:「還暦介護福祉士どうすりゃいいんだ?」
@CHIKARA44
第1話
タイトル:「還暦介護福祉士どうすりゃいいんだ?」
第一章:新たな挑戦
憲作は、還暦を迎えた今年、自分の人生が大きな転機に差し掛かっていることを強く感じていた。理美容業界で一時は成功し、豪遊の日々を過ごした過去がある。それでもリーマンショックや働き方改革、労働問題が積み重なり、ビジネスは衰退を続けた。最終的にはすべてを失い、仲間たちも散り散りになったが、それでも数名の忠実なスタッフは憲作のもとに残ってくれた。
両親の死をきっかけに、憲作は新たな道を模索することになった。ふと、両親や弟がお世話になったヘルパーたちの顔が思い浮かぶ。彼らの献身的な姿を見て、自分も介護の道を歩んでみようと決意する。20年前に訪問理美容業を始める際に取得したヘルパー2級の資格を活かし、介護事業所を立ち上げた。
とはいえ、介護の現場はまったく未知の世界だった。書類の内容も意味が分からず、初めての利用者を紹介されたとき、憲作は期待と不安が入り混じった気持ちを抱いていた。
初めての利用者
初めての利用者は99歳の上品な女性だった。部屋には若い頃の写真が飾られ、まるでご令嬢のような雰囲気が漂っていた。彼女には一つの小さな日課があった。毎日の食事の最後にアイスクリームを楽しむことだ。その姿は、長い人生を生き抜いてきた人のささやかな幸せを象徴しているようだった。
だが、彼女は大腿骨を骨折しており、寝たきりの状態だった。オムツ交換やシーツ交換の際には体位を移動させる必要があり、そのたびに激しい痛みを訴えた。その声に、憲作たちは戸惑い、どう対応してよいのか分からないまま四苦八苦した。初めての現場で、憲作は介護の現実の厳しさを痛感する。
「これが俺たちの仕事か…」
帰り道、憲作は肩を落としながらつぶやいた。しかし、同時に利用者さんの笑顔やアイスクリームを食べる姿が脳裏に浮かび、この仕事に希望を見出せる気もしていた。
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