ヒットラーの脳髄!!!
立花 優
第1話 奇跡の来航
時代は、西暦1945年5月中旬、既に、日本連合艦隊最後の作戦と言われた、天一号作戦が、完全に失敗し、日本が世界に誇った巨大戦艦「大和」も、大爆破の後、沈没。
沖縄では、米軍が総勢1,500隻以上もの、巨大な艦船部隊の派遣で、沖縄の周囲を取り囲んでいた頃、たった一隻の超大型Uボートが、機雷のばら撒かれた東京湾を、奇跡的に進んで来て、半ば廃墟にも近い、東京の港に辿り付いたのだった。
日本軍の中には、陸軍であれ海軍であれ、かっての駐独武官も数多くいたため、この潜水艦をドイツ軍の超大型Uボートとして認識。……日本の、伊400型潜水艦には、流石に及ばないのだが。
この情報は、直ちに、東京の地下深く掘られた大本営内部の、各高官に伝達された。
で、ほぼ、米軍により壊滅された廃墟にも近い首都東京の道路を、ガタガタ揺れながらもボロボロの自動車で、ドイツの高官を当該超大型Uボートから降ろし、地下深く、秘密裏に存在する大本営本部へと、連れて来たのである。
当時、日本の敗戦は、最早、ほぼ確定的であり、沖縄戦も、その敗北が近い事は、大本営にも伝わっていたのである。
さて、地下深く掘られた大本営に呼ばれた、ドイツ軍の高官は、流ちょうな日本語で話し始めたのだった。
「日本の皆さん、誠に悔しい話ですが、我が第三帝国は、去る5月7日に、遂に、連合軍に降伏致しました。
そして、今回、この私、SS(ドイツ親衛隊)の中将でもある私が、危険を冒して、この日本までやって来たのには、ある、重大な密命を帯びているからなのです」
「そ、それは、一体何なのです。そもそも、東京湾には、米軍がばら撒いた筈の多数の機雷がある筈。
よくもまあ、御無事で、この日本の東京の港まで来られたものですね」
「イヤ、我が第三帝国の技術力、科学力を、馬鹿にしてもらっては困ります。
ソナーと金属探知機を、組み合わせて、この東京湾を、突破して来たのです」
「で、貴殿が、命懸けで、この日本にまでやって来られたのには、如何なる理由があるのですか?」
「それは、ある超特赦な器機を、実際に見て貰わないと、この口だけでは説明出来ません。誰かが、あの超大型Uボートまで来て実況見分されないと、この私の来日の意味が、上手く伝達出来ません」
「では、私が、行って確認しようではないか?」
「失礼ですが、貴殿は、阿南惟幾(あなみこれちか)陸軍大臣殿では?
しかし、私が、お見せしたい器機は、医学者でないと、全く、理解不可能なのです。
この中に、医学、特に、脳医学に秀でた人はいませんか?」
「あいにくだが、ここは大本営本部であって、ほぼ、軍人で占めている。医学の、特に、脳医学に秀でた人間は、只の一人もいないです」と、陸軍大将はポツリと言う。
「そうですか、この話は、非常に重要な話であって、医学の、特に、脳医学の理解できる学者クラスでないと、全く、理解が出来ないのですよ」
すると、ある末席の軍人が、言った。
「私の友人に、東京帝国大学医学部を主席で出た、その東大でも百年に一人とも言われる天才がおります。彼の名前は橋本秀樹と言い、世界的には未だ無名ですが、世が世ならば、ノーベル医学賞すら受賞していた程の脳外科の権威です。既に、ポルトガルのエガス・モニスの提唱した脳外科の研究もしています。その彼なら、どうでしょうか?」
「そうですか。そのような天才医学者なら、あるいは、御理解頂けるかと……」
こうして、その東大の天才博士と、陸軍大臣、海軍大臣らが、勇んで乗り込んだ超大型Uボート内で、皆、驚愕の器機を、目の当たりにするのだった!
「こ、こ、これは一体、何なのです?」
「ハッキリ申し上げて、人間の脳髄を、永遠に長生きさせる器機なのです。正式名称『脳髄永久存続装置』です。
我が、ドイツ第三帝国の究極の研究結果より生み出された、この世の究極の器機です」
「し、しかし、人間の身体は、いくら新陳代謝を繰り返してみても、せいぜい持って、120年が、生存可能限度と言われています。
それが、一体、どうやって、この生命の根幹の原則を、覆せると言うのですか?」と、橋本博士が医学的疑問を聞く。
「橋本博士、誠に、鋭い質問です。
既に、1939年に、最新の医学的研究により、人間の細胞の極先端に「テロメア」と言う遺伝的組織があり、新陳代謝を繰り返す事によって、徐々に、この「テロメア」が縮んで行き、やがて、人間は死を迎える事が確認されたのです。皆さん、これぐらいは、御理解できますよね。
丁度、この「テロメア」とは、日本の「落語」に出て来る、あの「命のローソク」の話だと思って下さい。
ですが、強制収容所内のユダヤ人を使った本物の人体実験により、この「テロメア」の存在を大幅に阻害する「テロメアーゼ」と言う新しい酵素の発見と、この人工心肺装置『脳髄永久存続装置』により、常に、浄化されたブドウ糖と新鮮な酸素をこの人口血液に吸収させる事によって、その不可能が、遂に可能になったのです」
「では、貴殿の最終的な、来日の目標とは?」と、阿南陸軍大臣が聞く。
「それは、敗戦間近の、この日本の「国体護持」のためにも、現在の、日本のエンペラーであられる天皇陛下元帥の脳髄を、これと同じ仕組みで、永遠に生きながらえる為なのです」
えっ!この言葉に、その場にいた、日本人全員が、気を失いかけた。
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