第2話 輝く泉との出会い

 ある晴れた日の午後、リクは森の中で薪を集めていました。村のはずれにあるこの森は、リクにとって特別な場所でした。鳥たちのさえずり、木々のざわめき、そして小川のせせらぎ――それらが奏でる音は、リクにとって心を落ち着ける大切なメロディでした。木々の間を縫うように進みながら、リクは手にした小さな斧で枯れ枝を切り集めていました。


 そんなとき、森の奥から不思議な輝きが見えました。淡い金色の光が木々の隙間からこぼれているのです。リクは「なんだろう?」と興味を持ち、その光の方向へ歩き始めました。


 歩みを進めるたびに光はますます強くなり、やがてリクはそれが小さな泉から放たれていることに気づきました。その泉は木々の間にぽっかりと空いた空間にあり、日の光が泉の水面に反射してキラキラと輝いていました。しかし、それだけではありません。泉自体がまるで生き物のように、淡い金色の光を放っていたのです。


 「なんてきれいなんだ…」

 リクは息をのみながら泉に近づきました。水は透き通っていて、底の小石までくっきりと見えます。その水面に自分の顔が映ると、なぜかそれが揺らめき、まるで自分に語りかけてくるような不思議な感覚に包まれました。


 そのとき、静かな声が風にのって聞こえてきました。

 「この泉は『ギフトの泉』。心を込めて与えたものは、形を変え何倍にもなって戻ってくるだろう。」


 リクは驚いて辺りを見回しました。けれども、誰もいません。ただ泉がそこに静かにたたずんでいるだけです。

 「いったい誰が話しているんだろう?」

 リクはもう一度泉を見つめました。すると、声がまた聞こえてきます。

 「信じるかどうかは、お前次第だ。」


 リクはしばらくの間、泉を見つめていました。しかし、声の意味はすぐには理解できませんでした。リクはやがて肩をすくめ、

 「きれいな泉だけど、ただの伝説だよね。」

とつぶやくと、薪を抱えてその場を後にしました。泉のことを不思議に思いながらも、あまり深く考えないようにしていました。




 村へ戻る途中、リクは森の入り口近くで一人の旅人に出会いました。その旅人は年老いて、長い道のりを歩いてきたためか、くたびれた様子で地面に座り込んでいました。旅人はリクを見ると、弱々しい声で言いました。

「少年よ、少しの水や食べ物を分けてもらえないだろうか?長い旅で疲れてしまって…。」


 リクは自分の荷物を見下ろしました。その中には、家に持ち帰る予定の薪と、小さな袋に入ったパンが1つだけ入っていました。そのパンは、お母さんが作ってくれたもので、リクが今日の昼ごはんに食べようと持ってきたものです。


 リクは一瞬迷いました。このパンは自分が食べる唯一のごはんです。でも目の前の旅人は、本当に疲れ果てている様子で、放っておくわけにはいきませんでした。


 「おじいさん、このパンでよかったらどうぞ!」

リクはにっこり笑って、パンを差し出しました。


 旅人は驚いたように目を見開きました。

 「いいのかい?君は何も食べなくて大丈夫なのか?」

 「大丈夫だよ。ぼくはまだ元気だから。おじいさんの方が食べた方がいいよ!」


 旅人は目に涙を浮かべながら、そのパンを受け取りました。そして深々と頭を下げて言いました。

 「ありがとう。君のような優しい少年に出会えて、本当に幸運だ。」


 リクはその言葉を聞いて胸がじんわりと温かくなるのを感じました。

 「ぼく、大したことはしてないよ。それよりおじいさん、元気を出してね!」

そう言うとリクは手を振り、再び村へ向かって歩き始めました。




 その夜、リクはふと森で見た泉のことを思い出しました。「ギフトの泉」という声が語った言葉――「心を込めて与えたものは、形を変え何倍にもなって戻ってくる」というあの言葉が、頭の中でぐるぐると回っていました。


 でもリクは首を振って、

 「あれはただの偶然だよね。でも、おじいさんが喜んでくれてよかった。」

とつぶやきました。そしてそのまま、静かに眠りにつきました。


 しかし、リクはまだ知らなかったのです。この日の行いが、後に大きな奇跡を生むことになるとは…。

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