宇宙が無限に広がっているとして
名取なつ
宇宙が無限に広がっているとして
死ぬのは怖いけれど、宇宙が続いてくれるのなら、生き返られる気がしていた。何度死んでしまっても、会えなくなっても。大昔からずっと先まで、ずっとこのベッドで寝ている気がした。
今日、本で読んだところによると、宇宙はだいたいの確率で無くなるらしい。絶対零度という何も動けない状態。なんにも動けないから、ずっとそのまま。何年経ってもずっと同じなんて、ちょっと信じられないと思う。他には、ビッグクランチというのもあった。これはビッグバンの反対らしい。宇宙がずっと大きくなっているなんて想像できなかったけれど、それが本当なら、私もいつかしぼむと思う。理科の先生が教えてくれた宇宙の本は、幽霊が出てくるような本よりずっと怖かった。先生が言うには、幽霊は作り物だけれど、宇宙が滅ぶのは研究者たちが真面目に計算した結果らしい。でも、宇宙のことはまだ全然分かっていないから、私が宇宙の未来を考えてみれば研究者になれるかもしれないと言ってくれた。
宇宙が無限に広がっているとして。私は身体が縮んでいくような気がした。死ぬこととか、宇宙のこととか、空のこととか、海のこととか。そういうことを考えていると、怖くなって、身体が縮んでしまう。いっそ小さくなって、宇宙で一番小さくなってくれれば、どこでも生きていけるのに。無限に広がっていく宇宙と反対に、私は無限に小さくなって。そしたら天井も、カーテンも、ランドセルも、埃も、全部が怖くなって、全部を考えながら、このベッドで眠りにつく。考えるたびに私は縮んでいく。私が宇宙で一番小さくなって、宇宙で一番小さかったものが、私の世界を覆いつくほどに大きくなれば、ようやく私のものだ。今度は長い時間をかけて、私はビッグクランチのように世界を縮めていく。私はどこまで世界を縮められるだろうか。世界はどこまで大きいままだろう。私が大人になるまでに、宇宙はどこまで広がっているのだろう。
宇宙が無限に広がっているとして 名取なつ @Marui_Rimless
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