第5話 金が先だ
深夜に城兵から起こされて、まだ眠そうなブルー王が玉座の間の後方の扉を開き、入ってくるなり、驚愕の表情をする。
「アリサ王女ではないですか!なんてお姿だ!」
駆け寄ってきた王とにゃにゃーん大王の間にサッとへこみちとポエミーが立ちふさがると
「金が先だ」
「お金が先よ」
と言い放ち、ブルー王はきょとんとした表情をしたあとに
「あ、ああ、後で話し合おう。それよりも王女の縄を解いてくれ」
へこみちとポエミーは同時に首を横に振ると
「金が先だし、こいつはにゃにゃーん大王だ」
「そうよ。モンスターのボスのにゃにゃーん大王なのよ」
にゃにゃーん大王は泣きそうな表情で
「ブルー王……お二人にお金を……」
ブルー王は咳込みながら頷いた。
硬貨が詰まった布袋をジャラジャラさせながらへこみちとポエミーが
「五万か……少ないな」
「あと九十五万ヴィラ足りないわ」
不満げな二人にブルー王は
「世界に魔物が満ちていて、交易や農業での収益が減っているのだ。それで精一杯だ」
へこみちは仕方なさそうに縄を解いてにゃにゃーん大王をブルー王に渡した。安心したのかにゃにゃーん大王は、ブルー王の腕の中で気を失った。
「誰か!アリサ王女を介抱せよ!」
すぐに兵士やメイドたちが駆け寄ってきてにゃにゃーん大王は玉座の間から連れ出される。
「このはした金で馬車でも買うか」
「そうね。どうせはした金だし、自分たちへの投資にパーッと使いましょう」
失礼なことを言いつつ、早くも背中を向けて出ていこうとしている二人をブルー王は慌てて
「待つのだっ!今夜は城に泊まっていってくれ!」
と引き留めた。
翌朝、王と二人は王城の食堂で朝食を囲んでいた。
「……そうか、二人でモンスターの洞窟内のゴブリンを全滅させたのだな。森の延焼状況も含め、今日兵士たちに調査させよう」
へこみちはつまらなそうに
「俺はポエミーと魔王を倒しに行きたいんだ。洞窟のボスは引き渡したし、俺に人生の目標をくれたブルー王への恩は返したぞ」
ブルー王は不思議そうな表情をしたあとにやつれた顔で笑い
「1年も何をしているのかと思っていたが、意外と義理堅かったのだな。ポエミーさんは昨夜はどうだったかね?」
ポエミーは皮肉っぽく笑いながら
「彼、来なかったわ」
へこみちをジッと見つめる。彼は真顔で
「なんの話だ?夜は寝るものだろう?」
「紳士ね。そんなところも好きなんだけど」
ブルー王は、楽しげに
「お二人は知り合ってもう半年とかかね?息がピッタリのようだが」
へこみちとポエミーが同時に
「半日だ」「半日よ」
と返して、飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
勇者へこみちの覇道と仲間たちの栄光の日々 弐屋 中二(にや ちゅうに @nyanchuu2000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。勇者へこみちの覇道と仲間たちの栄光の日々の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます