第5話 砂漠蛇
翌朝、寒さで早めに目が覚めたので仕方なく活動を開始したが、シーフギルド関係者は皆すでに動き始めていた。一瞬、自分が寝坊したのかと思ったが「早いな」と言われたので、感覚は間違っていなかったようだ。
知らない人も何人かいるが、一先ず挨拶はしておこうと思い「おざーっす」といった感じでぺこぺこしておいた。だいたいの人は、片手をあげて応えてくれる。
昨晩のように食事をいただいたあとは、通常の出入り口から外に出た。
わかっちゃいたが、やはりゲームと同じ砂漠の都市でちょっと砂っぽい感じ。オアシスを中心に発展してきた場所なので、水にはそこまで不自由をしてないようだ。
シーフギルドに繋がる食堂は、城壁近くの隅っこの方にあるので毒消しを求めて商店街というか、バザーが開かれている方へと向かう。
頭にターバンを巻いてる人がちらほらと目に入る。布面積の多い物を身に着けている人も多い。なんだか海外に来た感じがして、ちょっとだけ気分的にそわそわ。
中東なんかをイメージさせる女性の被り物をしている人はいない。あれって宗教的なものだったっけ?
もしかすると、暑くなってくると身に着けるのかもしれない。今はまだ朝の早い時間だ。必要ないだろう。
適当に人やお店を眺めながら歩いていると商店を見つけたので、収集品を一部換金してちょっとした所持金を得た。
商店を出ると、引き続きうろうろと露店を眺めながら狩りの準備を進める。途中ちゃんと毒消しも用意できた。
まだ見れていない場所もあるけれど、毒消しも手に入れたので外に出て狩りを始める。
街から離れるにつれ、少し歩きにくくなってきた。地面の砂を掬って触ってみたが、街中との違いはわからない。不思議だ。
初めての場所なので、周囲を見渡しながらゆっくりと三十分くらい歩いていたら、景色が変わってきた。少しだけ植物が目立つようになってきている。
狩場に到着だ。
目を凝らしてみると、離れた場所で砂と同じ色をした長い生物が動いている。目標の砂漠蛇を発見。ニシキヘビかアナコンダかというような大きさ。
ゲームでは全部同じように見えたが、ここでは個体差があり割と大きさが違う。
チュートリアルのフィールドでも思っていたけれど、ナイフだと攻撃するのに屈む必要があり結構大変。それでも一週間続けていたので、ある程度上達している。
ウィークネスを右手に構え、近づいていく。
砂漠蛇もゲームではノンアクティブなため、それが反映されているようであちらから積極的に攻撃はしてこないが、そのかわりに現実っぽいこの世界では近づくと逃げて行ってしまう。
ぐぬぬ。少しめんどくさい。
何匹か狩るうちに、砂漠蛇が戦闘モードに入ると頭を上げて攻撃してくるという特性を理解できたので、まず離れた場所から砂かけを行って怒らせることにしたら狩り効率を上げることが出来た。
目的の収集品は、所謂通常ドロップなので順調に数を集めることができている。
ある程度狩っていると、暑さを感じるようになってきた。空を見上げると、太陽の位置はずいぶんと高くなっている。眩しい。
左腕で額の汗を拭う。集中が切れたので、喉の渇きを感じることとなった。
そういえば水を持ってくるのを忘れていた。一瞬、毒消しも液体なので代用しようかと思ったが勿体ないしやめた。
今から帰ればなんとかなるだろうし、おとなしく帰ることにする。ちょうどお腹も減って来たしさ。
袋の中には多少食べ物はあるけど、パンにキャベとニンジンといったラインナップ。さすがに今この瞬間、単体で食べようと思えない。
少しばかり急ぎ気味に早足で街まで戻ると、意外に早く感じた。たぶん十分くらいかな?
とりあえずってことで、街の入り口付近で売っている飲み物を買う。
ふぅ、生き返る。
少々高かったけれど、喉の渇きを感じたらすでに危ないって聞いたことがあるし、その状態からしばらく歩いたので、ここはケチる場面ではない。
ここが日本なら、食堂の新規開拓とか言いながら適当な店に入るのだが、昨日の夕食でカエルさんスープとご対面した今の俺は、冒険する気持ちにはなれなかったのでおとなしくシーフギルドの食堂へと向かう。
席に着きウェイトレスさんにメニューを確認すると、今日はトカゲのスープだと言われた。ちなみに明日は、蛇肉のスープらしい。うーん。なんとか食べられそうかな。一応、肉がちゃんと想像できる生物だし……。昨日のカエル肉で、多少こういったものにも耐性がついたというのもある。
運ばれてきたトカゲのスープを口にしながら、そういえばここの人たちは三食ちゃんと食べるんだなとか考えていた。もしかしたら汗をかきやすい地域なので、栄養と水分補給として行われてるのかもしれない。
食後に料金を払おうとしたら「夕食から」と言われた。初日という特権はまだ続いていたようだ。ありがたい。
とはいえ、聞いた値段は非常に安かった。ギルド関係者は割引があるらしい。ラッキー。
食堂を後にして、朝と同じように商店やバザーの方へと向かう。
また昼から狩りに行くって選択肢ももちろんあったけれど、初日っていうのと買い物をしたかったので今日はやめておいた。
まずは水筒を探す。チュートリアルの時は、ドロップ品の果物を食べていたので気にならなかったが、この付近で活動するには必須だろう。もしかしたら、環境的な違いによるデバフなんてのも考えられる。
あいにくと水筒はすぐに見つかった。何かの生物を利用した物のようだ。地球だとヤギが一般的だったっけ?
それほど高い物でもなかったので、朝用意していたお金で買うことが出来た。口をつけるところは木製みたい。
早速オアシス周辺へ向かい、水を売っている人にお金を払って水筒の中を満たしてもらった。オアシスで勝手に入れればいいかと思っていたけれど、たくさん見張りの兵士がいたので無理だった。そりゃそうだよね。この都市の心臓部と言っても過言ではない場所なわけだし。この辺はゲームと違う。
ぽちゃぽちゃと水筒を揺らして雰囲気を楽しんだ後、勿体ないけれどちょっとだけ飲んでみた。なんかちょっと臭い。皮っぽいのかな。独特の香りがする。
もしかしたら最初だけこうなのかもしれないので、しばらく我慢して使ってみようと思う。潤沢な資金があるわけでもないので、なんども水を買って洗うわけにもいかないしさ。
次からは少し味のついた飲み物でごまかすのもいいかもしれない。
水の用意が早く終わったので、残った時間で街中の探検をすることにした。
スラムっぽい雰囲気の場所は避けつつ歩いていると、武器屋を発見。ここで武器を作ってそのまま売っているようで、作業場兼店舗になっているようだ。建物を外から見てるだけでなんか熱い気がする。
もちろん店内を見学することにした。
店内では、安定のモブおじさんがいた。ちょっと暇そう。
じろじろと見てきたので、得意技の会釈を使うと多少雰囲気が和らいだ。
ウィークネスは左手で使うことも可能なので、何か良い武器がないかと棚を見ていく。大半はナイフ系。あとは、シミターとか。短弓なんかもあるけれど、なんか雰囲気が違う気がするので輸入品とか委託販売の物かもしれない。
おじさんの後ろにある高級品らしき装備に目を移すと、暗殺者っぽい感じの武器が並んでいた。
以前某ゲームの話になった時、ドラゴンスレイヤーの見た目について熱く語ってる人がいたなと思い出しながら、考え込む人のふりをして店を出ることにした。
だって、どれもこれも良さそうな武器は高くて買えないんだもん……。
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