婚約破棄されたので太古の契約通り国を滅ぼします
鞘呑たたみ
プロローグ
世界の終末と言うものは思いのほか美しいものなのだろう。太古の竜は地を砕く。燃え盛る火は滑らかな鱗にアクセサリーとして纏われ、常冬の国に起こりえぬ熱を顕現させていた。麗しきその姿は国を喰らって咲き誇る焔の薔薇と言ったところか。
あかあかと燃える終末の化身は近付いただけでぐらぐらと人を煮溶かしてしまう。骨が焦げただけで済む幸運なものは家族の元に還れるのだろうか、それとももうここで全てが終わるのだろうか。考えても思考は纏まらず、痛みと熱だけがこの身を侵す。
竜がその手を振り下ろせば鋭い爪があまりにも簡単に建物を潰した。飛び散った瓦礫に視界の端にいた兵士が潰されて、もう助かりそうも無い。弓も大砲も効かない、近くに寄ることも出来ない存在をどのように倒すべきかなんて分からない。最悪なことにもうこの竜はこの国に存在する魔剣士の大半を喰い尽くしているし、彼らに蘇生や回復を施そうにもこの国の龍脈はもはやあの竜が現れてからというものの機能を失いかけている。
この世界は終わるのだろう。呆気なく、どうしようもなく馬鹿な男が選択肢を間違えたことに寄って。
今が訪れるべき終末の夜。定められた終わりというものは、どうしようもなく当然に人類を蹂躙しようとしているのだった。
──────この出来事は後世に『逆鱗の夜』として伝えられている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます