第8話新しい家
モコモコとの婚約が決まり、私は幸せの絶頂にいる。いつまでも村長の家の隣の小屋に住んではいられない。この村で生活するためのマイホームを作らないといけないな~。
一回目の生で結婚したときは、そもそも結婚というものにあまり関心を持っていなかった。モコモコと結婚するのが当たり前という感じで、それ以外のことは特に考えていなかったからだ。そのため、夫婦生活も私の実家だった。モコモコの家も近いし、これでいいか~という感じだった。
今回は完璧な人生設計を立てないとな~。
うぉ! 自分の両親をずっと放置してた。・・・・・手紙を書かないとな~。
そして、モコモコの「おじいさん」と「おばあさん」のことを考えなければいけない。後、今後どうなるかはわからないが「シュート」と「サクヤ」もしばらく一緒に住むことになるだろうから部屋を用意してやらないといけないな。
それから・・・・・、そうだ、一人暮らしをしている「ダイゴロウさん」のことも考えなければいけない。
私は一回目の生での7歳のころを思い出す
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
ダイゴロウさんは9年前に奥さんが亡くなっている。急な病だった。村で一番年上の夫婦だったダイゴロウさんは81歳で一人ぼっちになってしまった。
それからのダイゴロウさんは、とてもヨワヨワしくみえた。家の縁側に座ってジッと地面の方を見ながらうなだれている。生きる気力を失ってしまっているように感じる。最愛の妻を失ったんだ。無理もない。ダイゴロウさんもそんなに長くはないなと思えた。
そんなダイゴロウさんをジッと見つめているモコモコがいた。いつも私の服をつかんでついて来るだけだったが、その時、私の服を離した。そして、ダイゴロウさんの元へと走っていった。
モコモコはダイゴロウさんの隣に座ると、何やら楽しそうにおしゃべりを始めた。ダイゴロウさんはモコモコの方を見て黙って聞いている。モコモコってそんなキャラだったか? あんなに楽しそうに何を話しているんだろうか。何もしゃべらない大人しいタイプだと思っていたが。何を話しているのか興味はあったが、私はやることもあるし、その場を離れた。
その日からモコモコは私についてこなくなった。代わりにタイゴロウさんのところへ通うようになった。モコモコはダイゴロウさんの家で「料理」「洗濯」「掃除」「裁縫」などをやっている。畑仕事も手伝っている。そして、おしゃべりを楽しんでいる。
ダイゴロウさんは、次第に笑顔を取り戻していった。
モコモコをずっと見てきたからわかる。あれは自ではない。無理をしている。本当は喋るのは苦手だ。一人でノンビリすごしたり、人の話を黙って聞いていることの方が好きなんだ。だけど、寂しそうなダイゴロウさんを見てほおっておけなかったのだろう。困った性分だな。
私も時間の合間にダイゴロウさんの面倒を見ているモコモコのところにいった。できる範囲で手伝い、楽しめる話題をふったりした。私だってそういった性分ではないんだがな~。
つまり、モコモコを好きになるというのはそういうことなのだ。モコモコだけを大事にすればいいということではない。
モコモコは困っている人がいたら助けに行ってしまう。無理をして頑張ってしまう。だから、モコモコを幸せにするということは、この村全ての人を幸せにしなければいけない。そういうことになってしまうんだな。
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「・・・・・よし、できた!」
私とモコモコのための家が完成した。いや、私とモコモコのというよりも、村の住人全員のための、と言った方が適切か。
「まるで集会所だな~。ま~、悪くはないだろう。」
できたての家の中をチェックする。すると、あるはずの無いものがそこに置かれていた。
「これは・・・・・、転生前に私が使っていた碁盤と碁石、それに碁ワールドの本・・・・・。」
一体いつの間にここに置かれたのか? そして誰が? ・・・・・まぁ、考えるまでも無い。こんなことができるのは女神様くらいしかいない。
「女神様、婚約のお祝い、ありがたく頂戴いたします」
そう言って、私はパンパンと手を合わせて深々と頭を下げた。
何十年ぶりだろう。懐かしいな~。そんなことを考えながら、私は「碁ワールド」の本を読みあさる。そして、碁石を使って本に書かれてある棋譜を並べる。
私は夕方まで懐かしい囲碁を楽しんだ。
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異世界転生 無限ループが終わらない 囲碁界最高美男子ムスイ @musui_365
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