雪輝茸(せっきだけ)

縞間かおる

第1話 敗退の後に残されたものは……

「今回の敗退はすべてキャプテンである私の責任だ! 本当に申し訳なかった!!」


 遠征先の向日橋むこうばし高校のグランドで私は土下座した。


 まさかの総体予選2回戦負け!


 序盤の私のミスが発端で……すべての歯車が狂い、相手の点数はその度に積み増しした。


 ほんの一時間前、この同じ場所で、私達は全国大会を目指し、盛り上がっていた。


「いいか!! 例え格下の相手でも全力投球!! 一点もやらないわよ!!」

 との私のげきに全員が心ひとつになっていた。


 それが今では……


「私達三年は今日で引退します。明日からは新キャプテンの元、一丸となって今度こそ全国大会を目指して下さい! では解散!!」

 との副キャプテンの締めで皆、バラバラとグランドを後にし……土下座したままの私を顧みる者は誰も居なかった。


 丁度一年前、キャプテンを拝命してから私の“全て”をハンドボールにつぎ込んできた。


 けれど、そのゴールに待っていたのは勝利の甘い美酒ではなく、単に苦い敗北と……顔や手足は真っ黒、テストの点は真っ赤のただの“でくの棒”たる自分の姿だった。


『2組の太田? に欲情するほど落ちちゃいねえよ』


『あの、オトコオンナ! ホモ受けするんじゃね?』


『バカだなあ~ホモだって選ぶ権利があるんだぞ』


 今まで自負で撥ねつけて来たこれらの言葉が容赦なく心に突き刺さって来て、私はただただ黒い棒の様な手足を動かし、まるきり手を付けていないまま積み上がっている受験勉強が待つ家へと帰るしかなかった。


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