億万長者になる

起き上がる

第1話宝くじ

わたしは、宝くじを買った事が無い。しかし、十二月になると夢の中で誰かが数字を永遠と呟いていた。暗記してしまうぐらい夢を見た。


誰かが、助けて欲しいとお金が無いと叫んでいるんだと思った。しかし、宝くじを買う勇気なんてわたしには無い。


十二月中旬、夢を見なくなった。解放された気持ちだった。しかし、それからがわたしの悪夢の始まりだった。


派遣社員の事務職をしていたわたしは派遣切りになり結婚を約束していた彼氏が浮気をして別れ両親が他界した。


わたしは、深夜のコンビニでバイトを始めた。客は一番くじに大量のお金を注ぎ込んでいた。そして悪夢はまだ続いた。住んでいたアパートが火事で喪失したのだ。両親からの微々たる遺産も現金で持っていたので燃えた。


コンビニのバイトもクビになった。アパートが火事になった為に住所が無く雇い続けられないと告げられた。


わたしは、天涯孤独の身となった。残高一万円で漫喫に泊まる事にしようと思ったがふらっと寄ったスーパーに宝くじ売り場があった。どうせこのまま死んで行くだけだと思い夢に出て来た数字を頼りに宝くじを買った。


お腹が空いて街中をフラフラ歩いていると一人の少女と出会った。


「あの、もしかして一人ですか?」と少女に聞かれた。「うん。」とわたしは身の上話を始めた。「わたしも一人ぼっちなんです。良かったらお姉さんうちに来ませんか?」と少女はわたしに聞いて来た。


正常な状態だったら断わるところだが、わたしは異常な精神状態だった。「ありがとう。」と言って少女について行った。


思った通りの古いアパートだったが部屋の中は綺麗だった。「お姉さん、カレーしか無いけど食べる?」と少女が小さな台所に立って聞いて来た。「ありがとう。いただきます。」と言うと嬉しそうに少女は笑った。


それから、数日間、少女の部屋に泊まらせてもらった。わたしは、市役所に行って生活保護の手続きをした。少女の部屋に帰ると少女の姿は無かった。部屋で数日間待っていたが少女は帰って来なかった。


スマホが、まだ使えたのでネットニュースを見ると見覚えのあるスーパーの宝くじ売り場が出ていた。十億円当選!しかし、当選者現れずと書いてあった。恐る恐るくしゃくしゃになった宝くじの抽選券を見た。


なんと十億円当選していた。


しかし、わたしは、その宝くじの紙を破りゴミ箱に捨てた。そうすると翌朝、少女が帰って来た。


わたしは、今、少女と暮らしている。名前も知らない少女と。幸せに。




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