ギフトの輪
まさか からだ
第1話 小さな村の優しい少年
むかしむかし、山々と広い森、そして川に囲まれた小さな村がありました。その村にはリクという男の子が住んでいました。リクは10歳くらいの男の子で、背は少し小柄でしたが、いつも元気いっぱいでした。そして何よりもリクは、とてもやさしい心を持っていることで村中の人に知られていました。
リクの家は村のはずれにありました。小さな木の家で、家族はお父さんとお母さん、そしてリクの3人だけ。お父さんは森で木を切って薪を作り、お母さんは川で洗濯をしたり、小さな畑で野菜を育てたりして家族を支えていました。生活はとても質素で、リクの家には贅沢なものは何もありませんでした。けれど、リクはそんな生活に不満を持ったことはありませんでした。
「ぼくたちには家がある。ごはんもある。それに、みんなで一緒に笑える。それだけでじゅうぶん幸せだよ。」
リクはいつもそう言って、明るく笑っていました。
リクは特別な力を持っているわけではありません。でも、誰かが困っているのを見ると、じっとしていられない性格でした。たとえば、ある日、村のおばあさんが市場で買い物をしていたときのこと。おばあさんは重たいカゴを両手に持ち、よろよろと歩いていました。それを見たリクはすぐに走り寄ってこう言いました。
「おばあさん、そのカゴ、ぼくが持つよ!」
「まあ、リク、ありがとうね。でも、重いわよ、大丈夫かい?」
「へっちゃらだよ!ぼく、力持ちなんだ!」
リクはそう言って、カゴをひょいっと持ち上げました。実際にはとても重かったのですが、リクは文句ひとつ言わず、おばあさんの家までカゴを運びました。おばあさんはとても喜んで、リクにお礼のリンゴをひとつくれました。でもリクは言いました。
「ありがとう、おばあさん。でも、このリンゴはおばあさんが食べてね!ぼくはおばあさんの笑顔が見られたから、それでじゅうぶんなんだ。」
また別の日、小川のそばで遊んでいた小さな子どもたちが、何かでけんかをして泣いているのを見たリクは、すぐに駆け寄りました。
「どうしたの?」
「この子がぼくの石ころを取ったんだ!」
「違うよ、これはぼくが拾ったんだもん!」
リクは二人の間にしゃがみこんで、それぞれの話を聞きました。そして、しばらく考えてこう言いました。
「この石ころ、すごくキレイだね!でも、どうしてみんなで一緒に遊べないのかな?」
「一緒に?」
「そうだよ。たとえば、この石ころを使ってお城を作ったり、橋を作ったり。そうしたら、二人とも楽しいんじゃないかな?」
リクの提案に、子どもたちは顔を見合わせてうなずきました。そして3人で一緒に石ころを使った遊びを始め、笑い声をあげました。
こんなふうに、リクはいつも誰かを助けたり、仲直りさせたりすることで、周りの人たちを笑顔にしていました。でも、そんなリクの行動を冷ややかに見る大人たちもいました。
「リク、そんなことばかりしていて、自分の生活は良くならないぞ。」
「自分のことをもっと考えなさい。」
「他人を助けたところで、お腹はふくれないんだぞ。」
そんな言葉をリクに投げかける大人たちもいました。リクの家が貧しいことを知っている大人たちは、リクが自分の時間や力を他人のために使うのを無駄だと思っていたのです。
でも、リクはそんな言葉を気にすることなく、にっこり笑って答えました。
「いいんだよ。ぼく、助けるのが好きなんだ。」
リクの笑顔は、本当にあたたかいものでした。まるで春の陽だまりのように、どんな人の心もほっと明るくする力がありました。その笑顔を見ると、大人たちもなんとなくそれ以上は言えなくなってしまうのです。
ある日、村でお祭りが開かれることになりました。村中の人が協力してお祭りの準備をしていましたが、リクも小さな手を精いっぱい使って手伝いました。飾りを運んだり、椅子を並べたり、子どもたちと一緒に遊びながら準備を進めました。お祭りの日、リクが村人たちの笑顔を見ていると、なんだか胸がぽかぽかしてきました。
「ぼくが助けたから、みんなが笑ってるんだ。これって、すごく幸せなことだな。」
リクにとって、助けることは「大好きなこと」でした。そしてその日も、リクの笑顔はまるで太陽のように村中を明るく照らしていたのです。
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