EP022

ピッ。

ピッ。

ピィ-。


ベッドルームの壁に設置されているモニターひとつにアナログ時計のイラスト映像が浮かび上がる。

それを、枕を抱えうつ伏せになった状態のままのベッドから横目で見る。

針はちょうど12時を指していた。


「お昼のニュースです。」


壁に埋め込まれたスピーカーから国営放送の男性アナウンサーの声が流れ出す…。


「アリス、止め…。…。…。」






今ここにアリスはいない…。






私は鈍色にびいろの頭を強引に起こし、鬱々たる体を無理矢理ベッドから引き剥がした。

重たい足をなかば強制的に進め、当たり前のようにアリスのいるパントリーへ向かう。


ただ、そうする私の胸中は、全くもって穏やかではない…。














「…。…。アリ…、ス…。」


私はパントリーの外から遠慮気味に声をかけてみた…。


「…。」


しかし、いつものアリスように即座に返事が返ってこない…。


嫌な予感で、アリスに了解を得ることもなく私は慌ててパントリーに入った…。

中にアリスは居た…。

呼びかけに応じないエアホッケーのスティック型をしたアリス…。

そのアリスは動くことなく、ボディーの一部を一定のリズムで光らせていた…。


「ア…、アリス…。」


アリスの今の状態が理解できていない私には、恐る恐る声をかけることしかできなかった。


「えっ…!!」


次の瞬間、

エアホッケーのスティック型のアリスは、ボディー全体を激しく光らせた。


「アリス!!!」


私は名前を叫ぶことしかできなかった…。






目が眩むほどの光が、アリスのボディー全体を包み込む。


「アリス!アリス!」


私はアリスが爆発してしまうんじゃないかと不安を抱いてしまう…。


「アリス!アリス!」


アリスに近づきたいがどうすればいいのか分からない。

私は名前を連呼するしかできない。





『なんて…、私は無力なんだ…。』






私が忸怩たる思いに苛まれた時、アリスを包み込む光が段々と弱くなっていった…。

そして、アリスを包み込んでいた光はなくなった…。














どれくらい経っただろうか…。

私は茫然自失で仰天していた…。


そして私の目の前で、私は予想だにできない出来事に遭遇することとになった…。


それは目の前でアリスが変形し始めたからだ…。


目の眩む光が消え去るとアリスのボディーの一箇所が急に変形し始めたのだ…。

それは、エアホッケーのスティックの持ち手にあたるの箇所の最上部…。

持ち手のてっぺんからイボのような突起物が飛び出してきたのだ…。


イボはゆっくりと真上に伸び、10センチほどの棒状になった…。


すると、棒状のイボは分裂をし始めた…。

棒のような突起物は、縦に八等分に別れた…。

八等分に別れた細い棒状の突起物は未だ、ゆっくりと真上に伸びていっている…。






ゆっくりと真上に伸びていた細い棒状のイボは、自重で放射状に八方に垂れ下がる…。

アリスの頭のてっぺんから八方に垂れ下がっった細い棒状のイボは、まるでアリスの頭から生えた髪の毛のように見えた…。

そしてそれらは、30センチほど伸びて成長を止めた…。






私は私の目の前の出来事をただただ、見ているしかできなかった…。

何が起こっているのか全くもって理解できなかった…。

そんな私の目の前で、摩訶不思議なショーはまだ続くのであった…。






「なんなんだ???」


次に8本の棒状のイボの先端が二つに分かれていったのだ…。

細胞が分裂するように、先端が徐々に裂けていく…。


「倍になるのか…?」


しかし私の想像とは違い、先端の分裂は2センチほど避けて止まったのだ…。





私は目の前の出来事から目が離せなかった…。

一瞬たりとも見逃さないと、具に見届けようとしていた…。

すると、8本の髪の毛のうちの1本…。

その先端の二つに割れた部分がピクっと動いた…。


振動などで動いたわけではない…。

意思を持って…。

何かを確かめるように、先端が動いたのだ…。

そしてその動きは、段々と明確なり、意図的に動かしていることが理解できた…。






始めは二つに分かれた先端をハサミのように開いたり閉じたりを繰り返していた…。

やがてそれは拳を握るように結んで開いてを繰り返した…。


そしてその行為は、一本一本、次々と同じことを8回繰り返された…。


8本、全ての髪の毛で同じ行為を行うと、今度は始めの1本が、髪の毛のような棒状の全体を動かし始めた…。


最初はゆっくりと髪の毛の上げ下げを繰り返していた…。

が…、

最終的にはタコの足のようにクネクネと動くまでになった…。

これと同じ行為を残りの全ての髪の毛で行った…。


「こ…、これは…、な…、なんだ…。」


頭部から触手のようなモノが生えた、アリス…。

今、何が起こっているのか全く想像もつかない、私…。














「ジロ、来てたのですね。想定時間を超えてしまいました。」

「えっ!!」


急なアリスの呼びかけに私は心臓が飛び出るほどに驚いた。


「ア、アリス…、そ、それは…?」


私は失礼にも、アリスの頭から生えているものを指差した。


「手を増設しました。」

「手…?」

「はい。手です。」


と…、

応えると、アリスは8本の手をクネクネと器用に動かした…。






≪続く≫

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