Sランクパーティーのリーダーである俺が追放されました〜パーティーメンバーを操っている奴をざまぁしたいと思ったが、手持ちはゼロ。仕方ないので再び最強になってからざまぁします〜

院手蔵瑠

第1話.追放

 机と椅子が整然と並ぶ姿に見惚れていたとき、俺の両腕を誰かが掴んだ。

 

 左側を見ると、少々ぽっちゃりとしている、うちのパーティーの盾役であるスルメがいた。

 右側を見ると、筋肉ムキムキで黒髪サラサライケメン男で、うちのパーティーのヒーロー役であるカソマルがいた。

 

 二人が俺の腕を掴んでいたらしい。


「急にどうしたんだ」 


 俺は二人に理由を聞くが、目線を下にしてだんまりとしている。


 なぜ下を見ている?

 なぜだんまりとしている?

 おふざけではないのか? 


 そう考えていると、前の方から、うちのパーティーのヒロイン役兼俺のヒロイン役であるミクルちゃんが、長い杖を持ってやって来た。


 ロングヘアーの爽やかな黒髪。

 太陽の光を浴びたことがないの? と思ってしまうほどの白々しい肌。

 たまに転んだ際に見れる、輝く財宝ピンクパンティー

 全てが可愛くて、全てが最高だ。

 ぜひ、エッチを前提に結婚をさせてくれ。

 ……俺の欲望が溢れ出ている。


 なぜ魔法を使う際に使用する杖を持っているのかは全くわからない。

 でも、何かに使用する気なのはわかる。


「今から何をするんだ?」


 ミクルちゃんに聞くも、だんまり。

 なぜ、三人ともだんまりするんだ?

 俺が何かしたとでも?

 

 ……もしや、昨日スルメのパンツを盗んだことがバレたのか?

 一応注釈しておくが、スルメのパンツを盗もうとしたわけではないぞ。

 

 ミクルちゃんの部屋でミクルちゃんのパンツを盗んだつもりだったが、それがスルメのパンツだった、というだけだからな。

 決して、スルメのパンツをクンカクンカするつもりではなかったぞ。

 今考えると、なぜミクルちゃんの部屋にスルメのパンツがあったか不思議に思う。


 ミクルちゃんはゆっくり一歩ずつ俺に近づく。

 そして俺が抱ける範囲まで近づいてきた。

 ミクルちゃんは顔が赤くなっていた。

 ……もしかして、これから抱き合ってキスをするのか?


 近距離で顔が赤くなる。すなわち、恥ずかしいことがある。

 その恥ずかしいことといえば……抱き合ってキスだろう。

 

 杖は媚薬魔法を使用するためと考えたら、キスの可能性が高まる。

 この世界に媚薬魔法があるかは知らないが。


 最近、ミクルちゃんとは関係が良かった。

 手を繋ぎ、抱擁をして、最終的にはエッチ……全て妄想だな。

 でも、話す機会は多かったため、キスの可能性は高い。


 二人が俺の手を掴んでいるのも、恥ずかしがって逃走するのを防ぐため、という理由かもしれない。

 お二人さん、ナイスです。

 さすが友達、いや親友、いやそれ以上の関係だ。

 それ以上の関係と言い出したら、変な意味になるな。


 俺は唇を前に突き出し準備をした。

 向こうは涙を流しながら震えていた。

 キスの雰囲気ではないな。


 これからキスなんだろう?

 童貞である俺の妄想話ではないんだろう?


 涙を流しているのは、初体験でテンパっているからだろう。

 多分、いや絶対にだ。


 とりあえず、ミクルちゃんの気持ちが落ち着いて抱いてくるまで待って……って、それはいけないぞ。

 俺はエスコートする立場だ。


 俺は片足を一歩踏み出した。

 すると、ミクルちゃんが持っている長い杖の先から、緑色の何かが溢れ出し始めた。


「緑ビーム」


 ミクルちゃんは涙声ながらも大声で叫んだ後、俺の方に杖を向けた。

 杖から緑色のビームらしきものが発射された。


 緑ビームとはそういうことか。

 ネーミングセンスが皆無だな。

 

 ここは、『草原わんぱくビーム』や『草しか生えんビーム』という、超絶カッケェェェネームにするべきだ。

 ……俺のネーミングセンスも皆無だな。


 俺はそんなビームを浴びた瞬間、体内が震えるような感覚がした。

 こんな魔法は初めて。

 そして、こんな感覚も初めてだ。

  

「ご、ごめんなさい……」


 ミクルちゃんは苦しそうな表情をして、緑ビームの発射をやめた。


 これは何ですか?

 ミクルちゃんは何をしたのですか?

 俺とキスを交わすのではなかったのですか?


 理解に苦しんでいたとき、衣服を脱がされる感覚がした。

 下の方を見ると、腕を掴んでいた二人が、俺のズボンを脱がす姿を確認できた。


 え、何をしてるの?

 もしや、キスより前にエッチをさせるつもりなの?

 キスが本祭なら、エッチは前夜祭。

 前夜祭の方が豪華じゃないか。


 さらに理解に苦しんだ。


「二人とも何をしてるの?」


 二人は俺の問いを無視し、上半身の服も脱がし始めた。

 ミクルちゃんは俺の姿を黙視している。

 

 ……なんだか興奮しちゃうな。

 好きな人に上裸を見られると思うと……考えている場合ではない。


 待てよ。色々とおかしいぞ。

 この場はギルドだ。つまり、公衆の場である。

 そんなところでズボンと上半身の衣服を脱がされている。

 

 ある意味拷問だ。

 でも、好きな人に見られているから拷問とは真逆だな。

 つまり最高だ。って、考えるんじゃないよ!

 俺がドMに思われるじゃないか。


 俺はドMでもドSでもなく中道だ。

 つまり、どちらでもいける。ではなくて、どちらにも興味ない。


 二人は上半身の衣服も脱がせた。

 そして、再び俺の腕を掴み、ギルドの入場ドアのところへ連れて行った。


「「衣服にも力がついてるかもしれないから脱がせた。別に上裸を見たかったわけではない」」


 二人は苦しそうな表現をしながら、そんな言葉を残して、俺を力強く押した。

 俺はその力に耐えられず、後ろへ倒れた。

 そして、入場ドアが閉ざされた。


 ……なにこれ。


 俺は必死にドアを開けようとした。が、鍵が閉まっていた。


「開けてくれ! 開けてくれ!」


 必死に大声で叫んだり、ドアを叩いたり蹴ったり、鍵穴を開けようとしたりしたが、応答はなかった。


 俺はなぜギルドから出された……って、この展開、アニメで見たことがあるぞ。

 メンバーから、

「お前、パーティーから出ていけ」

 と言われ、無理矢理パーティーから除外される。


 これは"追放"だ。

 

 ……なぜ、俺は追放されたんだ?

 そして、追放前の最後のメンバーの言葉が、

「上裸見たさに脱がしたわけではない」

 になるんだ?

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