EP042
地面のない青い空間をエバを追いかけて歩いていた。
というか、歩くジェスチャーをしていると進んでいた…。が、正しい表現かもしれない。
僕は浮かんでいる空間で、歩く動きをとっているだけなのだ。
僕の足には地面を蹴る感触はない。
僕の身体には体重が移動している感覚もない。
ただ、歩くポーズをすると背景が動いて行く。
僕には同じところにいる感じしかないのに、景色だけはどんどん変わっていく。
『まるでヘッドセットをしたVRの世界だな…。』
そんな感想を抱いていると、急に背景が変わった。
一歩進んだだけなのにそこは桃色の世界だった。
さっきまで青空の中を歩いていたのに、あっという間もなく見渡す限り桃色で埋め尽くされた。
単純に驚いた。
ただ、驚いたとは言っても、道を歩いていて急に気温が下がった時のような、『えっ?!』という感じの驚きに近いものだった。
そんなことよりも、ここにいた生物?の方に僕は驚きと興味を覚えてしまった。
その生物?に既視感もあった。
ここは、奇妙な生物?…、否、植物?…、のようなものが世界一面を覆い尽くしていたのだ。
その生物?植物?のようなものの桃色でこの世界は染められていた。
『ここはこいつらの生息地なんだ…。』
不思議なフォルムをしていた。
毛のように細い根っこのような足と、しなやかな茎のような身体と、手のような頭を持った摩訶不思議な形状…。
それがたくさんいたのだ。
否、「たくさん」なんて言う言葉では形容できない。
この世界の全てが、この異形な生物?植物?なのだ。
なぜどっちが足でどっちが頭だと断定できたかって…。
もしかするとこの僕の判断は間違えているかもしれない。
僕が思っているのとは真逆かもしれない。
ただ、なんとなく、僕のメモリーの中にそんな印象が残っていた。
この異形な生物?植物?は、単独で存在しているのではなく、たくさんが連結するように存在しているのだ。
その連結にはルールがあって必ず一体の頭?と、違う一体の足?を、連結させている。
厳密に言うと、きっちりとつながっているのではなく、頭?と足?の間にほんの少し隙間を開けてつながっているのだ。
そうして長く長く、つながっているのだ。
世界を覆い隠すほど、密集してつながっているのだ。
そして、足と思われる部分から何かを出し、頭と思われる部分がそれを受け取っているのだ。
必ず足から何かを出し、頭が受け取る。
一方方向にしか何かは運ばれないのだ。
なぜ一方方向だと分かったか?だって。
それは観察していて分かったのさ。
連結している隙間を何がが動いていた。
それを観察していると、連結している一方の生物?植物?の色が変化しだしたんだ。
桃色から黄桃色になって、そして発光したんだ。
すると、発光した生物?植物?の隣の生物?植物?が次に発光したんだ。
多分、発光は運ばれている物が満タンになったサインなんじゃないかなぁ…。
そのサインは一方方向にしか表れない。
だから、運ばれている何かは必ず一方方向にしか運ばれないと推測したんだ。
そこから導き出されのが、どの隙間も足?の方から頭?の方へ。
だから、何らかの物質が足から頭へ運ばれてるって推測できたんだ。
もっとよく観察してみると、根っこが大きくたくさんの手とつながっているものもあれば、根っこを二つ持っているものもあったり…。
フォルムが十字になっているものや、Y字になっているものもいた。
この生物?植物?は、何らかの影響から変態するようなのだ。
『この生物?植物?は知能があるかのように、ネットワークに対する可塑性をもっていて学習や経験から能力を向上させているんだ…。』
そうすることによって受け取り作業自体は一方方向しか行ってはいないが伝達は多岐に渡って行われていたのだ。
ふと見渡すと、桃色の世界の遠くに赤黒くなった部分をみつけた。
そこに近づいてみる。
そこは、そこにいたのは機能を停止した生物?植物?のたくさんの残骸だった。
おびただしい数の生物?植物?の残骸だった。
あるものは朽ちていた。
あるものは腐っていた。
あるものは折れていた。
あるものは切断されていた。
壊れた部分に連結していた生物?植物?はそれらとの連結を解除し、ゆらゆらと揺らめいていた。
しかし、この生物?植物?は、世界を埋め尽くすほどにたくさんいるのだが、それ自体の増殖は行われていないようだった。
分裂も増加も行われてはいなかった。
『もうこれ以上成長しないということなのか…。破損部の修繕も、再生も行われないのか…。』
一度破損すると、二度と同じ構造には復旧しないということ…。
破損前には復帰しないということ…。
あの生物?植物?は分裂も増殖もしない…。
朽ちるのを待つだけなのか…。
考えを巡らせながらボーッと奇妙な生物?植物?を眺めていた。
そして気がついた
「あれは…。」
僕の視界に入ったのは半端ない本数の根のような足と半端ない数の手のような頭を持った個体の姿だった。
六又や八又になった個体もいた。
「そうか。そう言うことか。」
個体本体の数が増えないのなら、接点の数を増やせばいい。
送受信できる数を増やせばいい。
そうすれば欠損した部分を補える。
欠損した部分が携わっていた様々な情報を送ることができる。
様々な情報から違う視点が生まれる。
『違う視点が増えれば増えるほど…。増えれば増えるほど…。新しい感覚を…、得られる…。それは…、感情に…。つながる…。』
≪続く≫
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