第6話 見習い卒業
シーフギルドで見習いとして生活すること三日。
無事収集品を集めきることが出来た。
「オッケー。合格ね。たった今からあんたは、正式に私たちシーフギルドの一員となった。でね、シーフとして活動するために各自仕事用の名前を用意するの。何か考えてある?」
はい? いきなりそんな説明をされて、考えられているわけがない。ゲームでは、そんなやり取りなかったし。
どうしよう。
ウーム。と悩んでいると、受付の女性が声をかけてきた。
「悩んでるようだからアタシが決めてあげる。あんたは『オッケー』で登録しておくわね。覚えやすくていいでしょ?」
ちょっ! ちょっと待ってほしい。
なんかカッコ悪い。というか、気安い感じがしてノーサンキューなんだけど……。
「はい。登録完了。これからよろしくね、オッケー。ちなみにアタシは『サリー』よ。一応、ここではあんたの担当になるから忘れないでね」
何か言おうとしたけれど、その前に登録されてしまったらしい……。
へ、変更してもらおうと顔を見たが、にこにこしてはいるが「何か問題が?」という雰囲気を読み取ることができ、言い出しにくい。
諦めるしかないか。あくまでコードネームだと割り切ろう。
そういえば、なぜサリーさんがオッケーを知っていたのか聞いてみると、食堂のウェイトレスさんから聞いたらしい。くそう、あのババア……。
でも悪口とかじゃなくて豆知識感覚で話したんだろうし、しょうがないか。俺でも世間話として、やっちゃう可能性あるし。問題があるとすれば、それをここで採用しちゃうサリーさんの方だよな。
このまま何か依頼を受けていくか聞かれたけど「今日は疲れたので、やめておくっす」と言って、受付を後にした。
ここで生活するうちに、ずいぶん下っ端キャラが板についてきた気がする。実際シーフギルドでは新入りかつ下っ端なので、シーフの間はこのキャラでいくことにする。案外楽だしね。この下っ端キャラ。
とにかく、今後俺の担当はサリーさんらしいので、忘れないようにしよう。マハリクマハリタっと。
ややテンションが下がったので、ふて寝しようかと思ったが食事はとっておくことにした。
食堂に行き、今日もお任せで料理を注文する。
僅かながらの恨みを込めて、さり気なくウェイトレスのババアを白い目で見ておいた。
しばらくして料理が運ばれてくると、机に並ぶ数がいつもより多い。
どうしたことかとウェイトレスさんの顔を見る。
「あんた。アレに合格したんだろ? お祝いに足長鳥の串焼きをつけておいたよ。また明日からもがんばんな」
人生において家族以外にほとんどお祝いをされたことがなかった俺は、突然のことに驚き「どもっす」としか返すことができなかった。
誕生日に友達から言葉をかけられるって経験はそれなりにあったけれど、あれはお互いにやるし、気安い挨拶みたいなものだ。こうやって祝ってもらうってのは、やはりちょっとばかり特別な感じがする。
さすがにウェイトレスのおばさまに、トゥンク! とはいかないが、先ほどまであったオッケーへの恨みは無くなっていた。
感動が消えるまでだけど……。
ウェイトレスのおばさまって、よく見ると顔が整っているし若い頃モテたんだろうなとか思いつつ、目の前の料理へ視線を戻す。
せっかくのご厚意。冷める前にいただこうと、まずは足長鳥の刺さった串を持ち豪快に齧り付く。
筋が多いが、香辛料が効いていてスパイシーで美味い。
途中スープに入れたり、パンに挟んだりしながらいろいろと味変をして楽しんだ。
食べ終わり、いつもより深めに頭を下げて「あざっす。ごちそうさまでした!」と言って帰ろうとしたら、呼び止められた。
足長鳥の串焼きはお祝いでサービスだけど、他のは奢りじゃなかったらしい。デスヨネー。
翌日。起きて身体をほぐした後、ステータスプレートでスキルの確認。
案の定、見習いを卒業したことで毒関係のスキルを覚えることができるようになっていた。
受付に向かい、サリーさんから毒の知識を授けてくれる人の場所を教えてもらう。この都市の中にいるみたいだけれど、ここからは離れた場所みたいだ。
ついでに今受けられる依頼を確認させてもらったが、忍び足を使った尾行や調査だったので、まだ熟練度が足りないと判断して受けないことにした。
サリーさんも正しい判断だという評価のようで、頷いてくれていた。
食堂で朝食を済ませた後、教えてもらった毒の先生のいる場所へと移動する。
この都市に来て数日経ったとはいえ、まだまだ見慣れぬものも多いためキョロキョロしながら歩く。どこから採って来たのか知らないが、バナナなんかも売っていた。
サリーさんの説明通りに向かうと、先日訪れた武器屋の近くだった。この辺り、生産者の集まる地域なのかもしれない。
目的の建物に辿り着いた。
なんとなく家の周りを一周してみたが、至って普通の乾いたレンガで出来たお家。
扉の前に戻り、ノックした後「こんちゃーっす」と声をかけた。
すると足音が近づいてきてしばらくした後、扉が開かれた。こっち側に!
危うく扉にぶつかるところだったが、危機察知のスキルに加え、シーフとして多少レベルも上がり素早さと回避が成長していたので、なんと避けることが出来た。
「その身のこなし、ギルドの人間で間違いないようだな。入りな」
扉から顔を出したやせ細った不健康そうな男性にそう言われ、素直にしたがい家の中に入る。
室内はもっと独特の薬品のような臭いが充満しているのかと思ったが、多少独特の臭いがする程度でそれほどでもない。
案内され奥に進むと、地下へと続く階段があり下りていく。砂地の都市なので、地下ってなんとなく不思議な感じ。きっちり対策して建てれば問題ないんだね。
調合部屋に辿り着くと、さすがに臭いが強い。ちょっとだけ不快。
「新人だな。ギルドから連絡は受けているが、名前を名乗ってくれ。決まりなんでな」
そう言われたので、普通に答える。
「新人のオッケーっす。砂漠蛇の毒について教わりに来ました」
「新人のオッケーか。おっけー聞いていた通りだ」
プププっと笑いながら、毒の先生であるこいつは俺に椅子に座るよう勧めてきた。
おぃ! ここでも名前いじりかよ。こいつもいつかぶん殴るリストに入れておこう。そうしよう。
ついでに言うと、俺には何が面白いのか理解できない。ただの笑い上戸なんだろうか。
とにかく、現状では相手の方が格上であり、教わる立場でもあるので我慢して黙って椅子に座り、毒についての説明を受ける。
さすがに仕事に関してはまじめで、しっかりとわかりやすく基礎知識を俺の頭に放り込んでくれた。
さて、では毒と毒消しの作り方について実践というところで、材料の調達を言い渡された。集めてくるのは、またしても砂漠蛇の素材。
先日ギルドに提出した分はどうなったのかと思いつつも、まだ昼前なので適当に食事をしてこのあと狩りに行くことにした。
実践してスキルを覚えるのは、明日になりそうだね。
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