第16話 ドーピングだめ絶対
「ダウン?」
「はい、
「なるほど」
「特に今回は、
どうりで集まった部隊には若い連中が多いと思った。
父は今後、俺が使いやすいように新人を用意してくれたのだろうか。
アホ大学生と形容したのはあながち間違いではなかったのかも知れない。
「それならなおさら”魔纏”は多用しないほうがいいのではないか?」
「いえ、新人のうちにこの負荷を味わっておく必要があるのです。何度も”魔纏”を経験することで順応してゆくものですが……全く情けない限りです。おい、立たんか貴様らァ……!」
ゲトラードは活を入れて回っていく。
あまり酷使しすぎるのはどうだろうか。
俺も前世ではブラック企業に努めていたものだから、加減を知らないトップについていかなければならない者の気持はよく分かる。
しかしながらトップになってみればなってみたで、今度は俺が下の者を酷使しなければならない立場になっていることに気づく。
(やはり人間とは業が深い生き物なのだろうな)
俺はポケットの金貨をひと撫でしてから、声を張り上げる。
「皆、もう少しの辛抱だ! 敵主力は肉壁を失って今や風前の灯。奴らがロンシャント砦に向かう前に確実に処理する! さぁ、もう一段階ギアを上げていくぞ!」
俺は声を張り上げると五百人の騎兵に、ぐんと出力を上げて"魔纏"を付与した。
ドクン、と音が響くような、心臓の脈動が全体に轟く。
武官たちの体に俺の魔力が流れ込んでいき、まるで血管のように赤い筋が武官たちの全身に浮き出てくる。
「うっ、うお"ぉお"! やべェよこれェ、力が
「あ”がっ、ぁあ”あ”あ”! オゥオゥおぅっ! んゥぎ、効くぅうう!」
「ん"ぐぅぁぁおう! ンガガ、ンガンガ! 最ッ高に決まってるゼェェ!」
「……」
武官たちは、危ないお薬でも接種したかのように挙動がおかしくなった。
さすがに俺は心配になってゲトラードに問いかける。
「……おいゲトラード、これは本当に大丈夫なのか?」
「お"ぉ”お”、なんという力ァ!
「ひぃぃぃぃ!」
ゲトラードも
「
俺はゲトラードの
「しゅ、出陣〜〜!」
天高くまで伸びる赤い魔力身に纏い、俺達はバルバトの下まで行軍を開始する。
"
◇◇◇◇
高速移動を開始してから数十分。
俺達はついにバルバト達の一団を捉えた。
「
「よし、このまま蹴散らすぞ! さっさと帰りたいからな!」
「いえ、少し様子を見るべきと存じます。敵は腐っても
ゲトラードの提案が煩わしい……。
というか赤い筋の走った顔の軍団が恐ろしいのでさっさと切り上げたい。
それに正直このまま激突すれば出会い頭にバルバトを撲殺できるような気がしていたこともある。
「いあ"! 心配は無用だ、それよりもさっさとバルバトを……」
「
ゲトラードが俺の言葉を遮り、ゆったりとした口調で話し始めたので、冷水を浴びせられたような気分になる。
どうやら俺は掛かり過ぎてしまっていたらしい。
恐ろしさのあまり正気を失っていたようだ。
ゲトラードは決戦を前に心を落ち着かせようとしてくれているのだろう。
「……どうやら俺もハイになっていたみたいだな」
「よくご自分が見えていらっしゃいますね。初陣は多かれ少なかれそうなるものです。此度は、後ろの連中の気に当てられたのでしょうな」
「ああ、全くそのとおりだ」
あとお前にもな、ゲトラード。
「普通の
ゲトラードは唸るような表情で言う。
「
「いえ、実在した人物ですよ。大昔に現れ、絶対的な力を以てこのアトラ大陸を統一した御仁です。
なるほど歴史は少し勉強不足だったな。
ゲトラードの言う"教え"とやらはこれから勉強するとして……ゲトラードからは若干探るような視線を感じる。
やはり俺がなぜこれほどの魔力を持っているのか気になっているのだろう。
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