イカれ王子のテンプレごっこ
虚無太
第1話 夢見る馬鹿は人間の限界を越える
「おぉ‼︎よく頑張ったなエリナよ!早速見せておくれ!」
「えぇあなた。ほらライル、あなたのお父様ですよ。」
見慣れない天井、メイド服を着た耳の尖った女性、そして目の前にいる無駄に豪華な服で着飾っているおっさん
くふっ、ふふふふ、あはははははは!
成功だ、今僕は間違いなくに異世界に転生している
大学2年の夏、僕はいつも通り講義を受けていた
真面目に講義を聞く者、近くの者と会話に花を咲かせている者、なんで来たのか分からないぐらいに熟睡している者
何も変わらない普段通りの光景
この光景を眺めるのも今日で最後かと考えると感慨深い
なぜなら今日で自分でこの世界とおさらばするからだ
大学の予定を終わらし儀式の準備のために必要なものの買い出しを終え帰宅
これから行うことは誰にも知られるわけにはいかない
「ふふ、ようやくこの時が来たか。我ながら頑張ったものだ。迫り来る災厄に対処し国を守ったり、生命の危機に陥っている王国の姫君達のために薬を届けたり。さすがは僕。これが英雄の宿命ってやつかな…」
こんなふざけたことを吐いているが実際のところクレーム対処のアルバイトとただの新聞配達である
それをこんな風に捉えてる時点でわかると思うがこの男、異常者である
しかもとびきりの
しかしそんなことをカケラも理解していない男は着々と準備を進めていく
何を隠そう今から行うのは転生の儀式である
何を馬鹿なことをしているのかと思うだろう
しかし大真面目なのである
正直アホらしい
「世界の叡智が詰まったライブラリーから見つけたこの転生の儀式で僕は新たな次元に立つのだ。」
インターネットにあった『異世界に転生する方法‼︎』と書いてあるふざけたサイト
それに書いてあった転生の儀式をこれからこの男は行うのだ
手順は簡単
トカゲの尻尾にカラスの目玉、1週間放置したカキにもはや元がなんであったか分からない液体
それらを鍋に突っ込み2時間ほど煮込んでから全て飲む
それだけ
こんなふざけたことをこれからこの男は本気でやろうとしている
これで本気で異世界に転生しようと思っている
しかも隣には自作の剣と盾が置いてある
もしかしたら何かしらの影響で転移のゲートが現れるかもしれない
そんな馬鹿らしい思考の元作成された
ちなみにかなり高額で作成されている
海外にしか自生していない植物など、希少な素材を使い本気で作っているのだ
そんなこんなで準備は終わる
いよいよ待ちに待った儀式が始まると胸が高鳴る
しかし表情に出すのは英雄らしくないとあくまで無表情を演出している
鍋の見た目は例の有名なジャイ⚪︎ンシチュー
常人なら食べようとすら思わないそれをキラキラとした目で見ている男は早速一口と大口で食らう
溢れ出るエグ味、この世の不味さという不味さを全て凝縮したような悍ましい味わい
香りは嗅いだだけで犬猫は気を失うレベル
服に匂いがついた日には処分する以外の選択肢は無くなるだろう
そんな料理とは言えないゴミを食べ流石のこの男も体の痙攣が止まらない
身体はこれ以上食べてはダメだと防衛反応を起こすが、しかし目だけは死んではいない
この先に見える未来を掴むために
ただひたすら夢見たその世界に一歩を刻むために
そのためならこれくらいは屁でもない
ここだけを見たら勇ましくまさに物語の勇者のようだと思うかもしれないが、実際は異常者が異常な物を口にし異常なことを考えているだけだ
案の定意識がぼやけてきたし四肢は既に思うように反応しない
ただそれに反し心臓の鼓動が早くなる
それは期待に胸を馳せているからか、生命の灯火が今掻き消えようとしているためかは分からないが
それがこの結果である
サイトを投稿した管理者もまさか本当にあんな馬鹿げたことで転生できるなどとは思わないだろう
だが男は成功した
僕が異世界に転生するという第一の試練は突破した
次に僕がすべきことは己を鍛えることだ
僕がやりたいことを叶えるためにはそれが必須だからだ
目指すは物語の数々の英雄、そのためには他はどうでもいい
今日から僕は僕による僕のための僕だけのための理想の人生を歩む
『作者コメ』
ノリと勢いで思いついてしまったので
毎日投稿できるかは分かりませんがこちらの方もよろしくお願いします
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