第9話
「泉のほとりで芽生える想い」
アーサーたちは、フェイレムでの任務を終え、次なる目的地へと旅を続けていた。道中、深い森の中に美しい泉を見つけ、一行は休息を取ることにした。澄んだ水面に映る木々の緑と、差し込む陽光が織りなす幻想的な光景に、皆の心は和んだ。
シンリーとフェルミアールの距離
シンリーは泉のほとりで魔法書を広げ、静かに読書を始めた。一方、フェルミアールは少し離れた場所で弓の手入れをしていた。これまであまり交わることのなかった二人だが、フェイレムでの出来事を経て、互いに対する意識が変わり始めていた。
シンリーはふと顔を上げ、フェルミアールの横顔を見つめた。彼の鋭い眼差しの奥に隠された優しさや、仲間を思う気持ちに気づき始めていたからだ。一方、フェルミアールもまた、シンリーの冷静さと知識の深さに敬意を抱くようになっていた。
泉でのひととき
アーサーとアルトが薪を集めに森へ入った後、泉のほとりにはシンリーとフェルミアールの二人だけが残った。沈黙が続く中、シンリーが口を開いた。
「フェルミアール、あなたの故郷のこと、もっと聞かせてくれない?」
フェルミアールは一瞬驚いた表情を見せたが、やがて静かに語り始めた。エルフの村の美しさ、家族や仲間たちとの思い出、そして人間たちによって奪われた平和な日々。その語りには、深い悲しみと懐かしさが滲んでいた。
シンリーは真剣に耳を傾け、時折優しく相槌を打った。彼女の共感と理解に、フェルミアールの心は次第に解きほぐされていった。
芽生える感情
語り終えたフェルミアールは、シンリーに向かって感謝の意を伝えた。「ありがとう、シンリー。君に話すことで、少し心が軽くなった気がする。」
シンリーは微笑みながら答えた。「私も、あなたのことをもっと知ることができて嬉しいわ。」
その瞬間、二人の間にこれまでとは違う感情が芽生えたことを、互いに感じ取った。しかし、言葉にすることはなく、ただ静かに微笑み合った。
再び旅路へ
やがてアーサーとアルトが戻り、一行は再び旅を続けることにした。泉でのひとときは短かったが、シンリーとフェルミアールの間には確かな絆が生まれていた。これからの旅路で、二人の関係がどのように深まっていくのか――それは、誰にもわからない未来の物語であった。
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