【勇者】三景

化野生姜

英雄たる【勇者】

 …いや、英雄えいゆうなんて恥ずかしいかぎりで。


 そうなんです。

 異世界から転生してきて。


 元は日本とかいう島国で。

 学生を職業としていたんですけどね。


 驚きましたよ。

 トラック(?)とかいう乗り物にねられて。


 …まあ、女神のご加護で王国に行って。


 仲間を連れて。

 魔王と戦って勝利して。


 ――で、英雄呼ばわりですからね。

 そんなつもりは無かったんですけど。

 

 まあ、これからも王国のために頑張りますよ。

 何しろ俺は英雄の【勇者】なんですから。


 …ふーっ、まあ。

 こんなもんですかね。


 あ、ここから先はオフレコで。


 実はわたくしは騎士団長のめいのもと。

 英雄の【勇者】を名乗っておりまして。


 顔や記憶を魔術で一部移植いちぶいしょくして。

 国を救った英雄を演じているのです。


 …え、どうしてそんなことを?


 仕方ないでしょう。


 いくら女神のめいがあるといえども。

 外部の人間ですからね。


 外から入ってきた異文化人。


 どれほど、世界に貢献こうけんをしたとしても。

 病とか過剰かじょうな文明の持ち込みは困るんです。


 ――だから、こちらで調整を。


 魔王討伐後まおうとうばつごには記憶を抜き取り。

 技術スキルの回収を行ってから、廃棄はいきする。


 そうして、私のような代役を立てて。


 抜き取った記憶を分析し。

 土地の復興と文明発展に役立てていく…と。


 …ええ、もう何百年も前からそうです。


 女神のめいはそのためのもの。

 我々は、そう解釈かいしゃくしていますから。

 

 ――さて、ここまで話したのにも理由が。


 あなた、異世界から来たでしょう?

 インタビュアーとか名乗っていますが。


 大丈夫です。


 倒す魔王もいませんし。

 おおやけに出る必要もありません。


 痛みもなく無名墓行むめいぼいきです。


 あなたの技術スキルも。

 きっと、国の役に立ちますから…

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