地上

「まあまあ、ここで立ち話もあれだし地上に出よう」


「ここでもしかしたらエ……エロボスとはお別れかもな」


「たぶん大丈夫でしょ」


ダンジョンと地上の境に来た俺たちは俺が地上に上がることができるのかについて議論していた。


「とりあえず出てみた何かやぱかったらすぐに戻ろう」


「具体的にやばいって?」


「地上に出た瞬間にエロボスが燃えたりとか」


「吸血鬼かよ。大丈夫だって、多分」


そうしてダンジョンの門を潜り地上に降り立つ。そして俺に続くかのように冒険者たちもダンジョンの外に脱出した。


「さっむ」


ダンジョンの外にだた最初の一言はこれだった。ダンジョンの外は思ったよりも寒い。というか逆に考えてダンジョンの中って思ったよりも快適だったのでは?


年中問わず気温は20~25度に安定していて、湿度ともに良好。光も強すぎず弱すぎずで明るいながらも寝ることは可能。うん、ダンジョンって快適だ。


「天羽~、ダンジョンに戻りたい」


「は?何か体に異常が……………………」


「いや、普通に寒いから」


「……………………」


「ダンジョンっのほうが暖かいし戻りたい」


「………まあ、今は11月だしそんな福じゃ寒いわな」


「どうにかならない?触手モードみたいに別のモードとかで寒さをしのげたりできない?」


「できるけどさ、やっぱ文明のありがたみを感じたいじゃん」


「と、言うと?」


「お前が来ている服貸して?」


「はよ別のモードを起動しろ」


「へいへい」


天羽のケチ、服の1着ぐらい貸してくれてもいいじゃん。

仕方がないし、変化して寒さを凌げるようになろう。こういう時に俺の能力は便利だからいいよね。


「ほい、ビーストモード」


「えっろ」


「は?」


「いえ、なんでもありません」


体に体毛を生やして獣人っぽい姿に形を変える。ちなみにモデルは狐。個人的な話なんだけどこの世で一番かわいい動物は家畜化された狐だと思うんだよね。あのふわふわの尻尾とか最高。


「ふー、暖かい」


「なんかその恰好」


「ビーストモード、かわいいでしょ」


「なんというか、目のやり場に困る格好だな」


「あー確かに、服とかも服が毛のせいで見えないもんね」


「お前のその顔で上裸はヤバいぞ」


「うわっBanされた」


「は?」


「エロボスがエロ過ぎて配信がBanされたんですよ。まったく、天羽が服を貸さないから…」


「嘘でしょ?俺は上裸になっていいの?」


「別にいいでしょ。男なんだし」


「エロボスも男だぞ」


「彼は限りなく女性に近い男でしょうが」


「そんな理不尽…」


そんな風にダンジョンの入り口でワチャワチャしていると如何にも高級車っぽい黒い車が数台止まった。車から出てきたいかにもエリートそうな女性がこっちに歩いてくる。その佇まいからはどこかカリスマのようなものも感じる。


「お待たせし、可愛い……」


カリスマタイム修了である。俺の姿を見るなりすぐにエリートそうな佇まいが消え失せ、さっきカリスマの塊だと感じてしまった自分が情けなくなってくる。


「めっちゃ可愛いんだけど、ちょっと触ってもいいですか?」


「別にかまいませんけど」


「やったー!うわ~、もふもふ…」


「あの、大臣?」


「へ?」


「そこらへんにして早く輸送を…」


「あ、あぁ。そうだな」


後ろの自衛官?っぽい人に声をかけられて正気に戻った大臣は平静を装い俺を車まで案内した。正直な所、さっきまで「もふもふ~」とか言っていたし今され平静を装っても全然意味がないような気がする。というのは野暮だから言わないでおこう



「まず自己紹介からしましょう。私はダンジョンに関することを管理しているダンジョン省の小早川です。よろしく」


「よろしくお願いします。俺の自己紹介……って見てもらえました?」


「ええ、配信を拝見しているので理解しています」


「なら自己紹介しなくてもいいか。ちなみにこの車ってどこに行ってるんです?」


「アナタは保護するために移動中です。詳しい詳細は説明できないものでして」


「機密情報的な?」


「理解が早くて助かります。これからあなたの体を保護すると同時に解析をさせていただきます。よろしいですか?」


「解析って具合的に何を?」


「レントゲン検査などの一般的な健康診断を想像していただいて構いません。他に何か質問は?」


「俺が保護される場所に服ってあります?」


「……………………おそらく…………」


勘弁してくれ。流石に保護される所には服があると信じたい。というか服が無かったら保護から解放されるまでずっとこの姿?

別に大きな問題はないが「毎日の掃除が大変そう」だったりと日常のちょっとしたところで不便になりそうだから勘弁してほしい。


そんなことを思いながら窓の外を眺めているといつの間にか大きな研究所のような場所にたどり着いた。

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