシシ、三階層では小サーモンなどの魔物たちが出る。


「ユウカ、刃物屋で買ったペティナイフは持ってきてるよね?」


「うん。ちゃんと収納に入ってるよ」


「良し、それじゃ先ずは角ウサギから行こうか」


 そうしてダンジョンに入りツトムは倒しきらずに角ウサギを気絶させた。


「倒してないから肉体は消えない。この状態で捌くんだ。お手本を見せるね」


 そう言うとツトムはペティナイフを取り出して素早く皮を剥ぎその肉を解体していく。どのように気絶させたのか、生きている状態の筈なのに角ウサギはピクリとも動かずにあっという間に解体された。


「どうかな? 出来るユウカ? これが出来れば今日中に解体を覚えられるんだけど。他の方法だと時間がかかるんだ」


 ツトムの言葉に覚悟を決めた顔になるユウカ。


「うん、分かった。やる!!」


 それから一時間、一羽を解体するのにユウカは時間がかかるので三羽しか解体出来なかったのだが……


「あっ!! 出たよツトム! スキルに【解体】が出た!!」


「ホントにっ!? 早いねユウカ! 僕なんか十羽目でだったのに!」


 遂にスキル解体を覚えたユウカ。それからツトムはユウカに告げた。


「良し、それじゃ次なる段階に進もうよユウカ!」


「次の段階ってなに、ツトム?」


「今からお手本を見せるね」


 そう言って二階層に進むツトム。牙イノシシを見つけるなり、わざと言葉に出して


「【解体】!!」


 と言えば、牙イノシシが綺麗に解体された状態となった。


「えっ!? ええーっ!!!」


 これにはユウカも驚いた。話では聞いていたが実際に目にするとビックリしてしまう。


「どうかなユウカ? 食材だって思えばこんな事も出来るんだよ【解体】は」


 と簡単に言いながら牙イノシシを収納に入れるツトム。けれどもコレを覚えればダンジョン攻略も楽になるのは確実なのでツトムとしてはユウカに是非とも覚えてもらいたいのだ。


「コツはね、魔物を見た時に美味しそうって思う事なんだ!」


 その言葉を胸にユウカは真の【解体】を覚えられるように挑戦する。ここで例え婚約者であってもスパルタンTは容赦ない事が判明した……


 ダンジョンに入って既に八時間。途中で二度は休憩を入れたが、まだユウカは真の【解体】に目覚めていない。挫けそうになるがツトムの


「焦らなくても大丈夫! ユウカなら絶対に出来るよ!!」


 との言葉にやる気を出して頑張っていた。スパルタ教育者の「◯◯なら出来るよ、出来る筈だよ」は常套句である。遺憾無くそれを発揮しているツトム。


 そして更に三時間が経過。イノシシでは難しいかも知れないという事で三階層に向かい、小サーモン(体長五十センチ)という空中を泳ぎ人に向かい噛みついてくる魚の魔物を相手に試して見ることに。


 小サーモンを見た瞬間にまだおやつしか食べてなく、お腹の空いていたユウカは「美味しそう!」と心から思った!


「解体!!」


 ユウカが叫んだその瞬間であった。空中を泳ぎ、ツトムたちに気がついて向かって来ようとしていた凡そ五十匹の小サーモンが綺麗に三枚におろされて、それに気づかずに頭と骨だけで噛みつきに来ようとしてバタバタと地面に落ちて行ったのだった。


「出来たね、ユウカ!! 凄いよ!!」


「あっ!! やった! やったよツトムーッ!!」


 鱗も綺麗に剥がれて三枚におろされた身は地面に落ちる前にツトムが全て収納に収めた。


 それから頭と骨、剥がした鱗はユウカの収納に入れて、二人はダンジョンを出た。


「ユウカ、本当に凄いよ。僕はひょっとしたら今日中には無理かなって思ってたんだけど、ちゃんと出来るようになったから!」


「えへへ、実は物凄くお腹が空いちゃって、小サーモンを見た時に美味しそうって思ったから」


「そうか、僕が出来るようになったのも今から思えばお腹が空いてた時だったよ! 有難うユウカ、それに気づかせてくれて。よーし! それじゃ早く帰ってユウカの獲ってくれた小サーモンで美味しいご飯を作るね!! 今日はお祝いだーっ!!」


 そうして二人はダンジョンから自宅アパートまで笑顔で帰って行ったのだった。


 

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