身勝手

白

何も無い。

私の掌には何も無い。

何も残らない。

何かを掴み取ったとしてもするりと液体のように、溶けて、下へと落ちていく。

こんな何も出来ない私は、一体何を持ってして存在する意味があるのだろう。

これならばそこら辺に落ちている花びらや、吹いている風の方がずっといい。その方がもっと、私より遥かに人の心を動かせる。そっちの方がなんと羨ましいことか。

私には何も出来ない。

何も無い。

人の感情を揺さぶることも、幸せにすることも、何も出来ない。

ただ嫌悪されるのみ。不快感しか生まない私は、果たしている意味があるのだろうか。

地球上の酸素を奪って、二酸化炭素を放り出す。

何も生み出さない。

何も幸福を齎さない。

こんな人間などさっさと散ってしまった方がいいだろう。

でも、私は傲慢で、怠惰で、愚かな人間だから。

痛いのは嫌だ。

苦しいのは嫌だ。

時間がかかるのも宜しくない。

出来れば、最も幸せに死んでしまいたい。

幸福も何も与えられないやつがこんなことを考えるなんて、傲慢以外の何に値するというのだろう？

例えば、お酒と睡眠薬を摂取して凍死するだとか。

なにかに踏み潰されて即死するだとか。

どこからともなく現れた殺人鬼に殺されるだとか。

ひたすらに、身勝手に死ねたらと心底思うのだ。