第2話:死神どえ〜っす。

「あの、こんな夜中になにかの集金?」


「集金と言えばそのようなもんかもぉ」


「もんかもぉ?」


「一応は井戸川いとかわっちの魂を頂きに来る予定だったんだけど・・・」


「たましい?・・・俺の?・・・たましい?・・・あはは、待て、待て、それまた

面白い冗談だよね」

「金ならいざ知らず魂を取りに来る女子高生なんて話、聞いたことないけど・・・」


「はい、普通は本人も気づかないうちに黙って頂いてっちゃうんだけど・・・今回は私の個人的理由でお伺いしたの」


「個人的理由?」

「って言うか、君、俺とどこかで会ってる?」


「直接は会ったことないですけど、私は井戸川っちのことよく知ってるよ」


「俺、君になにかしたのかな・・・それなら先に謝っとくけど・・・」

「その・・・たとえば・・・なにか・・・」


「なにもされてません・・・なにかってエッチなこと想像してる?」

「会ったことなにのにエッチなんかできなる訳ないでしょ」


「そんなこと考えてないし・・・女の子の手も握ったことないんだからな」

「ところでさ・・・君だれ?」


「私、死神どえ〜っす・・・死神の「賽河原 吉子さいがわら きちこ」と申します」

「よろぴよ、井戸川っち( ´ ▽ ` )ノ」


「・・・・・今、なんて言った?」


賽河原 吉子さいがわら きちこ

「吉子の吉はおみくじの大吉とか中吉とかの吉だよ」

「あ〜吉子きちこなんて縁起のいい名前だって思ってる?井戸川っち」

「もしかして凶子きょうこなんて名前だったら当たり前すぎて、まじつまんないでしょ?」


賽河原 吉子さいがわら きちこちゃんね・・・ってか、知りたいのはその前だよ、その前なんてった?」


「死神どえ〜っすって言ったのね、私」


「うそ〜・・・死神って?・・・君みたいな可愛い子が?」

「って、ほら死神ってだいたい男でしょうが?」

「タロットカードなんかに描かれてる死神ってなんか顔がドクロで黒いフード

なんか被ってて、でもって手に大きな釜なんか持ってる、あれが死神でしょうが?」


「そんなことないよ」

「死神ってそんなイメージだけど、フランス、スペイン、イタリアでは女性の死神のほうが多いんだよ」

「広〜い世界には私みたいな可愛い死神もいるんだから」


(自分で可愛いって言ってるし・・・まあ当たってるけどな)


「死神なんて西洋だけのものかと思ってたけど、日本にもいるんだ死神」


「いるんだよ・・・だけど普段は人間の前には姿をみせないからね」

「人知れず魂を持ってちゃうから」

「まあいても死神だよって言わないと普通の女子にしか見えないし」


「はあ・・・」

「あ、あとさ、死神なのになんでセーラー服なんか着てんの?」


「私、女子高生だし・・・魂の国で御彼岸おひがん上等学園に通ってる現役バリバリのJK・・・で、魂の回収は、あくまでバイト」


「死神で現役女子高生?・・・まじで?」

「しかもバイトって?なに?俺の魂ってそんな適当に君に持っていかれるわけ?」

「持って行っていいか俺に聞きに来たわけ?」


「聞きに来たって言うか、そのはずだったんだけどぉ・・・予定が狂っちゃって」


「予定?・・・なんの予定?」


「閻魔様の指示で井戸川っちに寿命が来るから、吉子が処理しなさいって言われて」


「実は井戸川っちは、今日お買い物に出かけてダンプに追突されて道路に投げ出されたところを後続車が何台も来て何度も何度も踏んづけられて内臓破裂でグチャグチャになって雨の日のつぶれたカエルみたいになって死んじゃうの・・・誰も死体を片付けないから、さらに車に踏んづけられてスルメイカみたいに平べった〜くなっちゃうんだよ、すごいでしょ?」


「すごかないわ、そんなの」

「そんなのちっともすごかないっ!!・・・だけどそれまじな話か?」

「ううっ・・・想像したらゲロ吐きそう」

「ってか賽河原さいがわらちゃん俺を脅そうと思ってわざとグロく言ってない?」


「ブッブー・・・それは井戸川っちの運命だし宿命だし寿命だよ」


「それで俺がぐちゃぐちゃになって死んだ後、賽河原さいがわらちゃんが魂を持って帰ろう

ってやって来たんだ」


「違うよ、私は井戸川っちの命を救うためにやって来たの」


「ん?救う俺の命を?・・・それはまたなんで?」


「好きなっちゃったから・・・井戸川っちのこと・・・」


つづく。



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死神ちゃんは冥探偵。(極楽荘殺人事件) 猫野 尻尾 @amanotenshi

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