第2話 大本営での激論
「な、な、何だと、いやしくも現人神(あらひとがみ)であられる天皇陛下元帥の大脳を、そう言う、訳の分からない器機に、取り出して、入れ替えるだと……。
SSの中将殿、気でも狂ったのでは、あるまいか?」と、豊田副武(とよたそえむ)軍令部総長が口火を切る。
そうだ、そうだ、と賛成の意見が、全員の口から発せられた。
しかし、ドイツ軍のSSの中将は、実に、覚めた目で、皆を見て言ったのだ。
「皆さん、お気持ちは良く良く理解できます。
しかし、米国に送り込んであった、我が国の女性スパイからの極最新の情報によれば、米国は、既に、「原子爆弾」と言う新型爆弾の研究を開始。近々、その最終実験も開始されると聞いています。
特に、人間の皮を被った悪魔と揶揄(やゆ)される、「フォン・ノイマン」と言う科学者は、この首都、つまり、この東京にその「原子爆弾」を投下せよと、既に新しい大統領の、トルーマン大統領に進言しているとかの、数数の情報を得ています。
その新型爆弾は、まだ、完成してないとは聞いていますが、これは、たったの一発で、この日本の大都市一個を瞬間的に蒸発させる力があります。
貴国でも、理化学研究所の仁科博士も研究されていると聞きますが、完成見込みはどうでしょう?果たして、今回の戦争に間にあいますか?
実は誠に、お恥ずかしい話ですが、我が国にも、ハイゼンベルクの不確定原理の発見で有名な、ハイゼンベルク博士を所長とした「ウラン・クラブ」と言う「原子爆弾」開発計画がありました。
しかし、このハイゼンベルク博士は面従腹背でした。
万一、これがもっと早くに完成していれば、ソ連軍のスターリン・グラード攻防戦での実戦投下、あるいは、ノルマンディー上陸作戦も阻止できたのですよ……」
「米国の新型爆弾は、それ程、強力だと貴殿は言われるのですか?」
「そうです、最終的には、この完成した「原子爆弾」を日本国中に全部で10数個を落とすとの、米国のスパイからの情報すらあるです。
これでは、貴殿の国の天皇陛下元帥の命すら、一切、保証出来ません。
ですので、「国体護持」のためにもと、はるばる、この日本にまでやって来たのです」
「では、仮にだよ、あくまで、仮にだよ。これは架空の話なのだが、ここで天皇陛下元帥の脳髄を取り出して「国体護持」に成功してもだ。それが、結局、一体どうなると言うのだ。
では、そのお互いの意思疎通はどう行うのだよ?
我が国には、「御前会議」と言って、天皇陛下元帥の御意見を聞き、最終決定する会議があるのだが、脳髄だけになった、陛下の御意見は、どうやって聞くのだね?」
「それは、誠に良い質問です。
現在の科学では、脳髄の永久保存は、我が国の技術で何とか開発致しました。
ですがおっしゃられる通り、その脳髄の意思は、今、まだ直接に聞く事は出来ません。ここが、難しい所です。
しかし、脳髄さえ生きていれば、既に、米国で完成していると聞いている、電子計算機の、更なる高度な発達により、脳髄の意思を聞き取れる時代は、必ず、やってきます。
要は、そこまで、生きながらえる事が、肝要では無いでしょうか?」
「うーん、そこまで、この日本は追い詰められているのか?」
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