私の見え方

和歌宮 あかね

第1話 人ってやっぱ多面体

 これは作者が中学生の頃のお話です。

 小説口調?で書いていきたいと思います。


 当時の私には、仲の良い友達が数人いました。

 その中でも今回のお話に関わってくるのは、二人の男友達です。

 仮にAとBとでもしましょうか。


 Aは背が大きく、おっとりとしていました。

 まぁ中学生ですから、少しばかり下ネタも好きでしたが。

 彼はいつも楽しそうに私の話を聞いてくれるほど、とても心が広く、ニコニコとしていました。

 そんなある日、私は眼鏡をかけ始めました。

 視力が落ちて黒板が見えにくくなったからです。

 眼鏡をかけることにそんなに乗り気ではなかった私はかけることを渋っておりました。

 しかし、かけなければ板書をすることもままならない。

 ちっぽけなプライドを捨てざるを得ませんでした。


 忘れもしません。あれは数学の時間。

 その時隣の席だったAは、眼鏡をかけた私を見てこう言いました。

「はははっ、かわいいね〜」

 そうのんびり言ったのです。

 驚きました。今まで家族以外に可愛いなどと言われたこともない私の頬は、きっと熟れた果実のようになっていたことでしょう。

 私は照れていました。それと同時に疑いもしていました。

 普段から仲が良いので、気を遣ったか或いはからかいの気持ちもあるのではないかと。

 結局何も言えないままその日は終わりました。

 その後私は眼鏡をかけるたびに彼から可愛いと言ってもらえました。

 その時思いました。もしかして私のことが好きで気を引いているのでは、と。

 そのことに気づいた日から、私はまるで可愛いヒロインになった、いや私は最初からそうだったのではないかと結構本気で信じ始めました。

 完全に信じなかったのは、こんなことを考えてるとバレたら、女友達がいなくなり、嫌われると考えたからです。

 小心者ですね。


 そこからの私は無敵でした。

 毎日毎日本当に輝いて見えました。

 年を取れば取るほど、人の視線を集められると想像もしました。


 運命とは面白いものですね!

 必ずうまく行くだけのことを与え続けはせず、きちんと飴と鞭を使い分けていますから。


 Bは小柄でした。今はどのくらい背が伸びたかわかりませんが、当時は背があまりなかった。

 ハキハキとした性格で、整った顔をしていた気がします。

 私は彼と同じ塾に通っていました。そこで何回か会話をするうちに、仲良くなったのです。

 彼とのテンポの良い会話が楽しかった。


 とある日の理科の授業前でした。

 いつものように私たちは仲良く会話をしていました。

 その中でどんな流れでそうなったのかは忘れましたが、彼は言ったのです。

「お前ブスだよなぁ。お前の友達、清楚だよなぁ」 

 ポツリと言っていました。


 ものすごい衝撃でした。

 普段泣き虫だった私は泣かないことに意識を向けました。

 結果泣くことは免れましたが、テンポ良くしていた会話が乱れてきたように感じていました。

 きっと彼はおふざけで言ったのでしょう。

 笑いながら軽く言っていましたし。

 普段からお互いにふざけ合っていましたし、いじりあってもいましたから。

 なんとか授業を切り抜け、家にとぼとぼと帰りました。

 頭の中にはずっとぐるぐるとBの言葉がこだまし続けていました。


 夜になり、お風呂に入ろうと洗面所に向かうと、鏡の中の自分が目に入りました。

 なるほど確かに。彼のいう通り私の容姿は優れていない。

 俗にいう勘違いによって私は自分の容姿にきちんと手をかけていなかった。

 言い訳がましいかもしれないが、私は素の私が一等素晴らしいと宣っていた。

 だから太陽光で傷んでボサボサとした髪も、日に焼けた黒い肌も、筋肉のついたたくましい足も、このままでいるだけで良いと感じさせる副産物だった。

 あぁ、私はなんて傲慢なんだ。

 その夜は長かった。


 私はこの件を通して知った。

 人間は多面体で、私にもいろいろな面がある事に。

 私は、私の事を一番大事にしていた事に。


 その後も変わりなく二人とは接していた。

 あの日に二人にもらった言葉の真意は、とても気になるが、彼らも多面体。

 いつか意味が分かるための面が私にも見えるだろう。



 ここまで読んでくださりありがとうございました。なんだか暗いような気がするので、ここで過去の自分にちょっと未来の私を教えたいと思います。


 過去の私へ。数年後の私だ。

 君は今悩んでいるだろう。

 君を見る見方の違いによって、自分とはなんなのか分からないだろう。

 大丈夫だ。分からなくていい。今ではこうしてネタにするくらいの思い出でしかないのだから。

 それから、君は一度もモテ期を迎えていないぞ。自分から或いは素敵な方から告白をしたりされたりというのは、まだ先のことらしい。

 親が言っていただろう。人生のモテ期は3回あると。焦らず好きなことをしたらいいさ。

 ちなみに、高校では同性の先生二人とハグをしたというイベントも発生するぞ。


 あぁそうだ。あと人生で可愛いと言われる機会はもう一度あるぞ。

 大学の同性の先生から、

「中学生みたいで可愛いねぇ」

 と言われるぞ。

 多分先生は親目線で言ってるぞ。解せぬ。

 私はもう大人だぁぁぁぁああ!

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