最後に願いが叶うならばもう一度君とあの星空の下で

すみれ。

第1話 プロローグ

某年の12月。温暖化が進んでいる中であるが、今日は特に寒い日になった。

僕はバイト帰りに夜空を見上げる。

(今日も見えないなぁ。)

顔を元の位置に戻し再び歩き出す。胸が苦しい。どうして自分には何も出来ないのか。

「神様は何も言ってくれやしないんだ。」


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あれは高校二年生の冬のことだった。

年末年始は青森県の祖父母の家に行くことになっているので、今年も黙々と準備を進めていた。


「おにいちゃん準備終わったら私の荷物入れるの手伝って〜」


「母さんに頼めよ」


「えーけち」


こう頼んでくるのは小学校6年生の妹のかなえだ。颯人はこの時思春期真っ只中だったので、妹に優しくするという言葉が自分の辞書には書かれていなかった。


自分の荷物をひたすら詰める。3泊のつもりだったから冬物の着替えがかさばるくらいで、特に持っていくものもなかった。最近買ってもらってハマっていたガラパゴスケータイさえあれば生きていける。とはいうもののガラケーで何か特別なことが出来る訳でもない。ガラケーのいい所は友達と連絡を容易にできることだった。今までは固定電話にかけないと話が出来なかったわけであるから、驚くべき技術の進歩であり高校生の颯人に大きな幸せをもたらしたのである。特に親友のカンタとは他愛のないことを毎日メールし合っていた。


「ピロン♪」


これはメールが来た時の着信音である。すぐにはやとは確認する。


『ハヤトオ〜ついに2008年も終わるな!実はな…俺は女の子と星を見に行くことになった!写メ撮って見せてやんよ!v(^^)』


「、、は??」


颯人は焦った。彼女いない歴イコール年齢だった仲間に彼女が出来たのだと察した。急に裏切られた気分になり腹立たしくもあり悲しくもなる。確かにカンタは誰とでも仲良くできるからモテそうではあった。どんな子なのだろうか。そもそもどこで出会った子なのだろうか。クラスメイトなのだろうか。もしかしたらクラス1美人の笹沼さんかもしれない。

色々聞きたくなったが、やはり悔しくなりケータイを閉じ、荷物を詰め終えたスーツケースを廊下に運ぶ。

廊下に出ると父がみんなのスーツケースを車に運び入れるところだった。


「颯人、ちゃんと着替えは3日分入れたか?」


「うん」


「おじいちゃんの家、田舎だから何か忘れてもすぐに買いに行けたりしないからな」


「分かってるって」


僕はぶっきらぼうに変事をする。できるだけ親ともあまり話したく無かった。思春期と反抗期をこじらせていたのだ。

父は優しいのでやれやれと微笑みながら、しかしどこか寂しそうにして颯人の荷物を持って行った。



今日は12/31、大晦日だったので母は昨日分の洗濯を済ませてから準備を始めたので、荷支度に時間がかかっている。そして今ちょうど正午を過ぎた辺りだった。


颯人は特にすることもなかったので本棚に置いてある本を適当に選ぶ。手に取ったのは『銀河鉄道の夜』だった。これは気弱で孤独な少年ジョバンニと親友のカムパネルラが銀河鉄道で天の川の道を旅する話である。宮沢賢治はこの作品をどんな思いで書いたんだろうか。そんなことを考えていた。



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第1話は短いですが、読んで頂きありがとうございます。

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