俺は魔王:ゼロからの再スタート!
ワンワンワン
第1話
現在の状況では、私は何もできない。ただ暗闇が私を包み込んでいる。目を大きく開けようとした瞬間、見覚えのある女性が私の目の前に立っていた。これは裁きの日だと直感的に思った。驚いたことに、私には椅子が用意されており、彼女と対面する形になった。そして間もなく、彼女が口を開いた。
「ようこそ、魔王様。私は女神クエムと申します。かつてのあなたの宿敵――そう、覚えているかしら? 本当は長話をしたくないの。私は、あなたに二つの選択肢を与えるよう命じられました。一つ目は、あなたとあなたの戦死した軍勢を地獄へ送ること。二つ目は、魔法のない世界へ送ること。その世界では、誰もあなたが何者かを知らない。
ただしどちらを選ぶにせよ、あなたの力は私が奪い取ります。それが、あなたが犯した罪への代償というものよ。
さあ、選びなさい、賢明に考えてね。これはあなたに与えられる最後の機会よ。」
クエム……ああ、ようやく思い出した。千年以上前――悪魔族が地上を支配していた時代、私は彼女と、そして彼女の仲間たちと対峙した。その頃の悪魔族は一時的に優勢だったが、結局敗北を喫した。指揮を執っていた父――『キョウタ』様は命を落とし、悪魔族はわずかな生き残りを残して壊滅した。私はその残された者たちを率いることになったのだ。
……運命というやつか。過去の記憶を反芻しながら、私は慎重に考え始めた。その時、クエムが再び苛立ちを露わにして言葉を発した。
「早くしろ、魔王! 貴様のような存在と長く付き合っている暇はない。これを幸運だと思え、期待するな。」
私は椅子から立ち上がり、クエムに歩み寄った。
「……ほう、随分と偉そうだな、クエムよ。だがひとつ聞かせてもらおう――なぜ悪魔族は常に蔑まれる!? なぜ人間が純潔の象徴であり、我々を敵視し、滅ぼそうとする!? 理屈に合わないだろう? 私は統治していた時代、人間に侵略や迫害などしていない。それなのに、なぜ人間を支援する? ……いや、もういい。どうせ答えるつもりはないだろうからな。私は決めた――魔法のない世界に行く。つまり人間になる、ということか? ふん、それも面白そうだ。人間という種族を少し学んでみるのも悪くない。」
私の選択にクエムは冷笑を浮かべながら立ち上がり、冷たい声で返してきた。
「フン……貴様の問いに答えるつもりはない。魔法のない世界で貴様自身が答えを見つけることだ。それでは始めるぞ――『テケレツのパパラッチ、闇を食べて光を吐け!』」
クエムが手を差し出すと、私の足元に魔法陣が現れた。力が抜けていく感覚。そして、悪魔としての私の姿が消え、人間のような姿へと変わり始めた。椅子の近くにあった鏡を覗き込むと――そこには醜悪な顔立ちをした人間の私が映っていた。
「な、なんだこれは!? 以前の威厳はどこへ消えた!? これが『罰』というわけか、クエム……!」
そんな私を嘲笑うようにクエムが言い放った。
「覚悟しろ、魔王様。貴様はこれから知ることになる。さようなら――!」
その言葉とともに、視界が白くかき消された。そして私の体は魔法陣に飲み込まれ、彼女の嘲笑が耳に残る。……結局、本当の悪役は誰だというのだ!?
俺は魔王:ゼロからの再スタート! ワンワンワン @Yukikato
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