第20.5話 任務遂行中

「おい、もう来るってよ」

「待てよ。こんなのミスったら最悪なんだからよ」

「馬鹿。バレるぞ」

 学園の4階にある女子トイレ内。

 普通は入らないであろう男子生徒の声が聞こえて来ている。

「――来るぞ。上手くやれよ」

 女子トイレ内から聞こえる声に対して、廊下の方からまた別の男子生徒の声が聞こえてくる。

「へいへい」

「まかせろ」

 廊下から声をかけた男子生徒の手にあるタブレット端末内のトーク画面には『今向かった』というそっけない言葉が表示されてる。

 廊下に居た男子生徒は女子トイレ内に声をかけると。そのまま隣の男子トイレ内に入りドアを閉め。

 そのまま個室へと入った。

 それから男子生徒は壁一枚向こうで音がするまで耳を澄まししばらく待機していると――。 

『――誰かいますか?』

「――」

 入り口の方から女子生徒の声が聞こえ男子生徒はまさか声をかけてくるとは思っておらず。一瞬肝が冷えたが物音を立てることなくやり過ごした。

 それからさらに壁の方に耳を澄ませていると――。

『――来たん――。軽く――ておいた――――』

 先ほどと同じ女子生徒の声が壁の向こうから断片的だが聞こえてくる。

『――――どうも。だな――かなく――』

『とりあえず――便器と――――掃けって――』

『――うん?使用停止?あー、節水ってことか』

『もしかしてやることが少ないから掃除が1人ってことか?または――普段は飛鳥さんじゃないけど、記憶喪失ならやら――とかって?まあでもこれならす――』

(まるで人が変わったみたいに良く話すな)

 男子生徒がそんなことを思った瞬間。

 決行されたようだ。

 バッシャ――バッシャン。

 壁の向こうで大きめの音がする。

『ぬわっ!?」

 そして今日一番の女子生徒の声が聞こえると同時だった。

 カランカラン――ガシャン。カラン。ガタン。ガタン――バタン。バタン。

壁の向こうから賑やかな音と。

 予定通り2人が個室から出たであろう音が聞こえて来たので、個室の中に居た男子生徒も廊下へと向かう。

 男子トイレのドアを開けるとちょうど女子トイレの方から2人の男子生徒が飛び出してくる。

「やべー。ちょっと濡れた」

 無事に任務を終えた男子生徒の方はテンション高め。

 その表情はむしろスッキリしたような表情にも見える。

「おい、臭いから近寄るなよ」

「いやいや、お前も十分臭いぞ?」

「そりゃ便所に泥水どろみずと共にいたんだからな」

 2人の男子生徒はふざけつつ男子トイレで待っていた男子生徒と合流する。

「終わったか?」

 男子トイレで待っていた男子生徒は特に何かしていたわけではないが。こちらも満足げな表情をしている。

「完璧」

「あいつ全然気が付かないから笑い堪えるの大変だったわ」

消えるだろ」

「だなー。」

「にしてもあれだな。まるで別人だな。めっちゃ独り言ぶつぶつ気持ち悪いくらい言ってたし」

「だな。あの女。自分の事なのにまるで他人の身体使っているみたいにつぶやいてたし」

「まあ頭狂ったんだからしゃーねえだろ?」

「それもそうだな。って元からやべーやつだろ?」

「確かに。嫌われてたからなー」

「でもよ。まだまだきもかったけど。あいつちょっとマシになったんじゃね?」

「なんだ?お前もしかして心変わりか?」

 女子トイレの方から出てきた男子生徒の1人がつぶやくともう1人がその男子生徒の肩を叩きつつ。茶化すように聞く。

「ないない。でもまああの女から事前に情報なかったら驚いただろうな」

「まあさすがにな」

「でもあの女。ちゃんとやることやってるみたいだな。真面目そうないい子ちゃんぶっててもあの女もあいつに居なくなってほしいのはあるんだろ?ちゃんとさっきもあいつに伝言ちゃんと伝えたみたいだし」

「でも西宮にしのみやって付き合い悪いし大丈夫なのか?先生チクりそうじゃん」

「それはないらしいぞ。あいつが言ってた」

「さすがボス。しっかり首輪付けてるな。俺も付けられたい」

「キモイのがもう1人」

「冗談だって」

「おい、とりあえずとっとと戻ろうぜ」

「ああ」

「だな。っか臭ー」

「お前だけな?」

「お前もだよ。臭いわ」

「いやいや、2人ともだよ」


 男子生徒3人はなるべく声のボリュームを抑えつつ。あと笑いをこらえそのまま4階を足早に後にするのだった。

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