初配信

配信器材一式が届いた。


パソコン、マイクect...と必要なものがたくさんある。いったん部屋に持ち込んで組み立てだったりセッティング経ったりを済ませてしまおうってわけで早速作業に取り掛かった。


「パソコンは変わんないね。スマホとかもさ」


設定を色々しながらそんなことを考える。便利なものは何年たっても形を変えないらしい。パソコンだったりスマホだったりも会社や名前は変わろうとも中身はあんまり変わらない。まぁ、性能は良くなっているけどね。


「こんな感じかな」


配信ができるようにパソコンのアレコレを設定したりマイクを接続し終えた。後は配信開始ボタンを押すだけ。

時刻はまだ午前中だ。この時間は普通は学校だったり会社だったりで見に来る人も少ないだろう。


「もう一回ツイートして夜に配信するんでいいか…」


昨日作ったSNSアカウントで宣伝をしてパソコンがセットされている机に向かって椅子に座る。一旦、暇になった。


「………………散歩するか」



暇になったら散歩だ。年寄りみたいな趣味かもしれないけれど現代の日本にまだ慣れていない俺からしたら十分楽しいから問題ない。スマホとデビットカード、後はマンションのカードキーをポッケに突っ込んでマンションを後にする。


すでに師走の世間はクリスマスっぽい飾り付けでにぎわっている。めちゃくちゃ寒いからか外に出ている人は大抵コートだったり厚着だ。こうなってくると俺が異端みたいだ。


ちなみに現在の俺のコーデ、ヘソ出しタンクトップにズボン。普通に気温が35°の人間な件について。

周りの視線が若干痛いです。


「………………服買うか」


そのままショッピングモールに入り上着を一着買う。会計時に店員に


「このまま着るんで」


と言ったら


「でしょうね」


と返された。なんか悔しい。

というわけでタンクトップの見ているだけで寒そうなコーデからジャンパーという上着を手に入れたことで大進化を遂げた。


「これなら変な目で見られないだろ」


そんなわけで再び散歩に繰り出す。都会の喧騒を受けながら辺りを歩き続けると見覚えのある光景が目に入ってきた。


「実家じゃん」


そう、渋谷ダンジョンである。





渋谷ダンジョンの隣にあるダンジョン関連の店に入ってみた。中には魔法が付与されたアクセサリーから剣、魔法の杖だったりとダンジョン攻略に使えそうな物がたくさん売っている。


「これってダンジョンのドロップ品ってこと?俺のダンジョンからこんなに取れるんだ……」


ダンジョンでモンスターからドロップした武器だったり魔石、普通に人間の手で加工されたアクセサリーだったり武器といろんなバリエーションを見ながら店内を散策しているとふと気になったことがあった。



「俺って死んだら何がドロップするんだろ」


腐っても俺はモンスターだ。つまり、俺が死んだら魔石はドロップ確定、そのほかにもユニーク武器だったりがドロップする可能性が高い。


「触手とかがドロップしたら笑えるな」


そんなことを言いながら店を出て散歩を続けた。





「ただいま~」


と誰もいないマンションの一室に入っていく。時刻は午後6時。

あの後は店を出た後にファストフードでハンバーガーを食べた後にまた散歩を再開。その後は特にすることがなくブラブラとそこら辺を歩いていた。途中によくわからない人間から名刺を貰った。多分そのくらい。


「さーて、それよりも配信だ」


まあ、散歩で一日の時間も潰せたことだしいざ行かん配信へってなわけで


「配信開始ボタンポチ―」


-は?

-マジでエロボスじゃん

-本物キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

-マジかよ

-本物じゃん

-誰だよ、偽物って言ったの

-ガチかよ

-本物じゃん

-いや、服装がエロボスじゃない

-確かに

-普段のエロボスの格好になってください


「あぁ、ジャンパー脱げばいいのか」


-キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

-本物だ

-この内臓が詰まってそうなお腹、間違いなくエロボスだ

-本物かよ

-祭りだ!!!!

-この瞬間を待っていた

-エロボスじゃん

-え?ガチで本物?

-寒くないんか?


「寒くないぞ」


-でもダンジョンから出たときは寒がってたよね

-確かに

-ほな偽物か


「みんなもたいして寒くないときも寒いって言わない?例えば風が強いときとか。それと同じだよ」


-あぁ~なるほど

-確かに寒くないときも寒いっていうときはあるわな

-納得


「まあ、実際は俺は適応能力が高いから寒さを感じなくなっただけだよ。それらしい理屈に納得させられちゃってプークスクス」


-草

-メスガキエロボスやんけ

-悲報、エロボス。メスガキだった

-こいつが記者会見で滑ってたとは到底考えられない

-草

-エロボスの本名って何?

-初見です

-草

-エロボスの自己紹介はよ


「初配信だから初見に決まってんだろ。で、自己紹介?」


-名前が知りたい

-初配信と言ったら自己紹介でしょ

-スリーサイズはよ


「あー、俺名前わすれちゃったんだよね」


-は?

-草

-そんなことある?

-草

-草

-嘘やん


「ガチだよ、本名はわからない。気づいたらダンジョンにいた哀れな捨て子よ」


-そーなんだ

-俺たちで名前決めてもいい?

-名前を決めない?


「あぁ~、ありあり。みんなで名前決めちゃっていいよ。そうだな、題して『第一回エロボス命名式』!!!ドンドンパフパフ」


-イエーイ

-第一回www

-二回目があってたまるか

-草



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