フィリアとミーの奇跡の薬
ちはやれいめい
第1話
むかしむかし、静かな町に、病弱な少女フィリアが住んでいました。
フィリアは生まれつき身体が弱く、いつもベッドで過ごしていました。
同じ年頃の子は元気に野山を遊び回っているのに、そこに混じれません。
だからいつも一人。
フィリアの唯一の友だちは、愛猫の白猫、ミーでした。
フィリアとミーはいつも一緒でした。ベッドに座り、ミーに本の読み聞かせをするのがフィリアの楽しみでした。
ミーはフィリアの膝の上で静かに物語を聞くのです。
世界をまたにかける冒険の話、不思議な魔法の話、色々です。
今日も、フィリアはいつものようにミーに絵本を読みきかせることにしました。
昨夜おばあちゃんがくれた、どんな病気も治せる魔法使いのお話です。
読んでいると、急に絵本の中から一筋の光が溢れ出ました。
驚いたフィリアが目を見開くと、光の中から声がします。
「この絵本の話は本当の話。ミーなら魔法使いのところにたどり着けます。どんな病も治せる薬を作れます。ミーを深い森の中に行かせるのです」
「そんなことできないわ。ミーが迷子になってしまうし、森の熊さんに食べられてしまうかもしれない」
フィリアが首を左右にふると、光は収まり、絵本は普通の本に戻っていました。
フィリアは無理させたくないと言いましたが、ミーは古い森に住む伝説の魔法使いを探しに行きたいと思いました。
大好きなお友だちを助けるために。
その夜、ミーはフィリアの枕元でこう誓いました。
(必ず、フィリアちゃんのために奇跡の薬を見つけてくるからね)
次の日、ミーは旅立ちました。
野を越え川を越え、深い深い森の中、ついに魔法使いの住む古い家にたどり着きました。
旅の中でミーは野犬に襲われたり、カラスに追われたり、大変な目にあいました。白かった毛は汚れて黒猫のよう。
ミーは魔法使いにお願いします。
大好きな友だちの病気を治してあげたい。
魔法使いは猫の声を聞き取れるので、特別な薬を作ってくれました。
「この薬は、真実の愛がある間柄でしか効かない。君が本当にフィリアを愛しているなら、この薬は彼女を治すだろう。そうでないなら、これはただの水と同じ効果しかもたらさない」
ミーはその薬を大事に抱えて、魔法使いの家を出ます。
家の前には、フィリアがいました。
いつもの寝間着ですが、上にコートを着て、服は泥と葉っぱまみれ。手足はキズだらけ。
「ミー! ああ、やっとあえた、コホ、コホ。こんなに汚れてキズだらけで……。あなたにもしものことがあったら死んでしまうわ」
フィリアはその場に泣き崩れます。
なぜここに。ミーが駆け寄ると、フィリアはミーを抱き上げて言います。
「私の病を治そうとしてくれたのでしょう? 確かに、みんなのように元気に走れる体になれたら幸せかもしれないけれど、あなたの命を危険にさらしてまで、叶えたいことではなかった。無事で、本当によかった」
体が弱いのに、家族の反対を押しきってミーを追いかけたのでしょう。
ミーは涙を流します。
こんなにボロボロになっても、自分のことを気にかけて追いかけてくれたから。
「あなたの背中に結ばれているこれはなあに?」
それは、魔法使いが結んでくれた薬と手紙です。
フィリアは説明書を読み、迷いなく瓶の蓋を開けて薬を飲みました。
大切なミーがフィリアのために取りに来てくれた薬。必ず効くと信じていました。
すると、奇跡が起こりました。
フィリアの顔に生気が戻り、体のキズもきれいさっぱり消え去ったのです。
フィリアは感謝の涙を流し、ミーを抱いてキスをします。
「ミー、ありがとう。あんなに辛かったのに、息が苦しくないの。あなたのおかげで、病気も怪我も吹き飛んだみたい」
それからというもの、フィリアとミーはますます仲良くなり、幸せな日々を送りました。
フィリアは元気になり、庭でミーと一緒に遊ぶこともできるようになりました。
町の子と遊べるようになっても、ミーが一番のパートナーでした。
フィリアとミーの奇跡の薬 ちはやれいめい @reimei_chihaya
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