「紅い瞳の少女」

ruki

プロローグ「紅い瞳に宿る過去」

この世界でエルフと異種族との混血は忌み嫌われる存在だった。

その少女、雪菜もまた例外ではない。

彼女の紅い瞳は、純粋な青い瞳を持つエルフたちにとって、呪われた存在の象徴とされた。

幼少期、村の子供たちからは石を投げられ、大人たちからは無視され続けた。

やがて実母にすら手放され、過酷な環境に投げ込まれる。


雪菜が送った日々は、ただ命を繋ぐための労働と奉仕に過ぎなかった。

与えられるのは食事の欠片だけ、そして命令。

どれほど耐えても、どれほど尽くしても、誰一人として彼女を「人」として扱う者はいなかった。


希望を見失った彼女の瞳からは、いつしか感情の光が消えていた。

それでもただ「死にたくない」と思い、生き続けた。

長い年月の中で雪菜は学ぶ。

期待をしないこと、誰も信じないことが唯一の生き残る術だと。


けれど、心の奥底では消えない想いがあった。

「こんな世界でも、どこかにきっと違う未来があるはずだ」


誰にも聞かれることのない、小さな願いだった。

その願いを胸に秘め、幾度も裏切られ、酷い仕打ちを受けてきた。

けれど、全てを諦めきれずに生き続けたのは、たった一つの本能的な願いのためだった……。


そしてある日、雪菜はその願いが叶うかもしれない「瞬間」に出会う。

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