72 翌日
翌日の朝。いや、昼か。まだ時計を見てないけど、朝ではないような気がする。
でも、今はそんなことより裸姿で俺とくっついている花美をどうしたらいいのか悩んでいた。昨夜は深夜の二時までずっとあれをやってたからさ。その後何があったのか分からないけど、どうやら寝落ちしたみたいだ。
エロすぎる。全部見えてくるから落ち着かない。
「…………」
柔らかい感触と花美のいい匂い、その寝顔を見つめていた。
そして胸と鎖骨のところに俺がつけたキスマークがたくさん残っていて、朝からあいつが元気になってしまった。幼い頃の花美は大人しい女の子だったのに……。どうして俺を寝かせてくれないほど性欲の強い女の子になってしまったんだろう。
大人しい花美はどこに行ってしまったんだ。
「ううん……」
やっぱり、昨夜はやりすぎたかもしれない。腰が痛い……。
そのままじっと窓の外を眺めていた。
「ナナくん、おはよう……。眠い……」
「そっか、もう少し寝た方がいいかも」
「そうだね、まだ時間あるし……」
そう言いながら体に乗っかる花美がぎゅっと俺を抱きしめた。
「朝だし、服を着た方がいいと思うけど」
「ううん……。裸のままくっつくのめっちゃ気持ちいいから、今はいい」
「そ、そうか……」
「ねえ、ナナくん」
「うん? どうした?」
「私、おっぱいが痛い」
「…………」
朝から何を……。いや、聞き間違いかもしれないからもう一度聞いてみようか。
お、おっぱいが痛いって言ったような気がするけどぉ。
「ナナくんが昨夜私をめちゃくちゃに———」
「はい! ストップ! やめて、それ以上は恥ずかしいからやめてくれぇ」
そしてニヤニヤしている花美に恐怖を感じる俺だった。
一体、何を考えているんだろう。
「だから、マッサージしてほしい!」
「どこを……」
「ここを」
俺の両手を自分の胸に当てる花美にびっくりしてすぐ目を合わせてしまった。
どういう状況なのか、それを受け入れる前に手のひらから感じられる花美の感触に言葉を失ってしまった。昨日もこんな風に揉んだけど、明るい部屋で花美の裸姿を見るのはさすがに恥ずかしすぎる。
我慢しないといけないのに、これはずるいよ。花美。
てか、我慢しろ! 俺……。
「あっ♡ 昨日そんなにやったのに、まだ足りないの?」
「いや、これは不可抗力だよ!」
そしてすぐ花美にキスをされた。
その顔……、全部知っているくせにわざとぉ。
「勘弁してぇ……。このままじゃ俺死ぬ!」
「大袈裟だね、勘弁してって言ってるくせにさっきから硬くなってんじゃん」
「いや、それは……!」
「冗談! ふふふっ。でも、ナナくんが揉んでくれると気持ちいいからね……。私もちょっと興奮したかもしれない」
「…………」
気のせいかもしれないけど、膝がちょっとぬるぬるしているような……。
そしてさっきから裸姿でくっついていたから……。いや、余計なことは考えないように。
それは口にしない方がいいかもしれない。
「気持ちよかった? 昨日……」
そのまま俺に抱きつく花美とベッドでしばらく話をしていた。
「うん。気持ちよかった。花美だったから」
「へへっ♡ 私も! そして適当に終わらせるつもりだったけど……。結局全部使っちゃってごめんね」
「いや、気にしなくてもいいよ」
美波さんにもらったゴムとコンビニから買ってきたゴムを全部使って深夜までやってたからさ。俺たち……。そしてずっと我慢していた女子高生の性欲がどれだけ怖いのか、花美が教えてくれた。
寝落ちするまでずっと花美にやられていたから。
やっぱり、敵わない。
「ナナくん、チューして♡」
「はいはい」
そしてさりげなく甘えてくる花美はすごく可愛かった。
でも、下着くらいは履いてほしかった。この感触に慣れてしまうと本当に変態になりそうだからさ。気持ち良すぎて離れたくない。花美とずっとこのままでいたくなる。
「ねえ、ナナくん」
「うん?」
「私、ナナくんが一人で田舎に行った時にね。偶然中学時代のクラスメイトと道端で会ったの」
「へえ、そうなんだ」
「ナナくんは中学生の頃にもずっと変な人たちから私を守ってくれたの?」
「えっ?」
「あの子がね。すっごく羨ましかったってそう言ってたよ。なんで?って聞いたら、柊くんはいつも花美ちゃんのことを考えていたからって。そして私の悪口をする人を全部殴ってくれたって」
「…………」
ああ、その話か。
けっこういたよな。花美に断られた後、それを受け入れられないやつらが裏で「花美はビッチだ」とかそんなことを言っていた。自分が不細工で花美と釣り合わないってことを全然分かっていないクズだったから、ちょっと現実を教えてあげただけ。懐かしい。
そして口だけのクズどもが花美を狙うなんて、馬鹿馬鹿しい。
「そうだよ、俺の役割は……。花美を守ることだったから。それは星宮と付き合っていてもちゃんと守るべき約束だった」
「むっ! なのに、なんであの人と付き合ったの!? マジで理解できない! 私に付き合ってくださいって言ったらすぐ付き合ってあげたはずなのにね! ねえ、聞いてる!?」
「えっと……、ごめんなさい」
「ナナくんには私しかいないよね? そうだよね?」
「そうだよ。花美しかいない」
「浮気したら……。これ、握りつぶす……」
死んだ目でこっちを見ている花美、そしてあそこを握られた俺は激しく頷くしかなかった。てか、そんなことをしたら多分健さんに殺されると思うけど……。いや、美波さんもいるよな。
「は、はい……」
「そして! 何かあったらすぐ私に話して、分かった? 昔みたいに一人でその問題を抱えないでちゃんと私に話すの!」
「は、はい……」
「よろしい!」
こういう時は健さんとそっくりだな。
あの時は「男ならはっきりと言え!」とずっとそう言われたからさ。
やっぱり、瑠璃川家の人。
「はあ……♡ ずっとこのままでいたいな〜。ナナくんの体めっちゃ気持ちいいから帰りたくない……」
「そろそろ服を着た方がいいと思うけど……」
「下着ならあっちにあるよ、取ってくれない?」
「はいはい」
ソファに置いている花美の下着を見て、ふと昨日のことを思い出してしまう。
何を考えているんだろう、バカみたいだ。
でも、好きすぎて一生忘れられないと思う。花美と過ごした昨日は———。
「ナナくん、私の下着を見て興奮しないで早く履かせてよ〜」
「えっ? 俺が? 自分で履いてもいいじゃん」
「ええ、私そんなのできないし、面倒臭いし、ナナくんがやってよ」
「子供かよぉ!」
「子供です〜」
「分かった……」
そのまま花美にパンツを履かせる。俺も……、俺が何をしているのか分からない。
マジで分からない。
「その指輪、めっちゃ似合う。ナナくんはカッコいいからね〜」
「そう? 花美も可愛いよ」
「それに……、セックスも上手かったし」
「…………」
ニヤニヤしている花美に俺は何も言わず浴衣まで着せてあげた。
そういえば、俺……なんで裸のまま先に花美の服を着せてあげたんだろう。
「ねえ、ナナくん!」
「うん?」
「チェックアウトする前にやる?」
「…………」
今、服を着せたばかりだけど、そんなことを言うのか?
じっと花美の方を見つめていた。
「ゴムないから無理だよ」
「ええ、外に出してくれればもん———」
「ストップ! 花美! ストップ!」
その口を塞いだ。
「何?」
「朝からそんなことをするのは無理だよ、それに朝ご飯もまだ食べてないし」
「朝ご飯だよ? 強いて言えばアペタイザーかな?」
なんで何気なく俺の方を指してるんだよぉ! そして何がアペタイザーだ!
そんなことするわけないだろ! 朝から彼女と……。
俺は紳士だから、自分の欲求をコントロールしないといけない。
これは花美のためだし、あんなことばかりするとおかしくなってしまうからさ。
昨日は初めてだったから止められなかったけど、もう花美にやられたりしない。
「やらないの?」
「…………」
……
「———っ! ナナくん♡」
「…………」
「はあ……♡ 気持ちいい……」
「…………」
頭を横に振ったらすぐ花美に襲われた。
三秒、たった三秒だった……。
「勘弁してよぉ、昨日もたくさんやっただろ?」
「えっ? そうなの? でも、それは昨日でしょ? 今日はまだやってないから」
「深夜までやったじゃん」
「そんなの知らなーい。ぎゅっとして!」
「は、はい……」
うっかりしていた。最初から花美の言葉に逆らえないってことを。
いくら付き合っている関係だとしても、俺は花美より下だった。
「ナナくん、私お腹すいた!」
「だから、朝ご飯食べに行こうって言っただろ! やる前に……」
「へへっ♡」
まったく……。
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