EP007
「はっ!!」
私は何かにうなされたようにベッドから飛び起きた。
「寝坊…。遅刻だ…。連絡…。連絡…。」
「電話、ドコへ?」
「えっ!?」
私は私以外の声に反射的に驚愕し、一瞬にして目が覚めた。
ベッドサイドに置いている眼鏡をかけ壁に映し出されている今日のタスクを確認する。
寸刻で、意識が冷静を取り戻す。
「今日から…、休み…。」
心持ちは落ち着いた…。
ただ、遅刻という悪夢で体は冷や汗まみれだった。
「体表面、温度低下。注意。」
「そうだね。えっ!?」
2度目の衝撃が、昨夜のことを思い出させてくれた。
「私は…、AIデバイス…、拾っ…。」
言葉にしようとしたことが事実と違うことに気がついた…。
昨日、家に着いてからの私の行動を脳内でトレースしていた…。
その痕跡から導き出されたバグは…、
『あの段ボール箱は、本当にゴミだったのか…?』
『一時的にあそこに置いていただけじゃないのか…?』
『ソフトボールには、所有者がいるんじゃないか…?』
といった、あの時点でも推測できる程度の内容だった。
『なぜ、私はあのような行動をとったのか…?』
いつも通り私なら行わなかっただろう行動…。
いつものように帰宅してからのルーティンがあるから…。
いつものようにしなかったから…、こんなことになってしまった。
今更ながら問題点を抽出できたところでデバッグがかなうわけではない。
『また、兄妹に迷惑をかけるんじゃあ…。』
私は大それたことをしてしまったかもしれないと考え出すと、どんどん悪い考えの深みにはまり、その恐怖から動けなくなってしまっていた。
「体表面温度低下。体表面温度低下。」
オフホワイト色のソフトボールが、緊急アラートのように同じ言葉を繰り返していた…。
「体表面温度低下。体表面温度低下。」
その言葉はしつこいほどに繰り返された。
「至急、衣服交換…。至急、衣服交換…。」
その命令口調に私はなぜか刃向かった。
ビッ ビッ ビッ ビッ ビィー。
とても耳障りな音…。
何を意味しているのだろう…。
「緊急事態。緊急事態。高橋恵一郎ヘ電話。」
はっ!!
「えっ! えっ! ちょ、ちょ、ちょっと待て。ストップ。ストップ。」
「…。…。…。…。緊急連絡、中止。」
ソフトボールが思いもよらぬ名前を口に出し、そこに電話すると言った。
私は兄の名前で正気に戻り、急ぎそれを阻止した。
『どう言うこと…?』
ソフトボールは私の体調を解析したのか…?
そこまでの高度な医療センサー類が搭載されているのか…?
私の体調を判断し、緊急事態と判断して、緊急連絡先に登録している兄に連絡しようとしたのか…?
では…、
なぜ、兄の電話番号を…。
なぜ、兄が緊急連絡先になっていることを…?
そうか…、
私のスマホと連携リンクした際に、スマホ内の情報を取得したのか…。
凄いな…。
…。
…。
…。
えっ…。
何が凄いんだ…。
私は今、何を思い浮かべたんだ…。
昨日、このソフトボールが作動し出してから、私は考えたこともないことを無意識の内に考えている…。
私には、私自身が無意識に考えたことが、全くもって理解できていない…。
段ボール箱の文字を読んだ時も、なぜ読めたのか分からない…。
単語の意味が分かった時も、なぜ意味を知っているのか分からない…。
ただ、この不思議な現象は、今の私になる前の私が持っていた知識なのかも知れない…。
≪続く≫
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