EP039
ごちゃごちゃうとるさいフライングディスクの世界から逃げるように次の世界に向かう僕とエバ。
「危ないなぁ…!」
一枚のフライングディスクが僕のむき出しの肩に当たる寸前だった。
別にフライングディスクは僕らに攻撃を仕掛けてきているのではない。
無軌道に飛び回っているので、ちょっと気を抜いていると当たってしまうのだ。
特に背の高い僕は格好の標的になってしまう。
ただ、ディスクが当たっても全然痛くない。
痛みをこらえてこう言っているわけじゃないんだ。
実際、何度か当たっている。
でも、フライングディスクが当たっても当たった感覚がしないのだ。
しかしながら、物が当たりそうになると反射的に身体は避けようとする。
痛くないこと、危害がないことが理解できていても、身体は無意識のうちに避けてしまう。
『経験則からなのかなぁ…。』
それと、僕に衝突したフライングディスクがどうなるかと言うと、落下するわけでもなく、壊れるわけでもなく、弾かれたように全く違う方向へ飛んで行ってしまうのだ。
その衝突の際に、映し出されていた番組が変わってしまう現象も起きるのだ。
衝突前まではニュース番組だったフライングディスクが衝突後にはお笑い番組になって飛んで行ってしまった様子も目撃した。
衝突の衝撃によってまるでチャンネルを変えたみたいに内容が変わったのだ。
『全くもってテレビみたいだ…。』
そんなことを考えながら…、
今にもぶつかってきそうなフライングディスクを避けつつエバに追従して次の扉に向かった。
「チリーン。」
エバの金の鈴が鳴った。
フライングディスクを避けることに神経を集中しつつ歩みを進めていた僕。
その僕の目の前の空中に音もなく呼び鈴のようなものが現れた。
それは丸みを帯びた乳白色で1辺5センチほどの正方形だった。
そしてその真ん中には丸い真っ赤なボタン。
「押して。」
僕に今、起きていることを観察する暇も与えてくれない唐突なエバの命令。
ここまでフライングディスクを避けることに気を回していた僕は、なぜかエバのこの物言いに少し腹を立てていた。
ここまでエバと一緒にいて分かっていることではあったけど、なぜか憤っていた。
だから返事もせず、確認することもなく、考えることなく、言われたままに人差し指でボタンを押してしまう。
ビィィィィィィィィィィー。
「うわあ?!」
思いもよらなかった呼び鈴の音の大きさに肩が
驚きから呼吸も荒くなっていた。
「もう一回。」
「…。」
引き続きのエバの命令に何も返さず再度呼び鈴のボタン押す。
ビィィィィィィィィィィー。
飛び回るフライングディスクの雑音を消し去るほどのけたたましい音が辺りに鳴り響く。
その両耳を塞ぎたくなるほどのノイズは僕がボタンを押していた数秒間…、否、数分…、数時間…、…、鳴り響いていた。
この呼び鈴の騒音は我慢できる音質でも音量でもない。
事実、エバは両前足で長い両耳を押さえていた。
『いい気味だ。』
僕が少し溜飲が下がる思いを感じていると、呼び鈴周辺の空間がカーテンがふわりと風に煽られて開くように開いた…。
僕は驚きから呼び鈴のボタンから指を離してしまう…。
「どなたかな?」
「うわあぁぁぁ?!?!?!」
さっきまで不快音が噓のように消え去った世界…。
カーテンが揺れるように静かに開かれた僕の目の前の空間…。
その隙間…。
そこから思いも寄らぬ落ち着きのある男性の声が返ってきた。
それで僕は思わず尻餅をついてしまう。
そんなびっくり仰天している僕とは裏腹にノイズが消えて平常運転に戻ったエバは、空間にできた隙間に向かって語りかけていた。
「アタシよ。エバよ。」
「エバ…。あのエバか…。そうなら、久しぶりだね。」
エバは空間にできた隙間に向かって空間の奥から投げかけられた質問に答を返していた。
エバの回答を聞いて、空間の奥の声は懐かしさを
「入ってもいいかしら。」
「勿論さ。さあ、どうぞ。」
答を聞いたエバは、そそくさと空間にできたカーテンの隙間に入っていった。
僕もそれに従ってゆっくりと揺れ動く隙間に体をねじ込んだ。
『痛ッ。』
空間にできた隙間を通った瞬間、僕は頭の中に今までにない強い痛みを感じた。
≪続く≫
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます