魂の誕生日

@hakuto-

魂の誕生日

 私は生まれ変わったことがある。何を言っているのか理解してもらわなくて構わない。しかし、間違いなく私は一度死に、そして生まれ変わったのだ。それだけは私の心に、深く深く刻まれている。

 そんな私の、二生の話をしよう。



 前世において、私は養豚場の豚であった。聞こえは悪いかもしれないが、それでも私は満足な生活を送っていた。家族や仲間はいたし、食は与えられていた。悩みの種も特になく、平穏が、愛となって私たちの周りを包んでいた。


 ある時、私は屠畜場にやって来た。そこには憎い二人の人間が先にいた。私の後にも、また憎い人間が一人やってきた。私はそこで生まれて初めて憎悪というものを知った。

 そうして殺された。私にとって死は無であった。


 日が昇り始めていた。私は市場にいた。私は蝙蝠になっていた。そこで私は善の質料を買っていた(あまり記憶が定かではない。持っていたのかもしれない)。私は朝に向かって歩き出した。ふと後ろを振り返ると、皆が自分の善を売り買いしていた。そこには間違いなく社会が形成されていた。


 目が覚めると私はこの通り人間になっていた。強欲だった。常に不満足だった。そして何より、前世のことを何も覚えていなかった。


 言葉とは何であろうか。私は今こうして話しているはずなのに、しかし決してそれを知らない。形而上学を持っているとして、幸福にはなれない。私は私を知らない。光に手が届くとは思っていない。しかし、私はそのために、これからも善を売ろうとするのであろう。

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