黄泉返り~俺らは月詠隊~

夢月みつき

前編「黄泉がえり」

 ❖登場人物紹介

 ・竜胆来也りんどうらいや

 竜胆来也(AIイラスト)

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093091921666300


 ・叶蘭かのうらん

 叶蘭(AIイラスト)

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093091921835448


 ・佐渡衛さどまもる

 佐渡衛(AIイラスト)

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093091922067876


 ♠♤∴─────────────────────────∴♠♤




黄泉返りよみがえり”それは、死者があの世から現世へと蘇ることである。


 2025年の二月にそれは、東京の渋谷で起こった。あの世から、突然亡くなった者がこの世に次々と蘇り、生きている者を驚かせ、または恐怖に陥れた。人々は、家に閉じこもりそして、自衛隊が対応するのではなく黄泉返りした死者をあの世へ返す霊能力を持つ役割を担った各隊と隊の一つ俺達、月詠隊ツクヨミたいも国によって結成された、と言っても、死者と戦う訳ではない普段は対話をして帰ってもらうんだ。



 赤髪短髪で茶の目で赤の隊服を着る高校生、竜胆来也りんどうらいや、十六歳。それが俺の名前。俺達、ツク詠隊ヨミたいと死者の対話はすぐ終わることもあれば、数日掛かることもある。

 

 しかし、危険な死者もいる為に新たな技も開発されている。より、多くの死者に早くあの世に返ってもらう為にだ。


 このエリアの月詠隊はあろうことか、俺と佐渡さどまもる隊長と幼なじみの黒髪ロングヘア―の美少女、かのうらんのたったの三人で編制されている。

 

 後の隊長と隊員は、他のエリアに配置されている。


 隊員の数が少数部隊なその訳は、圧倒的に日本の能力者が少ないのと、資金繰りが厳しいからだ。日本のお偉いさんは俺達、子供だけに任せて何を考えているのだろうか?


 しかし、蘭は優秀な霊能力を持っている。そして、俺は霊力が極端に低く一番無能だ。自分で言ってて空しくなって来る。

 

 蘭が一人の老婆の死者と話しをしている。「そうですか、身寄りもいらっしゃらないと……それはお辛かったでしょう。でも、もう苦しむことはないのですよ」


 蘭は、穏やかに微笑み掛けると両手をお婆さんの前にかざして白銀の光が二人を覆った。

 その瞬間、お婆さんの体が宙に浮いて空の彼方にすぅっと吸い込まれて行った。


「おひとり、帰郷完了です」

 

 蘭はそう伝えながら、俺と隊長のいる方を振り返った。

 黒髪、黒のレザー隊服姿でダンディな40代の佐渡隊長は、蘭ににこりと微笑み掛ける。


「ご苦労だったな、叶君。君はもう、一人で20人は返している。後は、私と竜胆で進めておくから少し、休むといい」


「ありがとうございます。隊長」

 蘭は、佐渡隊長におじぎをすると、俺と目を合わせた。


「おつかれ、蘭」

「ありがとう。来也」

 

 その日は、俺と隊長で死者を黄泉に返し続けた。






 ❖






 俺と佐渡隊長は、テントの中で目を覚ました。その日は、曇り空。

 人々は、死者を恐れて家に閉じこもっている。さながら、ゴーストタウンだ。

 

 隙間風が入って来て、風の冷たさが身に沁みる。俺があくびをして眠気を覚ます為に顔を洗いに行こうとテントから出ようとすると、突如、絹を裂くような少女の声が聴こえて来た。


「蘭の声だ!」


 その叫び声に佐渡隊長も飛び起き、俺は隊長と共に声が聴こえたスクランブル交差点の方へと走って行った。


 ここはスクランブル交差点、無数のうつろな目をした死者達がうごめく中、叶蘭は今、触手のような死者に捕まりピンチにおちいっていた。


「……くっ、放して!」

 

 蘭は、アスファルトの地面を突き破ってウネウネと不気味にうごめく、まるでたこのような紫色の触手に全身を絡めとられていて、身動きが取れない。

 彼女が無理に動こうとする度に、触手が蘭の可憐な身に食い込んできて体に痛みが走る。


「――うっ、これをなんとかしないと」

 

 蘭は、触手を何とか体から放そうとするが、太く弾力のある巨大な触手は、非力な少女の力ではどうにもならない。

 霊能力を使おうとするが、その度に絞めつけて来て痛みで上手く発動することが出来ない。

 

 そのうち、触手が蘭の服の隙間から入り込み、下着の上から彼女の小ぶりの胸や秘めた大切な部分をなぶり始める。


「キャ、なにを、なにしてるの!? やめて、いやぁっ!」

 青ざめて涙を流す蘭、その時、竜胆と隊長が駆け付けて来た。


「蘭ッッ!!」

「叶君!」


「来也! 隊長! たすけてッ!!」

「この野郎ッ! あの触手、蘭になんてことしやがるんだ! うらやま、じゃなかった。ぜってえ、許さねえぞ!」


「あれも、死者なのか? うん……いずれにしろ、このままでは叶君が危険だ! 叶君の代わりに今回は、私が君の霊力のサポートをしつつ、触手のみに攻撃を当てて行くことになる。行くぞ、竜胆! 月詠隊フォーメーションだ」


「はいっ、隊長!」

 俺と隊長は触手の前後に陣取った。隊長は淡いあおいろの霊力を体にみなぎらせると、街や人々に被害が出ないよう結界を張るみたいだ。

 佐渡隊長は刀印とういんを左手の片手で結び、触手めがけて縦に振り下ろした。

 

 ブォンッ。


「フィールド防護結界! りょうッ」

 碧の光の結界が広範囲にわたって左右上下共に囲むように一瞬にして張られた。


 ――攻撃系の能力を放てば、蘭に当たるかもしれない。しかし、俺は、敵に当てずに敵そのものにダメージを与えられるような高度な技は使えない。どうする?――

 

 その時、隊長が俺の表情で読み取ったのか、こう伝えて来た。

「竜胆、私がいるだろう? 私が呪縛系の能力で奴を攻撃する。君は、後方から光弾の能力であの触手を撃て」


「でも、隊長。そんなことしたら、蘭が」

「君が光弾を放ったら、私が軌道修正する! もう少し私を信じろ」

「――はいっ、分かりました!」





 ♠♤∴─────────────────────────∴♠♤

 後編に続きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る