髪を集める(短編)

小原ききょう

第1話 髪の毛の採取

「髪を集める」


◆髪の毛の採取


 俺は子供の時から変な性癖がある。

 それは・・女性の髪の毛を集める趣味だ。

 髪のコレクターと呼んでも良いくらいに多く集めている。

 誰の髪なのか?

 まず小学校の時は、同級生の女の子の髪だった。

 髪なんて、下着とは違って幾らでも集めることが出来る。例えば、体育の授業を病欠するだけで、一人で教室に居残れば、容易に採取できる。

 何故なら小学校の体育の授業の際の着替えは、教室でするからだ。男女交代での着替えだが、男女とも体操着に着替えると、服はそれぞれの机の上に重ねて置いていく。

 体育の授業が始まれば、一人きりの孤独であるはずの教室が天国と化す。

 お気に入りの女の子の机に向かい、髪の毛を採取する。それも一人ではない。数人の分を細目にチェックしながら、服の繊維の間にふわりと落ちている髪を一本一本拾い上げ、自前の袋に入れ込む。

 その愉悦の時間はアッと言う間に過ぎる。

 体育の授業が終わり、皆が戻ってくると、「お前、顔が真っ赤だぞ」と男性生徒に指摘されたりする。そう見えるのは当たり前だ。興奮のど真ん中にいたのだ。無理もない。

 それは性的欲望なのでは? と誰かに言われるかもしれない。

 確かにそうだ。性的だ。

 更に、「髪の毛だけで何がそんなに面白いのか?」とも訊かれることだろう。

 それは一人によるのだ。

 誰かにとっては只の髪の毛だが、俺にとっては、それは一人の女の身体と同じなのだ。

 例えば、A子の髪の毛を一本見る。すると俺の視界にはその全体像・・つまり、A子の実像が浮かんで見える。

 つまりその人の想像力に左右されるということだ。

 俺は、切手帳の中に、それぞれの名前を書き込んで、大事に貯めておいた。

 切手帳を広げると、色んな女の子が浮かび上がる。

 それが俺の小学校時代の趣味だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る