ホームステイ美少女のきらきらエクスペリエンス-情熱レフティオの1ページ-
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第1話
オレがまだ小さい頃。
元気すぎるサンタクロースとお手伝い妖精のトントゥに出会った。
『ふぉふぉふぉ! こんにちは和頼少年。良い子にしてたかい!』
寡黙なトントゥを引き連れた陽気な婆ちゃんサンタは、初対面の少年(オレ)に熱烈なハグ&高い高―いの後にぶん回しをかました。インパクト抜群でフレンドリー。その行動は言葉の通じない異国で不安がっている俺の目と心を秒速で奪い、キラキラ輝いて見えたものだ。
以来、その豪快なサンタを恩師と仰ぐオレは短い間に色々と面倒を見てもらった。小さい頃の話なので大分記憶は薄れてしまっているが、それでも強く印象に残っている言葉がある。
『いいかい? あんただけの情熱を見つけるんだ、それもとびきりキラキラしたヤツ。それさえありゃ誰だって笑って過ごせるもんさ』
そんな恩師の名言に倣って、オレは自分だけの情熱を探している。
まあ……高校生になった今でも見つかっていないが……。
いつか自分の内からとてもキラキラしたものが見つかると信じて。
――そんなオレは、なんとアホなのか。
そのキラキラが内からではなく外から――それも唐突に来る可能性を失念していたのだから。
いやでも、無理もないなとも思うのだ。
例えば遠く離れた外国から来日した、メガトン級の情熱を持つ北欧美少女。
そんな少女と過ごす驚きの日々が、キラキラ輝く切っ掛けに繋がるなんて未来予想図にあるわけない。
そう、あるわけないだろ!! って話なのだから。
けれど、あの時にはその『あるわけない』が始まっていたのだ。
胸に秘めた大きな情熱を具現化した手帳(レフティオ)を片手に――あいつと一緒に駆け回る。
とびきりキラキラした情熱の日々が。
==プロローグ①出会い
『親愛なる佐倉崎 和頼殿へ。もう少しで着くからのんびりしてて!』
「……あー」
手元のスマホに表示されたメッセージを読みながら春の空を見上げる。
少々バスが遅れている影響で、こっちに向かっている友人が到着するのはまだ先になりそうだ。
待ち合わせ場所にした駅前は、春休みなのもあって人通りは多い方。きっと誰もが残り少ない連休を楽しもうとしているのだろう。家族連れや学生らしき若者の、まぁ多いこと多いこと。
かくいうオレも付き合いの長い友人と大した予定も立てずに遊びに出掛けようとしているので、大した違いはない。
……そう、無いはずなのだが。
「なんだろうなぁ。どうしてあんなにキラキラしてるんだろうか」
暖かな太陽の光。
心地よく肌を撫でる風。
栄えている駅前の広場に咲き誇り、時に舞い散る桜の花。
THE・春。
存在する空間は同じはずなのに、オレは疎外感のようなものを感じてしまっていた。
油断するとすぐコレだ。気にしすぎなのは分かっているが、気になってしまうのだからどうしようもない。道行く人達をぼーっと眺めているだけで、その誰しもに大小違いはあれどキラキラしたものを感じてしまう。
一方オレはと言えば、キラキラの逆。
一言でまとめると、とても『くすくす』している。
オレの恩師が教えてくれたくすんでいる・くすぶっている奴を表している言葉は、今も忘れられずにオレの中に残っている。
「…………早くなんとかしたいもんだ」
ひとまずは、だ。
根本的な解決にはならないが、陰鬱にならないためにも友人(ダチ)と一緒に遊びに繰り出したい。
でも、その前に飲み物でも買って気分と喉をリフレッシュするか。
近くのカフェに移動して、桜色の香りがする見栄えのいい飲み物をテイクアウト。再び待ち合わせ場所へ向かおうとしたその矢先。
「おっ?」
「あうち!」
店の入口にある自動ドアを出て曲がった瞬間に、胸辺りにボスッと衝撃がきた。
つうかあうち? あうちって言ったかいま?
オレにはまったく大したダメージはなかったのだが、どうやらぶつかったのは人の頭だったようで、視線を下げた先にはふらついている頭部があった。
「うおっと!?」
そのまま後ろに倒れそうになった相手を反射的に支えようと、慌てて背中に腕を回す。だが、相手がコケるのは避けられたものの荷物まではどうにもならなかった。引いていたとおぼしきキャリーケースがガコーン! と盛大に倒れ、ついでに相手の持っていた小さなバックが飛んでった際に中身が散らばってしまう。
「すまん! 大丈夫……いや、大丈夫じゃないな。すぐに拾うから」
謝りながらぶつかった相手を助け起こす。
そこでようやくオレは目の前の人物の姿をしっかり確認できたのだが……一瞬言葉を失った。
「そり!! こちらこそ前方不注意のとんだご迷惑を――」
一言でまとめるなら、そこに居たのはとんでもない美人さんだった。
それもただの美人ではない。とても日本人離れした風体の外国人美少女だ。
この辺では全く見ることのない異国情緒を感じるカラフルな模様の服。
そのまばゆい黄金のような長い髪はそよ風で揺れているだけで美しい。目元は衣服とはミスマッチすぎる黒いサングラスで見えないが、それでも整った顔立ちの美貌が霞むことはない。むしろ見えないことでどんな目をしているのかドキドキしながら想像してしまいそうだ。
すらっとした細い腕の先ではキャリーケースが引かれていたようで、旅行者か何かだろうか。まさか撮影のために訪れた外国人モデルさん――と、勝手な想像をしながら非常に女の子らしい見事なボディに注目しそうになって……「ハッ」と気づき、なんとか目を逸らした。
どこのどなたか存じあげるはずもないが、さすがにワールドクラスに膨らんでいるビッグなバストを凝視するのは良くない。「うぉ、でっか」とか冗談でも口にしようもんなら銃で撃たれても文句は言えないだろう。
とにかく!
何が言いたいかと言えば、くすくすしている学生では伝えきるのが難しすぎるレベルの美少女がすぐ目の前にいるって話だ。
そんな少女がほぼ違和感のない流暢な日本語を口にしたのだから、続けて二度ビックリしてしまう。「そり!」と聞こえたが、多分そーりー――要は「ごめん」って意味だよな?
「こ、こっちこそソーリ―?」
せめてもの謝罪の気持ちが伝わればと上手くもない謝罪を口にしながら、舗装された歩道に散らばった物を素早く拾い集める。持ち主たる彼女も拾うために屈んでくれたのだが、何やらふらふら~と前のめりにコケそうになっていて罪悪感が倍増されてしまう。
よくわからんが相手はかなり疲れているようだ。キャリーケースからしてどこぞへ旅行してきた帰り道なのかもしれない。
「いいよ、そこの壁沿いで休んでてくれ。すぐに終わるから」
「あ、ありがとぅ」
小さな驚きと感謝を感じさせるような言葉を聞きながら、さっさっと荷物を拾いあげていく。ペンにハンカチ、メガネケースに包装された飴に……それから。
(……手帳?)
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