大怪獣バキラ
阿弥陀乃トンマージ
小笠原諸島近海にて
「……」
曇り空の下、海を進む艦船のブリッジに、迷彩服を着た若い女の子がいた。女の子は遠くをじっと見つめている。そこに中年男性が声をかける。
「凪ちゃん、こんなところにいたのか」
凪と呼ばれた女の子がムッとする。
「……パパ、作戦活動中は名前で呼ばないでって言ったでしょ?」
「! あ、ああ、スマン……って、そっちもパパって……」
「わざとよ、疾風司令……」
「う、うむ……」
疾風司令と呼ばれた中年男性は帽子を被り直す。凪はため息交じりに告げる。
「周囲に与える影響をよく考えてください……」
「き、気を付ける……そ、それにしてもだ、疾風隊員、君がこの時間帯にこの場所にいるのはおかしいのではないか?」
「……気になるもので」
凪が視線を船の先に戻す。
「……まあ、海底火山の噴火による島の形成というのは、そう滅多に見られるものではないからな……」
「ええ……」
「これで小笠原諸島に新たな島が増えることになる……」
「我々の新たな拠点にするつもりですか?」
「いや、今回はあくまでも調査だ。いざという時の為に備えてな……」
「日本も動いているのでは?」
「同志たちの妨害行動が功を奏したようだ。いくらかの時間的余裕は生まれた」
「それはなによりです。あ……」
凪が顔を上げる。大きな煙が空にもくもくと上がっている。煙のもとを辿ってみると、海の上に突き出した陸地が見える。疾風司令が呟く。
「ふむ、いわゆる火山島というやつだな。やはりあの島を拠点にしての作戦活動は現実的ではないか……。島の測量をさっさと済ませて、帰るとしよう……むっ!」
船が大きい揺れに襲われる。
「!」
「な、なんだ⁉」
「ガアアッ!」
「な、なにっ⁉」
まるで海龍と見紛うほどの大きな生き物が漆黒の巨体を海面からさらけ出した。それを目にした凪は大いに驚く。
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