排除

第1話

「…ああ、今日も?」



驚くこともたじろぐこともせず私を真っ直ぐ見据える彼はどう見ても年相応以上。



校門をくぐって下校する他の生徒たちと比べると、彼を取り巻くオーラは明らかに異質で。



「ごめんなさいね、こちらも仕事だから」



「…別に」



こっちの方が年も大分と離れた大人なんだから、と一週間前初めて彼に会ったとき私は彼を子供扱いした。



たかだか17歳の高校2年生だと。



…その思い込みは初対面の一時間後には覆されたけど。



「今日までずっとファミレスで話を聞いてきたけどね。

今日は君の学校の音楽室に行きたいの」



彼の背後に立つ校舎を顎で指すとほんの一瞬だけ彼は渋ったような表情を見せたが、直ぐに無表情に戻って頷く。



「学校の許可はもう取ってあるから」



彼に告げると今度は返事もなく彼は回れ右をして校庭へと戻って行った。



私は持たれていた自分の車にロックを掛けて彼の背中を追う。






彼の空虚な瞳は他人に感情を読み取らせない。



そのくせ何か奥底に強い意志が潜んでいるようで、彼はそこらの大人より大人びて見えた。



実際口数も少なく、愛想はちっとも振り撒かないから学校でもなかなか浮いた存在なようだ。

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