閉ざされた家から、心の羽ばたきへ
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 家庭という名の檻
家の中に響く怒鳴り声は、私にとって日常の音だった。母と父が顔を真っ赤にして言い争う。何が原因なのかなんて、もうどうでもいい。ただ、私はいつも耳を塞ぎ、早く終わることを祈るしかなかった。小さい頃はその声に怯えて泣いていたけれど、今では何も感じないふりをするしかない。心が麻痺しているのかもしれない。
そんな家庭環境で、私の自由は徹底的に制限されていた。親は「子どものため」と言いながら、私の行動の全てを管理し、SNSや友人関係に対しても否定的だった。
「SNSなんて無駄な時間よ。悪いことしか起きないから」
「そんなものを使う暇があるなら、もっと勉強しなさい」
そんな言葉を繰り返されてきた私は、SNSという存在にネガティブな印象しか持てなかった。周りの友人が楽しそうに使っているのを見ても、どこかで「自分には関係ない」と思い込むようにしていた。
一人暮らしをしたいと何度か打ち明けたこともある。しかし、返ってくるのは母の涙ながらの反対や、父の怒鳴り声だけだった。
「私たちはお前のためにここまで頑張っているのに!」
「自分勝手なことばかり言うな!」
持病を抱える両親を見ていると、確かに一人暮らしは冷たい選択なのかもしれないと思ってしまう。でも、この家で生きることは、まるで酸素のない場所で呼吸を続けるようなものだった。
逃げ場が欲しかった。耳を塞ぐだけでは足りなかった。心の中に溜まっていく黒い塊をどうにかしなければ、私は壊れてしまう。
そんな中で、私は初めて「書くこと」に手を伸ばした。ノートに心の中の感情を書き殴り、少しずつ整理することで、自分を取り戻す瞬間があった。それでも家の中では、執筆していることを隠さなければならない。父に見られたら「そんなことをして何の役に立つんだ」と否定されるのは目に見えていたからだ。
外に出ることも、自由に生きることも許されない。けれど、私は少しずつ心の中に小さな窓を作り始めた。その窓の先にはまだ何もない。ただ、暗闇が続くだけ。でも、その窓を見つけたことが、私にとって最初の希望だった。
次回へ続く。
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